コラム 記事一覧

ふるさと探訪

日本各地の農畜産物を産地からリポート

香りの良さとシャキッとした食感ごぼう

撮影◎鎌田啓之介

ごぼうは10世紀以前に中国から薬草として渡来しました。
今では野菜として栽培されていますが、日常的に食べているのは、世界でも日本人くらいです。
青森県は、ごぼうの生産量日本一、その中でも三沢市は県内で作付面積1位を誇ります。
収穫真っただ中のJAおいらせで、産地の特色などをお聞きしました。

長く太く伸びる土づくり

 三沢市のある青森県南東部の太平洋沿岸。夏に吹きつける冷たいやませ(偏東風)は、かつては稲作に冷害をもたらす厄介な存在でした。しかし、ながいも、ごぼう、にんにくなどの根菜類にとって、この冷涼な気候と昼夜の寒暖差は生育に最適な気候条件となっています。
「ごぼう栽培は1970年頃からながいもの輪作体系の1つとして始まりました。この辺りは火山灰由来の黒ボク土層が1mにも達し、石の少ない土壌はごぼうを真っすぐ育てるのに向いています。今では日本一のごぼう産地です」と、JAおいらせ営農部本店指導課の江刺家(えさしか)武さん。JAおいらせでは、ひげ根が少なく肉付きの良い「柳川理想」に品種を絞って栽培。白肌で肉質がやわらかく、香りと食感が良い「柳川理想」は、市場から高い評価を得ています。

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道路沿いの看板。「おらほ」は「私たち」を意味する主に東北地方の方言

 遅霜の心配がなくなる4月下旬~6月中旬に種をまき、9月末~11月に収穫後、貯蔵施設で保管しながら、翌年4月まで長期出荷しています。
「ごぼうは土もの野菜なので『どれだけ良い土をつくれるか』で、品質が変わってきます。水分を求めて根を伸ばすので、土壌の保水性や通気性などを高めるために堆肥を入れ、足が沈み込むほどフカフカになるよう深く耕します。目指すのは長く太いごぼうです」と話すのは、JAおいらせやさい推進委員会三沢地区ごぼう部会の田中継美(つぐみ)部会長。15年前にトラック運転手を辞め、家業を継ぎました。土づくりに力を入れ、面積当たりの収量が増えたときはうれしくて、ごぼうづくりの面白さに目覚めたと話します。現在は7ヘクタールの畑でごぼうをはじめ、ながいも、にんじん、にんにくを輪作しています。気を付けているのは発芽をそろえること。「発芽がずれると先に発芽した株の葉陰に後発の株が入ってしまい成長しません。発芽に適した環境になるよう畑全体の水分量や種まきの深さを調整しながらまいています」。

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「栄養豊富な健康野菜で、チップスやサラダなどごぼうを使った料理もいろいろあります。たくさん食べてもらいたいです」と、JAおいらせ ごぼう部会の田中継美部会長

 発芽がそろって葉と根が伸びる夏に、やませが吹いて地上の気温が低くなると葉の成長が鈍るため、養分が根に集中して長く太いごぼうになるのです。

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光合成で作られた養分が根を肥大させます

葉を切り取ってから一気に掘り上げ

 海近くの防風林に囲まれたごぼう畑では、葉が刈り取られ、トラクターに取り付けられた収穫機が次々とごぼうを掘り上げています。引き抜かれたごぼうは、自動的に20本くらいにまとめられ、畑にはごぼうの山が点々と築かれています。

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ごぼうの茎の付け根を収穫機のベルトにひっかけて引き抜いていきます
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長さ・太さで分けて集めます

「家族4人で作業するので、1人がトラクターを運転し、3人はごぼうの長さ・太さを選別しながら手で拾っていきます。ピーク時はこの回収作業が大変で」と、苦笑いの田中部会長。収穫最盛期の10~11月は7~16時まで、コンテナ8台分(約3t)を掘り取り、その日のうちにJAの選果場へ持ち込みます。
 選果場では、鮮度を保つため土付きのまま茎の付け根を切り落として選別機へ。重さで分けた後は1本ずつ曲がりなどをチェックして、乾燥防止のビニールを敷いた10kg箱に詰めます。

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1本ずつ選別機に載せ、重さで規格分けします
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【左】10kgごとに箱詰めされます
【右】すぐに出荷するもの以外は、貯蔵施設で鮮度保持

「高齢化で離農する方も多く年々栽培面積が減ってきていますが、需要を伸ばすことで日本一のごぼう産地を守っていきたいです」と話す、JAおいらせの江刺家さん。コロナ禍で消費が縮小、当時は宣伝活動もできませんでしたが、今はすりおろしごぼうとにんにくのスープやごぼうを使ったドーナツなど、多彩な料理を載せたレシピブックを作り、都市部でのPRに力を入れています。
 田中部会長のおすすめは、ごぼうと人参のサラダを食パンに載せて焼くオープンサンド。ごぼうらしいシャキシャキ感が楽しめるそうです。香りやうま味は皮の近くに多いので、土などはたわしで洗い、皮はこそげ落とす程度に。切り口が黒くなるのはポリフェノールによるもの。水にさらすと成分が流出して風味も落ちるので、さらしすぎないようにしましょう。ごぼうの滋味あふれる大地の味をさまざまな料理で存分にお楽しみください。
(2024年11月上旬取材)

「やわらかで香り良いのが自慢です」と、笑顔のJAおいらせの江刺家 武さん

●JAおいらせ

【ごぼう】生産概要
栽培面積:約300ヘクタール
生産者数:269人
出荷量:約6900t(2023年実績)
主な出荷先:全国(北海道、沖縄を除く)

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ごぼうが主役の料理ピーラーごぼうのペペロンチーノ風

東京都・シマエナガさん

1人分:約170kcal 調理時間:約20分

材料4人分

  • ごぼう 1本(200g)
  • まいたけ 1パック(100g)
  • ベーコン 4枚
  • にんにく 2片
  • 赤唐辛子(ヘタと種を除く) 1本
  • 大さじ2
  • 小さじ1/3
  • オリーブ油 大さじ2
  • パセリ(みじん切り) 適量
  • 黒こしょう(粗びき) 少々

作り方

  1. ごぼうは皮をこそげ取って15cm長さに切り、ピーラーでむいて水にさらす。まいたけは小房に切り、ベーコンは1cm幅に切る。にんにくは半分に切って芽を取り、包丁の腹で潰す。

  2. フライパンに油とにんにく、赤唐辛子を入れて弱火にかけ、香りを移す。にんにくがきつね色になったら取り除き、中火にしてベーコン、まいたけの順に炒めて、水気をきったごぼうを加えて炒める。

  3. 全体に油が回ったら塩をふって酒を加え、ごぼうがしんなりするまで時々上下を返しながら3~4分、好みの歯応えになるまで炒める。

  4. 器に盛り、パセリ、黒こしょうをふる。

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ごぼうが主役の料理ごぼうと牛肉の柳川風

神奈川県・リンゴ姫さん

1人分:約590kcal 調理時間:約30分

材料4人分

  • ごぼう 1本(200g)
  • 牛バラ肉(薄切り) 400g
  • ねぎ 2本
  • みつば 1/2束
  • 4個
  • A
    • だし汁 360ml
    • みりん 120ml
    • 60ml
    • しょう油 60ml

作り方

  1. ごぼうは皮をこそげ取ってささがきにし水にさらす。牛肉は食べやすい大きさに切り、ねぎは5mm厚さの斜め切り、みつばは3cm長さに切る。卵は溶いておく。

  2. 土鍋に水気をきったごぼうとAを入れて蓋をし、中火にかけて沸騰したら火を弱め3〜4分煮る。

  3. 2に牛肉を全体に広げながら入れ、沸騰したらアクをすくい、蓋をして2〜3分煮る。

  4. ねぎを加えてひと煮したら卵を回し入れ、みつばを散らして蓋をし、火を止め2〜3分蒸らす。

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ごぼうが主役の料理ごぼうのスティック春巻き

兵庫県・わかめさん

1人分:約230kcal 調理時間:約30分

材料4人分(16本)

  • ごぼう 1本(200g)
  • スライスチーズ 4枚
  • 焼き海苔 全型2枚
  • 春巻きの皮 8枚
  • マヨネーズ 適量
  • 塩、こしょう 各少々
  • 揚げ油 適量
  • 小ねぎ(飾り用) 適宜

作り方

  1. ごぼうは皮をこそげ取って12cm長さに切り、太い部分は縦に2〜4等分して16本作り、水に浸けてアク抜きする。海苔は半分に3回折って8等分、チーズは縦に4等分、春巻きの皮は半分に切って、それぞれ16枚作る。

  2. 春巻きの皮を横長に置き、手前1/3に海苔、チーズを順に重ね、マヨネーズを細口で1本絞り、水気を拭いたごぼうを置き、塩、こしょう各少々をふる。皮の左右と上の端を水で濡らし、途中で左右を内側に折りたたみながら巻く。16本作る。

  3. フライパンに1cmほど油を入れて160℃に熱し、2を巻き終わりから入れ、転がしながら揚げ焼きにする。

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野菜の育て方

ビギナーに人気!季節に合わせた家庭菜園

ワケギ

イラスト◎かとうともこ 監修◎山崎弘一郎

ネギの仲間ですがたねをまかず、たね球を植えつけ栽培します。プランター栽培もおすすめ

 ワケギはネギよりも寒さに弱く、日当たりの良い暖かい環境を好むため、関東以西で多く栽培されています。たねではなく、分けつした球根(たね球)を植えつけます。
 秋からぐんぐん成長し収穫の時期になったら、株元から3〜4cm残して刈り取ります。株が弱らないように追肥をすると、20〜30日でまた葉が伸びて収穫できます。冬は成長が止まりますが春になると再び伸びて2〜3回収穫できるので、引き抜いて収穫するのに対して、何度も収穫を楽しめます。
 たね球をとる場合は、4月頃から葉を成長させ、6月頃に葉が枯れて休眠期に入ったら掘り上げます。陰干しでよく乾かして保存し、太って形の良い球根を選び、前作とは別の場所に植えつけましょう。

植えつけ

球根の枯れた皮を取り除き、1~2個ずつに分けます(たね球)。尖った方の頭が少し出るくらいに植えつけ、土をかぶせて軽く押さえたっぷり水やりをします。

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発芽

10日ほどで10cmくらい芽が伸びてきます。

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追肥

茎葉が伸びて株分かれが始まった頃に、1m2当たり化成肥料を8-8-8なら20g、14-14-14なら10g程度を施用し、株元に軽く土寄せをします。その後は3~4週間に1度程度、生育を見ながら同量の追肥をしてください。
伸びた葉だけを刈り取り収穫した場合は、市販の液肥(8-6-5など)を500倍程度に薄めて、株元にジョウロなどで施用すると、残った球根からの芽吹きが良くなります。

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収穫

草丈が20~30cmになったら株元を3~4cm残してハサミで切るか、30cmくらいで抜き取って収穫します。収穫期が遅れると根元がらっきょうのように肥大して品質が低下するので、適期を逃さないようにしましょう。

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追肥を続けると再び葉が伸びて、2~3回収穫が楽しめます。

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球根の掘り上げ

6月頃、葉が黄色くなって枯れてきたら、晴れた日に球根を掘り上げます。

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球根をザルや新聞紙に載せたり、束ねて吊るしたりして、風通しの良い日陰で乾かします。2~3個に分けて保存し、次の植えつけにたね球として使いましょう。

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●土づくりワンポイントアドバイス

指導:岡本 保(元JA全農 肥料研究室技術主管)

たね球を植えつける2週間以上前に、1m2当たり苦土石灰100gと完熟堆肥1kg(いずれも過去1年以内に施用していれば不要)を散布し、深く耕しておきます。元肥は植えつけの1週間前に、1m2当たり化成肥料を8-8-8なら100g、14-14-14なら50g程度散布し、土に混ぜ込みます。


●ワケギの栽培スケジュール

(プランターでも畑でも栽培できます)

スケジュール
※ 地域や品種によって多少の違いがあります。

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家庭菜園Q&A

家庭菜園のよくある質問に先生が回答

指導◎川城英夫(元JA全農 耕種総合対策部技術主管) イラスト◎かとうともこQ.葉菜類の苗の植えつけのコツは?

 ここ数年の猛暑により、夏にたねをまくキャベツなどの葉菜類では、苗の活着不良や害虫による被害が多発しています。
 そこで、葉菜類の苗の活着を良くする方法と手軽に虫害を防止するやり方を紹介します。

〇葉菜類の苗の植えつけ方

 キャベツやブロッコリーなど、育苗する葉菜類は、植えつけ後の活着がその後の生育を大きく左右します。
 まず、高温期の植えつけは、気温が低下する夕方に行うと良いでしょう。
 苗には、植えつけ前後にたっぷり水をやります。植えつけ前の水やりでは、液肥を規定の濃度に薄めて与えると、活着とその後の生育が早くなります(図1)。

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【図1】植えつけ前、苗にたっぷり水をやる

 苗を植えつける深さは、結球下部に病気が出やすいレタスでは根鉢が隠れる程度とします(写真1)。一方、キャベツやブロッコリー、ハクサイなど、アブラナ科野菜の苗は、風で胚軸が折れないように子葉のつけ根が埋まるくらい深植えします(写真2)。
 植えつけ後にもたっぷり水をやり、さらに活着するまでの2~3日、苗がしおれないように水をやります。

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【写真1】レタスは根鉢が隠れる程度に植えつける
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【写真2】キャベツは子葉のつけ根が埋まるくらいに深めに植える

〇手軽に虫害を防止する方法

 ハイマダラノメイガ(シンクイムシ)やアオムシなどによる被害を防止するため、植えつけ前に植穴や株元に粒剤タイプの浸透移行性殺虫剤を施用しておくと、3~4週間虫害を防止できます(写真3)。

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【写真3】浸透移行性の殺虫剤を使用すると、ハイマダラノメイガなどの被害を大幅に軽減できる

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[投稿]わが家の菜園

読者の家庭菜園の写真とエピソードをご紹介

わが家の菜園9月

あなたが育てている作物をスマホなどで撮影して送ってください!畑やプランターでの栽培の様子、どんなエピソードでも大歓迎。皆さまのわが家ならではの菜園体験談をお待ちしています。

『バターナッツかぼちゃ』群馬県 トンボさん

暑さに強く、手間のかからないかぼちゃと聞き、種から栽培しました。7月の37℃超えの猛暑の中でも、病気にもならず、収穫できました。
スープ、グリル焼きがおすすめです。

『4年目にして』東京都 YogiBearさん

クラウン挿しから育て始めて4年が経過し、ようやく色付いてきたベランダで育てているパインです。
通常は3年程で実が付く様ですが、冬に屋内に取り込むのが遅れる事数回、10度以下の気温にさらされた為か成長が遅れ、今年漸く開花し、あと少しで完熟を迎ます。
冬の気温さえ気を付ければ意外と関東のベランダでも育つものですね。食べるのが楽しみです。

『カダヤのズボラ農園』新潟県 カダヤさん

ズボラ農園と称して適当に育ててますが、それでも見事に実った時は嬉しくなりますね。ナス、こんなに立派に。ジャガイモ、粒は小さいけどカレーの材料になってくれてありがとう。

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料理のポイント

おいしく作る料理のポイントを写真付きで解説

栗を煮るひと手間で風味がグッと際立ちます。栗ごはん

料理◎太田晶子 撮影◎武井優美

1人分:約390kcal 調理時間:約60分(栗を熱湯に浸ける時間、米を浸水し炊く時間は除く)

材料4人分

  • 300〜400g
  • 1.5合
  • もち米 0.5合
  • 砂糖 小さじ4
  • 大さじ1
  • 小さじ2/3

作り方

  1. 栗の皮をむく

    栗は熱湯の入ったボウルに浸け10分ほど置いてやわらかくし、1個ずつ鬼皮と渋皮をむいたら、すぐに水に浸ける。すべての栗がむけたら水を替え、大きい栗は半分に切って10分ほど置いてアクを抜く。
    ※熱湯に浸す前に30分ほど水に浸け、乾燥や虫食いで浮く栗を取り除く
    ※栗が熱い場合は軍手をするとよい

    Point
    ポイント

    鬼皮のむき方①
    栗の底の固い部分(座)に包丁を入れ、切り離さずに栗を逆側に倒し、座と側面の鬼皮を一緒に剥ぎ取ります。

    ポイント

    鬼皮のむき方②
    残りの鬼皮を、少しずつ、座から先端に向けてむいていきます。

    ポイント

    渋皮のむき方
    包丁を栗の形に沿わせながら、薄く渋皮をむきます。渋皮が残っていると、ごはんに渋味が出て色も付くので、しっかりむきましょう。

  2. 下煮をする

    鍋に水300mlと砂糖を入れて中火にかけ、沸騰したら栗を入れて弱火にして2分煮る。火を止め、粗熱が取れるまで20分ほど置く。

  3. 炊く

    米ともち米を合わせて洗って炊飯器に入れ、2合の目盛りまで水を入れたら、大さじ1の水を取り除いて、酒を加え、30分浸水する。塩を加えて混ぜ、水気を切った2の栗を上にのせて普通に炊く。

MEMO

栗には、外側を覆う固い「鬼皮」と、その内側にある薄い「渋皮」があります。料理に使う場合は渋皮まで丁寧にむきましょう。
栗をさっと煮含めて、ほんのり甘くしっとりした食感に仕上げました。もち米を入れるともちもちして栗によく合いますが、米2合でも大丈夫です。

「食」と「農」のエッセイ

日本ペンクラブ会員の著名人によるリレーエッセイ

第81回 グレゴリー・ケズナジャットさん
町の一部をいただく

著者のプロフィールはこちら

 秋の味覚には目がない。きのこやかぼちゃ、さつまいもに栗、晩酌の肴として炒り銀杏。毎年この頃、街中に現れる紅葉模様の飾りを見るだけでよだれが出る。
 故郷も四季のある地域で、ここへ渡ってくる以前も毎年秋を経験していたが、頭の中では秋は日本と連結している。向こうでも紅葉狩りのため山へ出かけたり、アメフトを観戦したり、ハロウィンに向けてかぼちゃをくり抜いたりするなど、その地域ならではの季節の楽しみはあった。しかし季節とともに食事が変わることはない。土壌が貧弱な地域で、農業は皆無に等しく、僕は年中季節を気にせず、スーパーで買ってきた同じメニューを食べていた。
 その習慣が変わったのは日本に来てからだった。大学卒業後にこちらに渡り、しばらく京都府の山奥の町の小中学校で英語を教えていた。その町の規模や人口は偶然にも故郷とほぼ同じだったけれど、雰囲気はまるで違う。何よりも農業が盛んで、町のあらゆるところに田んぼや畑が広がっていた。そんな昔ながらの田園風景に一目惚れした。
 景色がよかっただけではない。季節の移ろいに合わせて食卓も常に変わった。春には近くの川で取れた鮎を食べに、勤め先の学校の同僚と出かけるのが恒例行事だった。夏になると、近所の方が畑からの採れたてのトマトや茄子を家に届けてくれた。その町で過ごした秋を思い出すと、その光景の記憶とともに匂いや味の思い出も浮かんでくる。小学生たちと一緒に灯油ストーブを囲んで食べた、ローカルな食材でできた給食。秋祭りの提灯に照らされた夜道を歩きながら頬張った焼き芋。
 農作業を日常的に見ていると、それらはすべて、単なる食べ物ではなく、自分の生活のすぐ隣で丁寧に栽培されていたものであることを意識せざるを得ない。食事するたびに、その町の一部が自分の一部となり、人生で初めて、食事のありがたみという言葉を本当に理解できた。
 仕事のため都会へ引っ越して久しいが、今でも秋のものを食べるとあの町へ思いを巡らす。食材は再びスーパーで調達するものになったけれど、そのありがたみは忘れていない。

イラスト:はやしみこ

グレゴリー・ケズナジャット

小説家。1984年米国サウスカロライナ州生まれ。2007年、外国語指導助手として来日。2017年、同志社大学大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程修了。主な作品に『鴨川ランナー』(京都文学賞)、『開墾地』(早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞)など。法政大学グローバル教養学部准教授。

グレゴリー・ケズナジャット
『トラジェクトリー』文藝春秋
『トラジェクトリー』
文藝春秋
日本ペンクラブ

日本ペンクラブとは、詩人や脚本家、エッセイスト、編集者、小説家など、表現活動に専門的、職業的に携わる人々が参加、運営する団体です。
https://japanpen.or.jp/

なるほど全農

食と農についての「なるほど」な情報をお届け

持続可能な農業に向けて【耕畜連携】
「耕種農家」と「畜産農家」の連携による
資源循環の取り組み

日本では飼料(家畜のエサ)や肥料原料の多くを海外から輸入しています。
しかし、国際情勢の不安定化や世界的な人口増加によって、資源価格が高騰し、調達自体も不安定になっているため、国内調達の重要性が高まっています。
そこで、全農はお米や野菜を生産する耕種農家と、牛や豚、鶏などを飼育する畜産農家が連携し、お互いの生産工程で生まれる資源を循環させて持続可能な農業を目指す「耕畜連携」に取り組んでいます。

耕種と畜産、お互いの資源を循環

 資源を再利用するリサイクル。新聞紙や段ボール、ペットボトルなど、私たちの普段の生活でもリサイクルされているものはたくさんあります。
 実は、食料生産の現場でもリサイクルが行われています。例えば牛や豚、鶏などの排せつ物を堆肥に変えて田んぼや畑の肥料にするといった取り組みがあります。それぞれの生産物や副産物を活用して、資源を循環させているのです。この仕組みは「耕畜連携」と呼ばれています。

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 耕畜連携の利点は2つあります。まず、肥料・飼料を安定的に準備できることです。
 現状では海外依存度が高く、災害や紛争などによって資源が高騰すると、肥料や飼料原料が調達できなくなる恐れがあります。しかし、家畜の排せつ物を肥料とし、飼料用米や子実とうもろこしなどを生産して家畜の飼料とすることで、国内で資源の循環が生まれ、食料安全保障にもつながります。
 2つ目は環境への負荷が減ることです。家畜の排せつ物をしっかり発酵させて堆肥として再利用すれば廃棄物として処理することが減り、環境にやさしい持続可能な食料生産システムを構築できます。

堆肥の需給マッチングなど全農が連携を後押し

 畜産農家が堆肥を生産しても、耕種農家が求める品質でなければ活用できません。全農では2023年にwebサイト「耕×畜なび」を開設しました。全国のJA堆肥センターが生産する堆肥をまとめ、堆肥の種類や成分、センターの所在地などを地図上に見える化。検索もでき、耕種農家と畜産農家の双方のニーズに合った堆肥を探せます。現在、約300ヵ所の堆肥センターが登録され、堆肥の活用に役立っています。

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耕×畜なび
https://ko-chiku.com

 また広島県本部では、2019年から「耕畜連携・資源循環ブランド『3-R(さん・あーる)』」の取り組みを進めています。「3-R」とは、「耕畜連携」による資源循環型農業で生産された農畜産物や加工品のブランドです。畜産業で出た堆肥を「資源(肥料)」として「再利用」する資源循環・耕畜連携の取り組みを「繰り返し」ていくことで、地域の環境保全と持続可能な農業を目指しています。

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耕畜連携資源循環ブランド3-R
https://www.zennoh.or.jp/hr/3-R/
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耕畜連携資源循環ブランド3-R
https://www.zennoh.or.jp/hr/3-R/

 耕畜連携は、食料安全保障や環境負荷の軽減など「次世代につながる食料生産のカタチ」です。資源の有効活用はこれからも求められていくことでしょう。全農は今後も耕畜連携の取り組みを進めていきます。

プロのおすすめレシピ

料理のプロがすすめる旬の食材を使ったレシピ

しっとりやわらかな鶏肉にきのこのうま味たっぷりのあんが絡みます鶏むね肉のきのこあんかけ

料理◎太田晶子 撮影◎武井優美

1人分:380kcal 調理時間:約30分

材料4人分

  • 鶏むね肉 小2枚(約450g)
  • 小1個
  • 小麦粉 大さじ3
  • A
    • 小さじ1/2
    • こしょう 少々
    • おろししょうが 小さじ1強
    • 小さじ1
  • サラダ油 適量
  • 小ねぎ(小口切り) 2本分
    きのこあんかけ
  • お好みのきのこ
    (しいたけ、しめじ、えのきたけ等)
    220g
  • たまねぎ 60g
  • にんじん 30g
  • だし汁 300ml
  • 酒、みりん 各大さじ2
  • しょう油 大さじ1
  • 小さじ1/4
  • 小さじ1
    <水溶き片栗粉>
  • 片栗粉、水 各大さじ1強

作り方

  1. 鶏肉は大きめの削ぎ切りにしてボウルに入れ、Aをもみ込んで10分置く。

  2. しいたけは石づきを取って細切り、しめじは石づきを落としてほぐし、えのきたけは石づきを落として長さを半分にする。たまねぎは3mm厚さの薄切り、にんじんは4cm長さの細切りにする。

  3. 鍋に2とだし汁、酒、みりんを入れて中火にかけ、沸騰したらしょう油と塩を加えて2〜3分煮る。野菜に火が通ったら酢と水溶き片栗粉を回し入れてとろみをつける。

  4. 卵を溶いて1に入れ、小麦粉も入れてよく混ぜる。フライパンに油を5mmほど入れて中火で熱し、鶏肉を並べ入れ、強めの弱火で片面2分くらいずつゆっくり揚げ焼きにし、油をきる。

  5. 器に4を盛って3をかけ、小ねぎを散らす。

ココがポイント

パサつきがちな鶏むね肉は、卵の衣をつけることで、やわらかく仕上がります。強めの弱火でゆっくり焼きましょう。

読者のひろば

読者から寄せられたお便り&絵手紙

読者のひろば

お便りはいつでもご応募をお待ちしております。掲載分にはおこめ券を進呈いたします。

わが家の定番レシピに

 JA鳥取のらっきょうを購入。漬けるために前のらっきょうをビンから出して「さて、この残った漬け酢をどうしよう……」。毎回、酢の物を作る時に少量使うくらいで余ってしまうのが、悩みの種でした。6月号の今月のおすすめレシピ「豚肉とごぼうと卵のらっきょう煮」を見つけ、さっそく作ってみたらそのおいしいこと!目から鱗です!あまり酢の物を食べない夫が「これはうまい!」と絶賛しました(笑)。友人、知人にも勧め、定番レシピになりました。
(岐阜県・ちあきさん)

母のお雑煮

 6月号に掲載された山内マリコさんのエッセイ「母のお雑煮、父の梨」を読んで、わたしも実家のお雑煮が恋しくなりました。結婚して初めての正月、お雑煮レシピが載った本を母からもらい、「ウチのお雑煮はこれなのか〜」とお雑煮にもいろいろな種類があることを知りました。母のお雑煮はシンプルな薄口、ふりかけた青のりが餅についてまた風味が良かった。結局数回しか作らなかったけれど、今度実家に行ったら母とお雑煮作りを楽しみたいと思いました。
(神奈川県・エミさん)

  • 神奈川県・加藤朋子さん
    神奈川県・加藤朋子さん
  • 鳥取県・嶋田幸枝さん
    鳥取県・嶋田幸枝さん
  • 千葉県・田村紗智子さん
    千葉県・田村紗智子さん
  • 鹿児島県・迫田恵子さん
    鹿児島県・迫田恵子さん
  • 佐賀県・綿瀬万由美さん
    佐賀県・綿瀬万由美さん