栽培環境や生理的な要因によって起きる障害を、「生理障害」といいます。発生要因としては、養水分の過不足、高温や低温、日照不足や強日射などが挙げられます。
なお、病気は、細菌やかび、ウィルスなどの病原体によって引き起こされるもので、原因が異なります。

〇窒素欠乏
下葉から葉が黄化し、葉が小さく、株全体が弱々しくなったら、窒素欠乏の疑いがあります(写真1)。
・対策
応急処置として、窒素を含む液肥か、尿素を100~200倍に薄めて施します。育苗中に苗の子葉の色が淡くなってきたら、液肥を与えます。窒素は雨で流失しやすいので、大雨後には速効性の窒素肥料を追肥しておくと安心です。

〇ホウ素欠乏
ホウ素は新芽や根の成長にかかわる要素です。欠乏すると、ダイコンやカブの根の中が褐変したり(写真2)、ブロッコリーの茎の表面にかさぶた状のもの(写真3)ができます。
・対策
ダイコンやカブ、ブロッコリーなどアブラナ科の野菜は、ホウ素の必要量が多いので、元肥施用時にホウ素を含む微量要素複合肥料(FTEなど)を施しておくとよいでしょう。


〇カルシウム欠乏
キャベツやレタスの葉の縁が茶色になった場合は、カルシウム欠乏が疑われます(写真4)。カルシウムは水とともに根から吸収され、水と一緒に植物体内を移動します。土が乾いて吸水が抑制されると、蒸散が少ない新芽や葉先に欠乏症が現れます。
・対策
元肥に石灰資材を施用し、土が乾きすぎないように水やりをします。窒素が多すぎるとカルシウムの吸収が抑制されるので、適正な施肥に努めます。カルシウムは根の先端で多く吸収されるので、畑の水はけをよくするなどして根傷みをさせないようにします。

〇岐根(また根)
ダイコンやニンジンなどの根菜類の主根がまた根になるものです(写真5)。未熟な有機物の施用によって増殖した微生物、土壌線虫、土壌病害などにより、伸長中の主根が傷つくと発生します。
・対策
堆肥を施用する場合、完熟したものを使用し、根菜類では早めに施用しておきます。土壌病害虫が発生した畑には根菜類を作付けしないか、作付けするなら事前に太陽熱消毒などを行います。湿害で根が腐っても岐根になるので、高畝にするなど、水はけを良くすることが大切です。

〇根菜類の裂根
肥大した主根に亀裂が入るものです(写真6)。生育後期に土壌中の窒素や水分が多いと発生しやすく、気温が高いと発生を助長します。
・対策
畑の水はけをよくし、追肥の時期が遅くなったり、量が多過ぎないようにします。
