
リンドウは日本が原産地のひとつとされ、古くから根を生薬に使ってきました。
観賞用として栽培が広がったのは1960年代。
平安時代から好まれてきた上品な色合いに加え、花持ちの良さからお盆や秋彼岸の供花(きょうか)になるなど、広く親しまれるようになりました。
岩手県は作付面積、生産量ともに日本一。
中でも八幡平市はオリジナル品種「安代りんどう」で知られる中心的産地です。
色鮮やかなリンドウを求めて、JA新いわてを訪ねました。
オリジナル品種で「安代ブランド」を確立

岩手県北部の内陸側、安比(あっぴ)高原や岩手山を擁する八幡平市。夏に吹く冷たい偏東風(やませ)による冷害で米が不作になりやすいため、その代替として1971年に6~7人の若手生産者がリンドウ栽培を始めました。
「冷涼な気候がリンドウ栽培に適しており、発色の良い花が育つことから八幡平市(旧安代町)で栽培が広がりました。産地の特色を出すため、92年には品種改良に着手して、開花時期の異なるものや花色が白やピンクのものなど、多彩な品種を開発し『安代りんどう』としてブランド化しました」と、JA新いわて八幡平営農経済センター安代地区担当課の田村公樹さんは話します。今では30種類以上のオリジナル品種を保有し、栽培するリンドウの98%以上を占めています。1品種の見頃は2週間程度ですが、露地栽培で早生(わせ)から晩生(おくて)まで品種をリレーしながら、7~10月末まで出荷が続きます。
「リンドウは基本的に水田で露地栽培します。作り続けると連作障害が出るため、一度田んぼに戻し稲作をして地力を回復させてから再び、リンドウを栽培する輪作をしています」と話すのは、JA新いわて八幡平花卉(かき)生産部会りんどう専門部の勝又勝男部長。12年前に就農し、夫婦2人で1・1ヘクタールの水田に7種類のオリジナル品種を植えて、毎年約40万本を出荷しています。


「リンドウは多年草で、6月に苗を植えると7月に花が着きますが、1年目は収穫せずに株を育て、2年目の7月から収穫して出荷します」と、勝又部長。6年間栽培し続けると株が弱ってくるので、出荷量にばらつきが出ないよう、毎年30アールずつ改植を行います。数年後の市場ニーズを見越し、花の色や開花時期などを考えて品種を選ぶのが一番難しいと話します。
お盆と秋彼岸が繁忙期 「水揚げ」で日持ち良く

先端の蕾が少し膨らみ色付いた頃に収穫します。刃物で花を刈り取ると傷口から雑菌が入り病気が広がるので、1本ずつ手で折って集めます。作業は早朝4時から正午まで行い、その数はなんと約1万5千本にもなります。「需要が増えるのはお盆と秋彼岸の2回で、8月1~10日がピーク。この時期は1日当たり約3万本の収穫量になります。花を必要とする人が待っていると思うと、やりがいにつながります」と、勝又部長。収穫した花は、日持ちするよう自宅の作業場で茎を水に浸す「水揚げ」を行い、背丈や花数で選別し、結束機で10本ずつ束ねて箱詰めします。
「花が10日以上持つように、株を丈夫に育てて開花のタイミングを見極めて収穫し、抜き打ち検査も行うなど、部会全体で品質を統一してブランドの維持向上に努めています」と、勝又部長は質の良さに自信を覗かせます。



集出荷場では品種や花数などの規格で自動選別され、予冷をかける真空槽で一気に冷やしてから出荷。コールドチェーン(低温物流)で全国の市場へと運ばれ、2日後には店頭に並びます。最盛期には1日に約70万本も出荷するとのこと。「市場から安代りんどうを指定されることも多いです」と、JA新いわての田村さん。10年前から生産者が協力して小学生向けにリンドウの栽培体験を行うなど、食育ならぬ「花育」に力を入れ、地域の特産として後継者の育成にも取り組んでいます。
リンドウの品種には、夏に咲き花弁が開かず筒型になるエゾ系と、秋に咲き花弁が外側に開くササ系、2つを掛け合わせたハイブリット系があります。「花数があるので1輪でも引き立ちます。それぞれの形を生かして、リビングや玄関などに飾るのもおすすめです」と、勝又部長は生活に気軽に取り入れてほしいと話します。他の産地にはない色鮮やかさが人気の秘訣。青い花弁は凛とした雰囲気で、気分をピシッと引き締めてくれそうです。酷暑の夏、部屋に飾って潤いを感じてみてはいかがでしょうか。
(2025年8月下旬取材)

●JA新いわて
【安代りんどう】生産概要
生産者数:120人
栽培面積:80ヘクタール
出荷量:1850万本
主な出荷先:県内、仙台、関東、中京、関西、九州