ふるさと探訪

日本各地の農畜産物を産地からリポート

食べやすくて甘い小粒ぶどうデラウェア

撮影◎磯野博正

小粒ぶどうの代名詞ともいえるデラウェア。
種なしで、次々と食べられる爽やかな甘味は、子どもからお年寄りまで幅広い世代に親しまれています。
大阪府は明治時代からデラウェアの栽培を始め、昭和初期には全国で最大の栽培面積を誇りました。今でも栽培面積は全国3位で、5月のゴールデンウィーク明けから出荷が始まります。
主要産地の1つ、羽曳野市で甘く育てる秘訣を探りました。

生育サイクルに適し 約100年前から栽培

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山肌に沿って立つハウス

 大阪市内から南東へ電車で30分ほどの南河内地域にある羽曳野市。ぶどうやいちじくなど果物の栽培が盛んで、金剛山地から河内平野へ下る山麓の斜面に沿って、ぶどう棚のハウスが張り付くように広がります。
「この辺りは、温暖な瀬戸内式気候です。ぶどうの芽が出て枝が伸び始める春には菜種梅雨で水分が補給され、葉が生い茂る頃には五月晴れ、実が肥え出すと梅雨入りと、生育サイクルと気象条件が合っており、約100年前から栽培が行われてきました」と、JA大阪南 営農部営農指導課の築地 源(はじめ)さん。今はハウス栽培が主流で、ボイラーによる加温や無加温、ビニールの一重または二重被覆など、作型を変えています。さらに傾斜地で育てることで生育が分散され、5月半ば~7月末まで長期間にわたって出荷できます。

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病気予防と品質アップを目指し、ハウスのビニールを年中かけたままにする独自の方法で、栽培を進める大阪葡萄飛鳥出荷組合の端山陽三副組合長
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1房ずつジベレリン液に浸して種なしにします

 デラウェアは、生育途中で植物ホルモンを利用したジベレリン液に浸して、種なし処理をします。
「他のぶどうと違い房の形を整える摘粒作業がなく、水分調節やジベレリン処理などで形が決まります。3月の開花前に1回、開花後に1回行いますが、実の膨らみ具合から満開を予想して作業日を決めなければなりません」と話すのは、デラウェア70アールに加え、シャインマスカット、あづましずくなど大粒品種も手掛けるベテラン生産者、大阪葡萄飛鳥出荷組合の端山陽三副組合長。長さがまだ5cm程度しかない小さな房を、夫婦2人で1房ずつジベレリン液に浸していく、その作業量たるや膨大です。「何千何万房とあって、気が遠くなります」と、端山副組合長は苦笑い。しかも、満開日を見極めて適期に処理できるかどうかがデラウェアの品質に直結するので、一番大変な作業だと話します。

大粒品種が出る前の梅雨時期が最盛期

 寒暖差によって実が甘くなるため、こまめな温度管理も栽培のポイント。端山副組合長は「斜面のぶどう棚は上の方が温かく、暑い日は上の側面ビニールを開けると中の熱が自然に抜けます。でも、気温に合わせてビニールの巻き上げ・下げをするために、毎日通うのは大変でした」といいます。スキー場並みの急勾(こう)配があるぶどう畑は、歩くだけでも一苦労。そこで数年前から7カ所あるぶどう畑に自動換気装置や温湿度センサーなどを順次設置し、スマートフォンで管理する方法に切り替えました。「作業が楽になって、ボイラーの使用も減り、省エネになりました。組合全体で導入を進めて、スマート農業で環境にやさしいぶどう作りを目指しています」と、端山副組合長は意気込みます。

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ハウス内の環境をスマートフォンで確認し、自動換気装置でこまめに調整することで、糖度をしっかりのせます

「自動換気装置を設置している生産者はまだ少なく、5月になると高温障害対策からビニールを外す生産者が主流です。JAとしても本格的なスマート農業化に向けて支援を進めていきます」と、JA大阪南の築地さんも話します。
 収穫は早く色づく斜面上部の房からスタート。目指すのは、こんもりとした俵型で100〜150gくらいの房です。
「初夏から梅雨時期は昼夜の寒暖差があるので糖度がのります。糖度の高い、黒っぽい皮の房を選んで切り取っていきます」と、端山副組合長。多い日は約240kgを収穫し、自宅の作業場で選別・パック詰めを行い、翌朝9時までに集荷場へ出荷します。集荷場ではJAのスタッフが目視で品質を確認。6月中~下旬の最盛期は、出荷量が1日約6tにもなります。

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自宅作業場で不要な茎や軸を切り、パック詰め
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【左】糖度23度!露地物は全国平均で18度くらいといわれています【右】集荷場ではJAのスタッフが最終チェック

「6月上旬は国産果実の種類が少なく、市場ニーズが高いです。ぶどうシーズンのトップバッターとして早期出荷に注力していきたいです」と、JA大阪南の築地さんは今後の目標を話してくれました。
 甘味がギュッと詰まり、1房丸ごと食べ進められるのが醍醐味のデラウェア。ジュースやコンポート、肉のソースなど、アレンジもいろいろ楽しめます。凍らせてシャーベットにするのもおすすめ。食後やおやつ、お弁当のデザートに、いろいろなシーンで活躍する小粒ぶどうをたっぷり味わいたいですね。
(2025年5月中旬取材)

JA大阪南の築地 源さん
「大阪の温暖な気候で育った、濃厚な甘さと適度な酸味が自慢のデラウェアをたくさん食べてください」と、JA大阪南の築地 源さん

●JA大阪南

【デラウェア】生産概要
生産者:215人
栽培面積:約126ヘクタール
出荷量:260t(2025年実績)
主な出荷先:阪神、京浜