近年、残したい、伝えたいという風潮が高まる【伝統野菜】

風土が生んだ魅力ある味わいを楽しみましょう

自分が住んでいる地域の「伝統野菜」を知っていますか?
農林水産省によると、伝統野菜とは「古くからつくられ、採種を繰り返していく中で、その土地の気候風土に合った野菜として確立したもの」を指し、各地域で独自に選定されています。長きにわたり栽培されてきたこれらの野菜を食べて、地域の食文化や歴史に触れてみませんか。

 日本原産の野菜は少なく、うどや三つ葉、自然薯、わさびなど、20種類ほどといわれています。野菜の栽培は弥生時代に始まったとされ、うり、ねぎ、ほうれん草、かぼちゃ、はくさいなど、時代ごとに新しい野菜が伝来。地域の風土に合わせて独自の進化をとげてきました。
 近年、地域創生の流れを受けて地野菜を「伝統野菜」としてブランド化し、地域の食文化や歴史を守ろうという活動が盛んに行われています。東京の「江戸東京野菜」には、練馬大根、千住ねぎ、滝野川ごぼう、小松菜などがあり、マグロの腹身と千住ねぎを使った「ねぎま鍋」は、江戸庶民の味として今も継承されています。大阪には、「大阪府内で100年以上前から栽培」などの基準で選定された「なにわの伝統野菜」があります。大阪市天王寺付近が発祥の天王寺かぶらは、江戸時代に野沢温泉村の僧侶がその種を持ち帰って植えたところ、根が育たず葉と茎だけが大きくなり、それが野沢菜になったと言われています。シャキシャキの食感が特徴の大阪しろなは、代表的なおばんざい「しろなとあげさんの炊いたん」に用いられます。山形の「やまがた伝統野菜」には、殿様が毎日「今日はどこのだだちゃ(山形の方言でお父さんの意)の豆か?」と聞いたことに由来する「だだちゃ豆」、天皇家の御紋であるキクの花を食べるのはもってのほかということから「もってのほかおいしい」と転化したとされる庄内地方の食用菊「もってのほか」など17品目あります。冬至かぼちゃとしてよく使われる「会津小菊南瓜」など15品目選定されているのが「会津の伝統野菜」です(マップ参照)。
 ほかにも全国各地に個性豊かな伝統野菜があります。生産者が少ないため、その地域でしか手に入れることが難しい品種がほとんどです。各産地では固有種を復活させる取り組みにも力を注いでいます。知って食べることで、地域の成り立ちに触れたり、郷土料理を作るきっかけになったり、食卓のレシピが増えたりするかもしれません。鮮度抜群で味わい深い地元の野菜を直売所などで見かけたら、ぜひ試してみてください。

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2022.09更新

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