コラム 記事一覧

ふるさと探訪

日本各地の農畜産物を産地からリポート

ジューシーな果肉と豊かな香りメロン

撮影◎鎌田啓之介

芳醇な香りと濃厚な甘みが魅力のメロン。きゅうりと同じウリ科の野菜で、網目のあるネット系、網目のないノーネット系に分かれ、さらに果肉の色によって青肉、赤肉、白肉の3種類に分類されます。
茨城県は1998年から25年連続でメロンの生産量が日本一。
中でもJA茨城旭村は、光センサーによる選果で高品質なメロンを安定的に出荷しています。
トレーサビリティを確立し、生産者一人ひとりが品質向上に力を注いでいる産地です。

味の決め手は温度・湿度・水管理

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「海風による昼夜の寒暖差によって糖度がしっかりのった自慢のメロンです」と、JA茨城旭村メロン部会の江沼 俊 部会長

 茨城県の東、鹿島灘沿いにある鉾田市旭地区。温暖な気候とミネラル豊富な火山灰土壌が広がり、トマト、さつまいも、水菜など農業が盛んな地域です。数戸の農家がプリンスメロンの栽培を始めたのは1963年頃のこと。
「メロンは北アフリカが原産のため、乾燥した土地を好みます。この辺りは砂地で水はけがよく、昼夜の寒暖差もあり栽培に適した環境でした。今では、春メロンとしてオトメメロン、アンデスメロン、クインシーメロン、エルソルメロンの4品種を栽培。『旭メロン』としてブランド化しています」とJA茨城旭村営農販売課の酒井 巧さん。4月上旬から出荷が始まるオトメを皮切りに、6月末まで4品種を順次出荷しています。
 メロン部会の江沼 俊 部会長のハウスを訪ねると、クインシーの収穫が行われていました。
「クインシーは栽培期間が約5ヵ月のため、12月下旬に定植します。2月下旬にミツバチによる受粉を行い、受粉から約60日後が収穫の目安です。定植から受粉までの温度管理、受粉から収穫までの温度・湿度・水管理がメロンの味の決め手となります。ハウス内にトンネルを作って保温し、湿度調整のために毎日換気を行い、大玉を作るために葉を大きく茂らせるなど、細かく管理をして品質を高めます」と、江沼部会長。約1.5ヘクタールの畑にアンデス、クインシー、エルソルと、メロンのほかにトマトを栽培し、家族と研修生を含めた5人で管理しています。

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「1株につき収穫するメロンは4個。蔓を2本伸ばして1つの蔓に2個のメロンを実らせます。うちの場合は、花の様子を観察し、同じ日に咲く花の中から大玉になりそうな良い花をあらかじめ3~4個に絞り込んで受粉させます」とのこと。受粉時期をそろえることで、ハウス1棟分を同じ日に収穫できるので、安定的な収量の確保が可能になります。

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光センサー選果と生産履歴で品質保証

 受粉日から積算し収穫適期になると、事前にJAの職員がハウスを訪問して糖度をチェック。基準の糖度に達していたら収穫開始です。
「最盛期の収穫作業は大変ですが、『これはいい!』と自信をもって言えるメロンがたくさん取れると、栽培時の苦労なんて吹き飛んでしまいます。収穫は一番楽しい作業です」と、江沼部会長は笑顔を見せてくれました。

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皮に入ったひびを分泌液が塞ぎ、美しい網目(ネット)を作ります。ネットが細かく均等なほど実がバランス良く成長して高品質です

 JAの青果物管理センターに集められたメロンは、専門スタッフがキズやネット密度などを目視で検査。光センサー選果機で糖度や熟度を測定し、さらに外観センサーで網目(ネット)をチェックして選別します。
「サイズはS〜5Lまで8ランクありますが、出荷の中心は2~3Lの大玉です。選別後のメロンには、収穫日などの個体情報にアクセスできる二次元コード付きシールが貼られます。アクセスすると、生産者紹介・等級・糖度・栽培履歴・収穫日などが分かります。光センサー選果によって12度以上の糖度を保証し、市場からの信頼が高まりました」と、胸を張る酒井さん。春メロンのうち、糖度18度以上で外観の美しいものはプレミアムメロンとして販売します。最盛期の出荷量は1日に約3万ケース(約12~15万個)にも上ります。

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【右】大きさと、糖度・熟度の2段階でチェックする光センサー検査
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【左】生産者情報などが分かる二次元コード付きシール
【右】最盛期には箱詰めされたメロンがずらりと並びます

 オトメはすっきりとした甘み、アンデスは際立つ香りと軽やかな甘み、クインシーは緻密な果肉と強い甘み、エルソルは豊かな甘みと爽やかな後味と、品種ごとに異なる味わいが楽しめます。たくさんのメロンが出回る季節、食べ比べるのもいいですね。メロンは常温で追熟させます。食べ頃は二次元コードの収穫日を目安に判断してください。冷やし過ぎると甘みを感じにくくなるので、食べる2時間ほど前に冷蔵庫に入れましょう。果汁たっぷりでとろけるおいしさをぜひ味わってください。
(取材:2023年5月中旬)

酒井 巧さん
「光センサー選果で保証された甘いメロンをたくさん食べてもらいたいです」
JA茨城旭村の酒井 巧さん

●JA茨城旭村

【メロン】生産概要
生産者:約147名
栽培面積:約127ヘクタール
出荷量:約105万トン(2023年実績)
主な出荷先:関東、京浜、関西、長野

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鶏むね肉でメインのおかず鶏むね肉のカシューナッツ炒め

岩手県・伊藤友枝さん

1人分:300kcal 調理時間:35分

材料4人分

  • 鶏むね肉 1枚(350g)
  • カシューナッツ(無塩) 50g
  • たまねぎ 1/2個
  • 枝豆 正味1/3カップ(40g)
  • サラダ油 大さじ1
  • A
    • 小さじ1/4
    • こしょう 少々
    • 大さじ1/2
    • 片栗粉 大さじ2/3
  • B
    • ふたつまみ
    • こしょう 少々
    • しょう油 小さじ2
    • 砂糖 小さじ1/2
    • オイスターソース 小さじ1

作り方

  1. 鶏肉を1.5cm角に切り、ボウルに入れてAで下味をつける。

  2. たまねぎは1.5cmの角切り、枝豆は塩(分量外)を加えた熱湯で4分ほどゆでて、さやから出す。
    Bは合わせておく。

  3. フライパンに油を中火で熱して鶏肉を入れて広げ、弱火にして3分、上下を返して2分焼く。

  4. 強めの中火にしてたまねぎを加えて炒め、たまねぎが透明になったらカシューナッツと枝豆を加えてひと炒めし、Bを回し入れて全体に炒め合わせる。

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鶏むね肉でメインのおかず鶏むね肉のベーコンチーズ焼き

大阪府・松尾明日香さん

1人分:485kcal 調理時間:約30分

材料4人分

  • 鶏むね肉 2枚(700g)
  • ベーコン 4枚(80g)
  • スライスチーズ 2枚
  • 小さじ1/2
  • こしょう 少々
  • 小麦粉 適量
  • オリーブ油 大さじ1
  • トマト、ナス、ズッキーニ 各適量

作り方

  1. 鶏肉は皮目を下に置いて中央に切り込みを入れ、均等な厚さの観音開きにし、両面に塩小さじ1/4、こしょうをふる。開いた鶏肉の左半分に、ベーコン2枚を鶏肉の長さに合わせて折りたたんで置き、上にスライスチーズ1枚をおいて左右を合わせて半分に折りたたむ。同様にもう1枚作り、外側に小麦粉を薄くふる。

  2. トマト、ナス、ズッキーニは食べやすい大きさに切る。

  3. フライパンに油を熱し、1を中火で1分ほど焼いたら蓋をして弱火で5分焼く。上下を返して2を加えて4分ほど焼き、火を消して余熱で3分置いて中まで火を通す。

  4. 3を食べやすく切って、野菜と一緒に盛り付ける。

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鶏むね肉でメインのおかず鶏むね肉ときのこのかき揚げ

長野県・タエさん

1人分:600kcal 調理時間:30分

材料4人分

  • 鶏むね肉 小1枚(約250g)
  • しめじ 1/2パック(50g)
  • エリンギ 大1本
  • えのきたけ 1/2袋(50g)
  • たまねぎ 1/4個
  • にんじん 1/4本
  • 揚げ油 適量
  • 1個
  • 塩、こしょう 少々
  • A
    • しょう油 大さじ1.5
    • 砂糖 小さじ1
    • ごま油 大さじ1/2
    • 片栗粉 1/2カップ
  • リーフレタス 適宜

作り方

  1. 鶏肉を1.5cm角に切ってボウルに入れ、塩・こしょう少々と水大さじ1を加えてよくもみこむ。

  2. しめじとえのきたけは根元を落としてほぐし、1.5cm長さに切る。エリンギは1.5cm角に切る。たまねぎは1cm角に切り、にんじんは皮をむいてせん切りにする。

  3. 12Aを入れて混ぜ、卵も割り入れてよく混ぜる。

  4. 揚げ油を160度に熱して3をカレースプーンなどですくいながら入れて片面1~2分ずつ揚げる。

  5. 器にリーフレタスを敷いて4を盛る。

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野菜の育て方

ビギナーに人気!季節に合わせた家庭菜園

ピーマン

イラスト◎かとうともこ 監修◎山崎弘一郎

暑さや病害虫に強く、一株でたくさん収穫できる
初心者にも栽培しやすい作物

 トウガラシを改良して作られたナス科の作物で、生育適温は25~30℃と高温。遅霜の心配がなくなってから植えつけましょう。日当たり、水はけのよい場所を選び、植えつけ前にマルチを張り地温を上げると根張りがよくなります。苗が小さいうちは風で倒れやすいので、仮支柱で支えます。
 最初の花が咲いたら、側枝2本を残して3本仕立てにします。一番果がなったら本支柱に替え、一番果は早めに収穫して、株の成長を促します。実が次々なってきたら、内側の混み合う枝は切り落とし、風通しをよくします。
 収穫の目安は開花後15~20日くらい。早めに適度な大きさで収穫し、株の消耗を抑えて長く収穫を楽しみましょう。
 連作障害があるので、同じナス科の野菜は3~4年空けましょう。

植えつけ

苗は茎が太く、葉と葉の節間がつまったがっしりとした苗がよく、本葉が10枚程度で一番花の蕾が開き始めるくらいが植えつけ適期です。ポットごとバケツの水に浸けて十分水を吸わせ、根鉢を崩さないように取り出します。やや浅植えにして、根鉢が隠れるぐらいに土を寄せましょう。
50cm位の仮支柱を立てて、茎と支柱を8の字に結んで固定します。土が乾いたらたっぷり水やりしましょう。

整枝

最初の花が咲いたら、一番花の下の勢いの良い側枝(枝分かれ)2本を残し、それより下のわき芽はすべて取り除きます。

3本仕立て

一番果がなったら、長さ1m程の本支柱を立てます。2本の側枝がのびてきたらそれぞれ枝に沿って斜めに支柱を立てて3本仕立てにします。茎と側枝を固定し、実の重みで枝が倒れないよう支えます。土が乾いたら株元にたっぷり水やりしましょう。

追肥

一番果の収穫が始まる頃から、1m2あたり化成肥料(8-8-8なら40g、14-14-14なら20g程度)を、1~2週間に1回程度を基本に、枝の伸び方や果実の肥大の仕方を観察しながら、加減して施用します。鮮やかな緑色のピーマンを収穫するためには、追肥を切らさないようにすることがポイントです。

収穫

枝が折れやすいのでハサミを使って、こまめに収穫します。6~7cm大が目安。実がたくさん付いていたら、株を弱らせないよう摘果を兼ねて小さな実も採ります。終盤は赤く完熟させて甘みのあるピーマンを楽しんでもいいですね。

●土づくりワンポイントアドバイス

指導:岡本 保(元JA全農 肥料研究室技術主管)

植えつけの2週間前までに、1m2あたり完熟堆肥2kg(前作で堆肥を施用していれば1kg)と、苦土石灰100g(前作で石灰類を施用していれば省略)を散布し、深く耕しておきます。ピーマンは根を深く張らせることで樹勢(茎葉の元気さ)が維持され、収穫を長く続けることができます。深く耕して根が深く張れるように土づくりしましょう。
元肥は植えつけの1週間前に、1m2あたり化成肥料(8-8-8なら200g、14-14-14なら100g程度)を散布し、これもやや深いところまで混ぜ込みます。


●ピーマンの栽培スケジュール

(プランターでも畑でも栽培できます)

スケジュール

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家庭菜園Q&A

家庭菜園のよくある質問に先生が回答

指導◎川城英夫(元JA全農 耕種総合対策部技術主管) イラスト◎かとうともこQ.夏の暑さ対策は?

 ここ数年、夏が極端に暑くなっています。高温と強い日差しによって土壌も乾き、さまざまな野菜で生育障害や発芽不良が見られます。どのような対策があるか紹介します。

〇夏野菜への対策

 対策の一つは、暑さに強い野菜を作ることです。熱帯地方原産のオクラ(写真1)、ゴーヤー(写真2)、クウシンサイ(写真3)、モロヘイヤ、スイカに加え、スイスチャードなどは猛暑でも元気に育ちます。

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【写真1】オクラ。暑さに強く、次々と果実をつける。植えつけは十分暖かくなってから。
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【写真2】ゴーヤー。暑さに強く、病害虫の被害も少なく、丈夫で育てやすい。グリーンカーテンにも使える。
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【写真3】クウシンサイ。暑さに強く、病害虫の被害が少ないので栽培しやすい。真夏の青物として重宝。

生育中の野菜には、敷わらをすると地温が下がり、土壌水分の蒸発も防げます。定期的な水やりも欠かせません。

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敷わらは地温低下、土壌水分の蒸発抑制効果がある。

〇秋冬野菜への対策

 秋冬野菜の多くは、夏の暑い盛りにたねまきや苗づくりを行うため、猛暑や少雨によって発芽や苗づくりで失敗する人が少なくありません。
 育苗する場合の対策の一つは、発芽するまで涼しい場所で管理することです。レタスは30℃、キャベツやブロッコリーなどは35℃を超えると発芽不良を起こします。このような野菜は、芽が出始めるまでは軒下に置くか(写真4)、遮光資材で被覆するなどして、発芽適温に近づけます(写真5)。翌朝にかけて気温が下がる夕方にたねをまくことも効果的です(写真6)。

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【写真4】発芽するまで涼しい場所で管理。日が射さない軒下などに置いて発芽させる。発芽したら光の当たる場所に移す。新聞紙で覆うのは、主に土壌水分の蒸発を防ぎ、土が乾かないようにするためで、これによって発芽が安定する。
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【写真5】寒冷紗などで被覆して温度を下げる。
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【写真6】レタスのたねまき。高温で発芽しにくいレタスは夕方にたねをまく。

 じかまきするニンジンやダイコンなどは、土を手で握って開いたときに崩れるほど乾いていたら、たねまき前に1m2当たり20~30Lの水をやり、深いところまで土を湿らせます。
 夏にマルチをして苗を植えるレタスやたねをまくダイコンなどは、地温の上昇抑制と土壌水分保持効果がある白黒のマルチフィルムがおすすめです。

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白黒フィルムでマルチをして栽培するレタス。地温の上昇と土壌水分の蒸発を抑制する。

 また、耕うんや畝立て、苗の植えつけは、暑い時間帯に行うと(土壌水分が蒸発して)土が乾きやすく、苗もしおれやすい(激しく蒸散をする)ので、気温も地温も下がり、日差しが弱くなる夕方に行うようにします。植えつけ前後には苗にたっぷり水やりをします。

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料理のポイント

おいしく作る料理のポイントを写真付きで解説

卵白をしっかり泡立てて、ふっくら食感を楽しみます。ポテトチーズスフレ

料理◎太田晶子 撮影◎武井優美

1人分:約215kcal 調理時間:約45分

材料4人分(直径8cmココット型×4個分)

  • じゃがいも 2個(300g)
  • パルメザンチーズ(粉) 大さじ2
  • ピザ用チーズ 80g(3/4カップ)
  • 2個
  • A
    • 牛乳 50ml
    • バター 10g
    • ひとつまみ
    • こしょう 少々

作り方

  1. 下準備

    ココット型にバター(分量外)を塗って小麦粉(分量外)をふり、余分な粉を落とす。オーブンは180℃に予熱する。

  2. じゃがいもの下ごしらえ

    じゃがいもは皮をむいて4等分に切り、さっと水に浸けてから水気をきって耐熱容器に入れ、ラップをふんわりかける。電子レンジ(600w)で5分程加熱し、竹串を刺してやわらかくなったら取り出す。
    ボウルに入れ、熱いうちにマッシャーでつぶす。

    Point
    ポイント

    ●じゃがいもはなるべく細かくつぶすとメレンゲがムラなく混ざり、スフレが均等に膨らみます。

  3. 混ぜる

    卵を卵黄と卵白に分け、卵白は乾いたボウルに入れておく。
    Aを耐熱容器に入れて電子レンジ(600w)で1分加熱し、バターを溶かす。2のボウルにパルメザンチーズ、ピザ用チーズを加えてゴムベラで混ぜ、卵黄とAも加えてムラなく混ぜる。

  4. メレンゲを作って混ぜる

    泡立て器で卵白を角ができるまで泡立てて、メレンゲを作る。3に1/3量入れてゴムベラでしっかり混ぜあわせ、残りのメレンゲを2回に分けて泡をつぶさないようにさっくり混ぜる。

    Point
    ポイント

    ●卵白を角ができるまで泡立てたところ。ボウルと泡立て器に、油や水が付着していると、卵白が泡立たないので気をつけます。

    ●メレンゲを3回に分けて入れることで、泡をつぶしすぎず、ふんわりと焼き上がります。

  5. 焼く

    ココット型に4を入れて表面をならし、予熱したオーブンに入れる。じゃがいもの焼けた良い匂いがして、表面に程よい焦げ目がつくまで180℃で12~15分焼く。

MEMO

フランス語で「ふくらんだ」という意味のスフレ、冷めるとしぼんでくるので温かいうちにどうぞ。
じゃがいもをつぶすマッシャーは、すりこぎや瓶の底でも代用できます。

「食」と「農」のエッセイ

日本ペンクラブ会員の著名人によるリレーエッセイ

第65回 柏葉幸子さん
きりせんしょ

著者のプロフィールはこちら

 岩手県の花巻市で育ち盛岡市で暮らしている。
 盛岡は「しとねもの」と称するだんご類の店が各町内に一軒はある。女たちはひいきの店のだんごやあんこ玉、お茶餅(五平餅のような感じ)、スアマ(ういろうのような感じ)をおやつに手土産にと買い求める。
 私にも気に入りの店がある。そこでたいていの欲求は満たされるのだが、花巻の実家でひな祭りに供えていた「きりせんしょ」(と家では呼んでいる)のようなものが、どこの店にもみつからない。
 餅菓子なのだが粉をあずきで練る。どうしても食べたくて、作るぞ! と決心したのが十五年も前だろうか。実家の母にひな祭りの時期に盛岡に来てもらって特訓をうけた。
「あずぎも煮れねってか!」
あずきも煮れないのか。
「餅粉はこのくれ、うる粉はこのくれ」
餅粉はこれぐらい、米粉はこれぐらい。
「見でればでぎるでば」
見ていればつくれる。
「あっつくても練らねばね」
熱くても練らなければいけない。
と叱咤激励され、練りあがった種を私のひいおばあちゃんが使っていた木の菓子型で成形する。菓子型の裏に、
「カスワバミヤモヂ」柏葉みや持ち。
と彫ってある。ひいおばあちゃんの名前を菓子型で知った。
 成形したものを蒸し器で蒸す。あずき味は椿の花、たまに時間の余裕があると作る醤油味は菊の花と形は決まっている。
 一年に一回、レシピもなく目分量、うまくいかないと母とけんかしながらだ。それでも十年たって、なんとか、よし! というものになった。
 その間に粉類はやはり花巻市の粉屋さんから、いっしょに入れるクルミは久慈市山形町の産直からとこだわりもできた。
 我が家の雛飾りは娘が成長するにつれてどんどん簡素になり、今はお内裏様とお雛様だけだ。それでも毎年きりせんしょをお供えし、実家でしていたようにご近所や友に配る。そのために八十個は作るだろうか。その日の我が家はあずきの甘い匂いでまるで和菓子屋のようになる。皆さん、毎年待っていてくれて喜んでくれる。一年に何度も会えない人にも届ける。お互いに、元気でいますよ! という証のように思う。

イラスト:はやしみこ

柏葉幸子(かしわば さちこ)

児童文学作家。岩手県生まれ。『霧のむこうのふしぎな町』で第15回講談社児童文学新人賞を受賞。『岬のマヨイガ』で第54回野間児童文芸賞を受賞。『帰命寺横丁の夏』(英訳)で米国バチェルダー賞を受賞。『モンスター・ホテル』シリーズ他。2024年『竜が呼んだ娘』1~4巻まで出版予定。

柏葉幸子(かしわば さちこ)
『竜が呼んだ娘1 弓の魔女の呪い』
講談社
日本ペンクラブ

日本ペンクラブとは、詩人や脚本家、エッセイスト、編集者、小説家など、表現活動に専門的、職業的に携わる人々が参加、運営する団体です。
https://japanpen.or.jp/

なるほど全農

食と農についての「なるほど」な情報をお届け

地域共生社会を目指す【農福連携】
農業と福祉の多様な結びつきが
新しい地域おこしにつながっています

「農福連携」という言葉を聞いたことはありますか?
障がいのある方が農業分野で活躍することで、自信や生きがいを持って社会参画や就労を実現していく取り組みです。農業と福祉、双方の課題解決などメリットが多く、注目されて全国に広がりを見せています。

 農林水産省によると、基幹的農業従事者は、2000年の246万人から2022年の123万人へと約20年間で半減し、平均年齢も61.1歳から68.4歳と7歳も上昇。※1 生産現場の労働力不足は深刻さを増しています。農福連携は、障がい者などの社会参画を後押しするとともに、農業の新たな働き手の確保や農業経営の発展につながる可能性が期待されています。
 障がいを持つ方はそれぞれ得意な仕事と苦手な仕事があります。一つの仕事を繰り返し行うのが得意だったり、農作業に伴う体力仕事が得意だったりする一方、二つ以上の作業を同時に行うことは苦手だったりします。
 農業は多くの工程を経て、農作物が作られますが、一連の作業を単純な作業に細かく分解してみると、障がい者の方ができる作業が見えてきます。例えば、繁忙期の収穫作業では、収穫した農作物を畑の外に運ぶ、収穫物を洗浄する、根切り・葉切り、計量、出荷用の箱作り、箱詰め、シール貼り等。単純化・細分化した作業の一つひとつは小さな仕事でも、農場全体や地域で集めていけば、大きな仕事量になります。それらの仕事を任せられれば、農業者はその時間をほかの仕事に充てることができます。

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労働力支援として、育苗箱の苗を田植え機に渡す「苗継ぎ」作業を行う様子

 農業者と福祉をつなぐには、両者をマッチングすることが大切です。福島県では少子高齢化や震災の影響などにより、農業の労働力不足が大きな課題。そこで、全農福島県本部が2019年から取り組みを始めたのが、農福連携です。
 福祉事業所側の窓口となる福島県授産事業振興会と協働し、労働力が足りない農業者やJA施設において、近隣の福祉事業所に農作業を請け負ってもらうスキームを構築しました。どのような作業なのか、どの程度できるか、事前に両者が認識を深め、納得できるよう実際に農作業を体験できる農福連携現地体験会も開催して、マッチングを推進しています。2022年度の実績として、県内で延べ2000人が農作業に参加し、農業者からは「とても助かったよ」「次の年も継続して取り組みたい」などの声が届いています。
 栽培品目にもよりますが、農作業は定植や収穫など繁忙期が短期間に集中するため、雇用による労働力補填は難しいのが実情です。人手不足から「年に1週間だけ労働力のサポートがあれば生産規模を増やせる」という農業者にとって、パート雇いではなく1日からでも依頼できるこの仕組みは大きなメリットになります。
 農業・農村における労働力不足と同様に、福祉(障がい者)側には就労先の確保や工賃の引き上げなどの課題があります。「農業の多様な働き手の確保」と「新たな就労の場の確保」により双方の課題解決とメリットがあるWin-Winの取り組みが農福連携です。
 全国各地において、農福連携は広がりを見せています。さらに、農と福が生み出す新たな価値への期待から、「農」は農林水産業や6次産業、自然全体へ、「福」は人全般へと定義も広がっています。「農福連携等」は持続可能な地域社会づくりのキーワード。全農もJAや地方自治体、国などと協力しながら農福連携をさらに進めていきます。

※1 法務省・文部科学省・農林水産省・厚生労働省「福祉分野に農作業をver.11」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/pamphlet.html

参考:農林水産省「農福連携の推進」
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/index.html

プロのおすすめレシピ

料理のプロがすすめる旬の食材を使ったレシピ

2色のメロンで彩り鮮やか
味と食感の違いを楽しみます
メロンのグラニテ

料理◎大森いく子 撮影◎黒部徹

1人分:約170kcal 調理時間:約30分(冷凍庫で冷やし固める時間除く)

材料4人分

  • メロン果肉(青・赤) 各250g
  • 白玉粉 60g
  • グラニュー糖 70g
  • 適量
  • メロン(飾り用・くし切り) 適量

作り方

  1. 耐熱容器にグラニュー糖、水大さじ2を入れて電子レンジ(600w)に1分かけ、冷ます。

  2. 2種のメロン果肉をそれぞれフードプロセッサーでピューレ状にし、1を半量ずつ加えて混ぜ合わせ、別々の容器に入れて冷凍庫に入れる。固まったら、フォークなどでかき混ぜてなめらかなシャーベット状にし、再び冷凍庫に戻して冷やす。

  3. 白玉団子を作る。ボウルに白玉粉を入れ、水大さじ4を加えて、ダマにならないように指先でよく混ぜ、こねてまとめる。

  4. 3を12等分にして丸め、熱湯に入れてゆでる。白玉が浮いてきて1分程たったら冷水に取って冷やし、水気をきる。

  5. グラスに2を重ねて盛りつけて4をのせ、飾りのメロンを添える。

ココがポイント

冷凍すると常温の時より甘さを感じにくくなります。メロンの糖度によって砂糖の量を加減してください。