5月は新茶の季節です。新茶ならではのすがすがしい香りを楽しむことを心待ちにしている人も多いのではないでしょうか。
普段何気なく飲んでいるお茶の世界には驚きがいっぱい。
お茶の魅力を知り、急須で茶葉本来の味や香りを楽しみませんか。
さあ、素敵なお茶時間を過ごしましょう!
日本茶も紅茶もウーロン茶も、原料は同じツバキ科の常緑樹「チャ」の葉から作られます。色や味の違いは、茶葉の発酵度合いによるもの。完全に発酵させる紅茶、発酵を半分で止めるウーロン茶に対して、緑茶は発酵させずに作ります。摘んですぐに加熱(蒸す・炒る)し、酵素の働きを止めることで、生葉の香気が残る緑色のお茶ができます。
古くから日本人の生活の中にあり飲まれてきた緑茶は、栽培や製造方法などによって、味や香り、淹れ方も異なってきます。緑茶生産量の半分以上を占め、日本茶の代表ともいえるのが「煎茶」。高温で蒸し、手や機械で揉みながら細く撚(よ)り、乾燥させて作ります。程よい渋み、苦みと甘みのバランスが良いお茶です。通常の煎茶より長時間蒸すことで、色や味を濃厚に仕上げたものが「深蒸し煎茶」です。収穫前に遮光用の覆いをかぶせて栽培するのが「玉露」や「かぶせ茶」。20日以上遮光した新芽のみを使う玉露は高級茶として知られます。緑茶のうま味成分であるテアニン(アミノ酸)は太陽光によって渋み成分のカテキンに変化するため、遮光することで渋みを減らし、うま味の多いお茶になります。新芽を摘み取った後に伸びた古葉などを用いた「番茶」はさっぱりとした味で安価なので普段使いに。この番茶や煎茶を焙(ほう)じて、香ばしく仕上げたのが「ほうじ茶」です。玉露のように遮光栽培した「碾茶(てんちゃ)」を、揉まずに乾燥させ石臼などで挽いて微粉末状にした「抹茶」は、スイーツにも使われ、海外でも人気です。
緑茶の味は、テアニンなどのアミノ酸のうま味とカテキンの渋み、カフェインの苦みが調和して生まれます。カテキンとカフェインは熱い湯でないと溶けにくいけれど、テアニンはぬるい湯や水でも溶け出すので、玉露は50~60℃でうま味を引き出せます。70℃前後で煎茶を淹れると渋みも加わりバランス良く味わえます。ほうじ茶や番茶は熱湯で淹れ、香りとさっぱりとした飲み口を楽しみます。
同じ煎茶でも、1煎目はぬるめで「甘み」、2煎目はそれより高温で「渋み」、3煎目は熱めで「苦み」と徐々に温度を高くすると味の変化を楽しめます。2~3煎目は茶葉の撚りがほどけた分、抽出時間は短めに。通称「ベストドロップ」と呼ばれる、うま味が凝縮された最後の一滴までしっかり注ぐと、2煎目以降もおいしく飲めます。
緑茶に含まれるカテキンには抗酸化作用、テアニンにはリラックス作用があるなど、健康機能との関連が知られています。日常のさまざまな場面で、お茶は私たちの心と体を癒し、幸せなひと時をもたらしてくれます。もっと身近に素敵なお茶時間を楽しみませんか。
煎茶のおいしい淹れ方
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1 お湯を冷ます
水は必ず沸騰させ、人数分の茶碗に八分目ほど注いで冷ます。
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2 茶葉をはかる
目安として1杯約2~3グラムの茶葉を急須に入れる。
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3 茶碗のお湯を入れて待つ
上級煎茶70℃・約2分、中級煎茶90℃・約1分半。
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4 茶碗にお茶を注ぐ
廻し注ぎをして量や味を均等にし、最後の一滴まで出し切る。
参考:農林水産省「お茶のページ」(茶をめぐる情勢 令和7年1月時点)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/ocha.html