砂糖は水によく溶けます。20℃の水では、質量の約2倍(200mlのコップに砂糖約400g)、100℃のお湯では約5倍(同様に約970g)の砂糖が溶けるのです。この「親水性」により、水を抱え込む作用や、抱え込んだ水を離さない作用が起こり、料理の味を引き出したり、食感を良くしたり多様な働きをしています。
肉に砂糖をもみ込むと、砂糖がたんぱく質(コラーゲン)と水を結び付けて肉をやわらかくします。卵白に砂糖を加えて泡立てると、砂糖が卵白の水を吸収して泡立ちのよいメレンゲになります。果実酒を作るときは氷砂糖を使いますが、これは浸透圧で果実の味と香りを引き出すためです。果物のペクチンも水分と結び付き、とろみが付いたジャムに。すし飯がしっとりやわらかく保たれるのも砂糖の親水性によるものです。さらに、バターやクッキーなど油脂を多く使う菓子は、砂糖が油脂中の水分と結び付くことで、酸化を防ぎ風味が守られています。また、カビや細菌の繁殖に必要な水分を抱え込み利用できなくするので、ジャムやあんこなど砂糖を多く使う食品は腐りにくいのです。
ふっくらとして焼き色が付いたパン。砂糖がイースト(酵母)の栄養源になり、発酵を促します。焼き色を付けるのも砂糖の性質のひとつです。また、水を加えて煮詰めると温度とともに粘りが出て、シロップ状、飴状、カラメル状へと形状を変化させます。これも砂糖の特性で、菓子作りに利用されています。そのほか少量の砂糖を、ブラックコーヒーに入れるとまろやかになり、酸味の強いトマト料理に入れると酢かどが取れて食べやすくなります。このように、苦みや酸味を和らげる作用もあります。
砂糖にはたくさんの種類があり、形や色、風味もさまざまです。世界では、砂糖といえばグラニュー糖という国が多い中、日本ほど砂糖の種類が豊富な国はありません。煮物や佃煮には中ざら糖や三温糖、果実酒には氷砂糖、和菓子には和三盆など、これほど砂糖が使い分けられているのは、日本の豊かな食文化の表れともいえます。
疲れた時に甘いものを食べるとホッとしますが、それは脳がエネルギー源であるブドウ糖を補充できるから。甘くておいしいだけじゃない砂糖の働きを理解して、上手に使いこなしましょう。
料理の万能選手【砂糖】
甘いだけじゃない
料理に欠かせない砂糖の多様な働き
和食では、さ=砂糖、し=塩、す=酢、せ=しょう油、そ=みその順に調味料を入れますが、なぜ最初に砂糖なのでしょう。それは、砂糖は塩よりも分子が大きいので先に入れないと味が染みにくいことと、食材をやわらかくして、他の調味料の浸透を良くしてくれる働きがあるからです。砂糖は味つけ以外にも、いろいろ役に立つ特性があります。
身近なのに意外に知られていない砂糖の特性に注目してみました。
2025.01更新