昼夜の温度差が栄養を蓄える
新潟県の最西端に位置する糸魚川市。日本の国石である翡翠(ひすい)の産地として有名ですが、近年は東京市場で認知された「越の丸茄子」が特産品として注目されています。
「越の丸茄子は新潟県で会津在来種の『横田丸』と新潟の『巾着』を交配して開発された品種です。1981年から糸魚川市能生谷(のうだに)地区で生産が始まりました。手に収まらないほどの大きな丸茄子で、色が濃くてつやがあり、しっかりとした肉質と甘味が特長です」と自信をのぞかせる、JAえちご上越ひすい営農センターの渡邉遼太さん。
日本海沿いの道路から南へ30分ほど車を走らせていくと、棚田が広がる山間の一角にひすい丸茄子部会の橋立 力部会長が栽培するハウスがありました。
「ここで標高400mくらい。越の丸茄子は標高300〜350mの地域で主に栽培しています。山間の昼夜の寒暖差で栄養を蓄えて甘味がのり、肉質が締まって、色つやの良い茄子に育ちます」と、橋立部会長。1棟の全長が25mあるハウス10棟(約15アール)を管理し、6月末〜11月上旬まで出荷が続きます。越の丸茄子の育種・育苗はJAの育苗センターで一括して行います。
「草丈30cm位で一番花のついた苗を、5月末までに定植します。株は3本+3本の6本仕立てにし、キュウリネットを斜めがけにして、V字型に整枝、誘引します。時期にもよりますが、着果してから20日ほどで収穫を迎えます。ヘタの部分に鋭いトゲがあるので、実に傷がつかないように、また太陽の光がしっかり当たるようにと、枝や葉をこまめに整理します。ここ数年のような猛暑だと水分不足でつやがなくなるので、朝夕にハウス内を見回って状態を見ながらの水やりも欠かせません」と、橋立部会長。
水と肥料の管理、ハウス内の温湿度を適正に保ち、小さな変化も見逃さず栽培技術や品質の向上に取り組んでいます。
厳格な規格基準でトップブランドを維持
収穫は朝5時前〜7時頃まで。大きさを一つひとつ確認しながら、手の平でそっと実を包んでハサミで切っていきます。
「大きさを測る収穫リングの直径は9cm2mm。これがMサイズで規格の中心です。色、つや、形、傷などの外観、大きさを確認しながら収穫し、自宅の作業場に運んで選別・箱詰めします」と、橋立部会長。
作業場では乾いたタオルで1個ずつ茄子の表面を拭き、軸をハサミで斜めに切って揃え、もう一度、傷などの外観と大きさをチェック。規格(1箱にSサイズ11個入り、Mサイズ9個入り、Lサイズ8個入り)に合わせて丁寧に箱詰めして、8時〜10時半までにJAの集荷場に運びます。
「集荷場でも1箱ずつ中を確認して検査します。この検査の厳格さで東京市場に“間違いのない品質”と信頼を得ているため、生産者も高品質の茄子を栽培する励みになっています」と、ひすい営農センターの渡邉さん。生産者の高齢化を見据え、安定生産と信頼のブランドを継続するため、新規就農者に丸茄子ミニ農業塾を開講。担い手支援の取り組みも行われています。
その大きさ、甘味としっかりとした肉質ながら、やわらかな食感は「茄子の大トロ」と称されています。締まった肉質なので煮崩れしにくく、油との相性は抜群。焼いても、炒めても、どんな料理でも楽しめます。9月からの秋茄子は甘味が増して絶品なので、「越の丸茄子」を見かけたら、ぜひ一度お試しください。
(取材:2023年8月下旬)
●JAえちご上越
【越の丸茄子】生産概要
(1)ひすい丸茄子部会
栽培面積:約70a
生産者:12名
出荷量:約23トン(2023年度販売実績)
(2)JAえちご上越 越の丸なす部会
(上越地区)
栽培面積:約20a
生産者: 6名
出荷量:約8.5トン(2023年度販売実績)
主な出荷先:県内、東京など
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