知られていない生産現場【和牛】

ちょっといい日に和牛を食べて
もっといい日にしませんか

焼き肉やステーキ、しゃぶしゃぶ、すき焼きなど、和牛を使った料理は海外でも大人気。肉に網目状に入ったきめ細やかな脂肪をサシ(霜降り)と呼びますが、見た目も美しく、甘みとうまみが口の中にとろけ出すような食感が特長です。
世界に誇る和牛を詳しく探ってみました。

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 和牛は、明治以前から日本で飼われてきた固有の品種で、畜産関係機関や畜産農家の長年の努力によって改良されてきました。和牛の90%以上を占めるのは、日本各地で飼われている「黒毛和種」で、加えて「褐毛(かつもう)和種」「無角(むかく)和種」「日本短角種」の4品種と、その4品種間の交雑種のことを和牛と言います。
 国産牛=和牛と思いがちですが、国産牛とは日本国内での飼育期間が最も長い牛のことで、品種ではありません。乳用種のホルスタインや、和牛と乳牛の交雑種でも国産牛を名乗れます。
 日本で飼育される牛(輸入牛を含む)はすべて10桁の個体識別番号が印字された耳標(じひょう)を両耳に付け、出生から肉になるまでの生産流通履歴情報がデータベースに登録されます。精肉パックに貼られたラベルの個体識別番号から、牛がいつ生まれて、誰にどのように育てられたかという情報をいつでも得られ、追跡できる「牛トレーサビリティ制度」が確立されています。片方の耳標が取れてしまった牛の取引は禁じられるほど、手続きは厳格です。
 和牛は生まれると名前が付けられ(雄は漢字、雌はひらがな)、識別手段として鼻紋(びもん:人の指紋のように固有)をとって、子牛の登記を行います。「子牛登記証明書」には両親、祖父母、そのまた祖父母から続く血統や、生まれた農場などの情報が記録されています。

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 黒毛和種の雄は約28ヵ月齢前後、雌牛は約30ヵ月齢前後飼育して出荷されます。出荷までの期間が長いので、母牛を飼育して子牛を産ませ、育てる繁殖農家と、10ヵ月齢くらいの子牛(素牛・もとうし)を市場で買い付け、出荷するまで育てる肥育農家に分かれるのが一般的です。
 コロナ禍で需要が停滞したため急落した和牛肉の相場は、コロナ禍後一時回復したものの、物価上昇により、消費は牛肉から豚肉・鶏肉にシフトし、高額な和牛の消費は落ち込んでいます。和牛生産量の増加と消費低迷に伴う不安を背景に、素牛の市場(せり)価格は全国的に下落。2023年は下落幅がさらに広がり、黒毛和種ではBSE発生時以来21年ぶりに国から子牛(素牛)価格の下落を補填(ほてん)する「肉用子牛補給金」が発動されました。子牛を生産する繁殖農家の経営は日を追うごとに深刻化しています。このままでは繁殖農家の廃業が加速し、和牛の生産基盤が縮小してしまう懸念があります。上図のように繁殖雌牛の出生から数えると、子牛の育成、子牛の肥育、出荷まで55ヵ月を要します。一旦失った生産基盤を元の規模に回復させるのは容易ではありません。
 豚肉や鶏肉に比べると高価ですが、和牛ならではの芳醇な味わいは別格です。畜産農家が、一頭一頭丁寧に時間をかけて育てた日本の至宝。年末年始はもちろん、誕生日や記念日など、ちょっといい日に和牛を食べて、もっといい日にしませんか。

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2024.12更新

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