コラム 記事一覧

ふるさと探訪

日本各地の農畜産物を産地からリポート

日本一の大きさを誇る入善にゅうぜんジャンボ西瓜すいか

撮影◎磯野博正

富山県東部の入善町で明治時代から栽培されている日本一大きな西瓜です。
平均重量17~19kg、大きなものは30kg近くにもなり、ラグビーボールのような楕円形をしています。
古くから祭事や贈答品などに使われ、夏の風物詩として親しまれてきました。
独自の栽培方法で伝統の西瓜を守り継ぐJAみな穂を訪ねました。

風味を守るため、接ぎ木せずに栽培

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「名水の町とうたわれる入善で、先祖から受け継いだ西瓜栽培を町の文化として後世につないでいきたい」と、JAみな穂入善ジャンボ西瓜生産組合の高見薫さん(取材時は生産組合長)

 北アルプスを源流とする黒部川の扇状地にある入善町。湧き水に恵まれた名水の町として知られ、日本一大きな入善ジャンボ西瓜を栽培するほか、その名水を活かして米づくりやチューリップの生産も盛んに行われています。
「ここの土壌は水はけが良く、多湿に弱い西瓜を長期間栽培し、大きく育てることに適していました。120年以上の歴史の中で品種改良を進め、独自品種である『入善ジャンボ』を栽培しています。また、西瓜で多く見られる接ぎ木栽培ではなく、自根(じこん)栽培しており、種から育てることから生まれる西瓜本来の風味も大きな特長です」と、JAみな穂中央支店経済課の飛島雄一郎係長は胸を張ります。西瓜は連作障害が出やすいため、一度栽培した畑は大豆など他の作物を植えて10年ほど間隔を空けるなど輪作を行い、徹底した栽培管理を重ねて代々守り継いできました。
 遠くに山々を望む田園地帯、澄んだ水がとうとうと水路を流れています。入善ジャンボ西瓜生産組合の高見薫さんの畑を訪ねると、頬被りのように藁(わら)を載せた楕円形の西瓜がゴロンゴロンと点在しています。
「色が悪くなるので、藁で日よけしています。ただ、日に当たった方が甘くなるから、いつから被せるかが悩みどころです」と笑顔を見せる高見さん。抱えるのも苦労しそうな大きい西瓜は、見るからに重量級です。

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日焼け防止の藁を被せた西瓜は1玉平均17~19kg。まれに30kgの超大玉が育つことも

 「栄養を集中させることが大切なため、こまめなわき芽取りが欠かせません。4月の定植から7~8月の収穫まで毎日欠かさず畑の見回りをします。そうして1株から厳選した蔓(つる)を伸ばして、摘果を重ね、残った選りすぐりの1果だけを収穫します」と、大きく育てるための秘訣を語ります。根気と愛情で大切に育てられたジャンボ西瓜は、17kg以上の大玉出荷が7割を占めています。

藁で包む伝統の「桟俵さんだわら」で出荷

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収穫時期の目安になる受粉日を1玉ごとに畑に記録して管理します

 西瓜は割らないと熟度が分からないため、収穫の見極めが難しい作物です。だからこそ受粉日を記録し、生育管理をきちんと行うことが大切。受粉日から毎日の気温を足していき、積算温度が1000℃になる日を基準にします。JAの担当者が出荷前の検査を行い、合格すると収穫開始です。「西瓜が重いので、まず蔓だけを先に切る人と、西瓜を運ぶ人に分かれて作業します」と、高見さん。運ぶのは4人体制で、多い時は1日に約150玉を収穫します。
 作業場に持ち帰った西瓜は、藁を編んで作った「桟俵」で上下を挟み、藁縄で縛って梱包します。
「重い西瓜を運搬する時に傷がつかないよう代々受け継がれている技です。昔から個々の生産者が、冬の間に桟俵を編んで用意してきました。土作りなども含めると一年中、西瓜づくりに携わっていますね」。

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【左】藁の台座「桟俵」で挟み、藁縄で縦横に縛っていきます
【右】赤くみずみずしい果肉

 出荷は生産者からの連絡を受けて、JAの担当者が集荷します。まとめて県内の市場に出荷するほか、贈答用や通販など個人への直売向けに全国発送も行います。「最盛期は1日300玉ほどが出荷されます」と飛島係長。2017年には地理的表示保護制度(GI) に県内で初めて登録され、富山を代表する特産品のひとつにもなっています。町の文化でもあると話す高見さんは、地元の小学生の栽培体験や桟俵作りに携わり、次世代へつなげる取り組みも行っています。

※ 産地ならではの自然環境や伝統的な技法などで育まれてきた品質、社会的評価などの特性を持つ産品の名称(地域ブランド)を、国が地域の知的財産として保護する制度

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【左】出荷を待つ梱包された入善ジャンボ西瓜
【右】集荷場では14kg以上、17kg以上、20kg以上に分けて出荷

 見た目の大きさと裏腹に味は繊細。滴るほどにみずみずしく、上品な甘味でさっぱりと食べ進められます。シャリ感とは一線を画す独特なサクサク食感は、西瓜本来の風味との呼び声もあるほど。割った時にパッと広がる香りの良さも自慢です。一玉で約80人分をカットでき、日持ちは10日ほどが目安です。暑さも喉の渇きも吹き飛ばすジャンボな西瓜の清涼感、ぜひ一度お試しください。
(取材:2023年7月下旬)
*本年から高見薫さんは西瓜の生産を行っておりません。

飛島雄一郎係長
「富山が誇る希少な西瓜です。ぜひ一度食べてみてください」と話す、JAみな穂の飛島雄一郎係長

●JAみな穂

【入善ジャンボ西瓜】生産概要
栽培面積:約3.4ヘクタール
生産者:約10名
出荷量:約8000玉(2022年実績)
主な出荷先:県内、東京、大阪
購入はこちら(夏季のみ)

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夏に食べたい簡単おやつかぼちゃのジェラート

東京都・ゆみさん

1人分:205kcal 調理時間:25分(冷やし固める時間は除く)

材料作りやすい分量(約8人分)

  • かぼちゃ 450g
  • 牛乳 150ml
  • 生クリーム 150ml
  • きび砂糖 60g
  • キャラメルソース
    • 砂糖 50g
    • 大さじ1
    • 生クリーム 50ml

作り方

  1. かぼちゃは皮をむき、一口大に切って皿に並べ、ラップをかけて電子レンジ(600w)で6分程加熱する。ボウルに入れ、泡立て器で潰して滑らかになったら、牛乳を半量ずつ加えてよく混ぜ、冷ましておく。

  2. 別のボウルに生クリームと砂糖を入れ、泡立て器で六分立てにし、1に加えて混ぜる。

  3. 2をバットに流して冷凍庫で約2時間冷やし固め、全体をフォークで混ぜた後、さらに1時間冷やし固める。

  4. キャラメルソースを作る。小鍋に砂糖と水を入れて中火にかけ、徐々に周囲から焦げて全体が濃い茶色になったら火を止め、生クリームを2回に分けて加えスプーンで混ぜる。3を器に盛り、ソースをかける。

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夏に食べたい簡単おやつ豆腐白玉とフルーツの黒蜜ソース

京都府・赤ずきんさん

1人分:115kcal 調理時間:約30分(白玉の生地をねかせる時間は除く)

材料4人分

  • 絹ごし豆腐 80g
  • 白玉粉 50g
  • 砂糖 小さじ1
  • 好みの果物(すいか、メロンなど) 約200g
  • 黒蜜ソース
    • 黒砂糖(粉末) 40g
    • 大さじ2

作り方

  1. 黒蜜ソースを作る。黒砂糖と水を小鍋に入れて中弱火にかけ、2/3量程度に煮詰めて冷やしておく。

  2. ボウルに白玉粉と砂糖を入れ、豆腐をザルで漉しながら加えてよく混ぜ合わせて、ラップをかけて20分ねかせる。

  3. 鍋に湯を沸かし、2を1.5cm位に丸め中央を指で押して窪ませ、湯に落として中弱火でゆでる。白玉が浮いてきたら冷水に取って冷ます。

  4. すいか、メロンなどを食べやすい大きさに切って、3と器に盛り、1を添える。

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夏に食べたい簡単おやつはちみつレモン寒天

和歌山県・ユカッペさん

1個分:50kcal 調理時間:約15分(冷やし固める時間は除く)

材料(約150mlの器×4個分)

  • 国産レモン果汁 大さじ1.5(約1/2個)
  • はちみつ 70g
  • 320ml
  • 粉寒天 3g
  • ミント 適宜

作り方

  1. 鍋に水と粉寒天を入れてよく混ぜ、中弱火にかけ、沸騰したら時おり混ぜながら2~3分沸かして寒天を煮溶かし、火を止めてはちみつを加えてよく混ぜる。

  2. 鍋ごと水につけて粗熱を取り、レモン汁を加えて器に流し入れ、冷蔵庫で冷やし固める。

  3. 食べる直前にミントを飾る。

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野菜の育て方

ビギナーに人気!季節に合わせた家庭菜園

ブロッコリー

イラスト◎かとうともこ 監修◎山崎弘一郎

アブラナ科のキャベツの仲間で花蕾(からい)という開花前の蕾や、花茎を食べる野菜です

 生育適温は15~20℃。“春まき夏どり”と“夏まき秋冬どり”の作型がありますが、病害虫の心配が少ない夏まきが育てやすいです。たねからでも育てられますが、暑い夏場の管理が難しいので、購入苗を植えつけるのがおすすめです。
 植えつけ直後は台風や秋の長雨の時期と重なるため、湿害が出ないよう高畝にして水はけを良くしましょう。茎が高く伸び、葉も大きく茂ってくるので強風で倒れないように追肥のタイミングで株元にしっかり土寄せをします。心配な場合は支柱を立てましょう。
 主茎につく大きな花蕾が「頂花蕾(ちょうからい)」で、わき芽が成長して次々と出てくる花蕾が「側花蕾(そくからい)」。頂花蕾の収穫後、側花蕾を楽しめるのは家庭菜園ならではです。
 連作障害があるので同じアブラナ科の野菜は2年以上あけます。

植えつけ

本葉4~6枚のがっちりした苗を選びましょう。深植えにならないように株元が少し高くなるくらいに植えつけます。株元を手で押さえてからしっかり水やりします。

害虫対策

コナガやハスモンヨトウ、アオムシ、アブラムシなどがつきやすいので、防虫ネットや寒冷紗などをトンネルがけして防ぎま す。幼虫を見つけたらすぐに取り除きましょう。

追肥・土寄せ

定植4週間後頃、茎葉の成長が旺盛になったら、化成肥料を施用します(1m2あたり、8-8-8なら60g程度、14-14-14なら30g程度)。生育期間が長い冬どり栽培や、側花蕾を収穫する栽培では、頂花蕾が出始めた頃に、さらに2回目の追肥を同量施用します。茎葉や花蕾が成長すると、その重さで株が倒れやすくなるので、追肥と同時に株元に土寄せすると、倒れにくくなります。

収穫

頂花蕾の直径が10~15cmになったら、蕾が硬くしまっているうちに花蕾の下で切り取ります。収穫が遅れると蕾が膨らんで花が咲いてしまいます。

側花蕾の収穫

頂花蕾を収穫すると、わき芽が伸びて葉のつけ根にある側花蕾が次々と出てきます。品種にもよりますが500円玉くらいの大きさを目安に収穫しましょう。
側花蕾を楽しみたい場合は、頂花蕾を早めに収穫するのがコツです。

●土づくりワンポイントアドバイス

指導:岡本 保(元JA全農 肥料研究室技術主管)

植えつけの2週間前までに、1m2あたり完熟堆肥1kgと苦土石灰100g(いずれも前作に施用していれば不要)を散布し、深く耕しておきます。元肥は植えつけの1週間前に、1m2あたり化成肥料(8-8-8なら100g、14-14-14なら50g)を散布し土に混ぜ込みます。


● ブロッコリー(夏まき秋冬どり)の栽培スケジュール

スケジュール

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家庭菜園Q&A

家庭菜園のよくある質問に先生が回答

指導◎川城英夫(元JA全農 耕種総合対策部技術主管) イラスト◎かとうともこQ.追肥のやり方は?

 たねまきや苗の植えつけ後の栽培中に追加で肥料を施すことを追肥といいます。
 野菜は成長するにつれて吸収する養分量が多くなることなどから、ある程度栽培期間が長くなる野菜の場合は、元肥だけでは養分が足りません。そのため、元肥の効果が切れてくる前に、養分を補う追肥が必要になります。肥料はすぐ効果が現れるものがよく、化成肥料のほか、より速効的な液体肥料を使います。
 施す場所は、根が伸びていく先のほか、根がある場所ならどこでもかまいません。施したら浅く耕して土に混ぜるか、浅い溝を掘って肥料を施し、土をかぶせます。土が乾いていれば、水をやると、肥料は水に溶けてから吸収されるので、肥料の効果がしっかり現れます。

〇追肥を施す場所

 株が小さいときは株に近い条間に追肥を施し、株が大きくなったら畝の端や畝と畝の間(通路)に施用します(図1)。

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【図1】

 スイカやカボチャなど、つる性の野菜は、つるの伸びているところまで根が伸びているので、つる先に肥料を施します(写真1)。
 タマネギを穴の開いたマルチを使って苗を植えつけた場合、マルチの上に肥料をばらまけばよいでしょう。雨が降ったら肥料が溶けて穴の中にしみこみます(図2)。

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【写真1】 スイカはつる先に追肥を施す。
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【図2】

 トウモロコシのように小さなうちから根が広く張る野菜や、ナスやピーマンなど収穫開始が追肥を始めるタイミングになる果菜類では、すでに通路にまで根が張っているので、マルチの端に溝を切って肥料を施して埋め戻すか、通路に施用して中耕します(土に混ぜ込みます)(写真2~4、図3)。

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【写真2】トウモロコシの追肥例。畝の端に溝を切る
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【写真3】化成肥料をまく
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【写真4】埋め戻す
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【図3】

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料理のポイント

おいしく作る料理のポイントを写真付きで解説

肉や野菜のうま味が絡んで食欲をそそります。チャプチェ

料理◎太田晶子 撮影◎武井優美

1人分:約215kcal 調理時間:約45分

材料4人分

  • 牛バラ肉(焼肉用) 120g
  • 国産春雨 120g
  • たまねぎ 1/2個(100g)
  • にんじん 50g
  • しいたけ 3枚
  • にら 1/2束(50g)
  • A
    • しょう油 小さじ1
    • 砂糖 小さじ1/2
    • ごま油 小さじ2
  • B
    • おろしにんにく 小さじ1弱
    • しょう油 大さじ1と2/3
    • 大さじ2
    • 砂糖 大さじ1と1/3
    • ごま油 小さじ2
  • 小さじ1/4
  • こしょう 少々
  • サラダ油 適量
  • 白いりごま 適量

作り方

  1. 春雨を戻す

    鍋に1.5L程度の湯を沸かす。火を止めてから春雨を入れて3分おき、ザルにあけて冷水にとって冷まし、よく水気を切る。

    Point
    ポイント

    ●熱湯に3分つけると春雨が透き通ってくるので、引き上げます。戻しすぎるとコシがなくなるので気をつけます。

  2. 下ごしらえをする

    たまねぎは5mm厚さに切り、にんじんは5cm長さの細切り、しいたけは石づきを落として薄切り、にらは5cm長さに切る。牛肉は細切りにしてAで 下味をつけ、Bは合わせておく。

    Point
    ポイント

    ●具材は春雨に絡みやすいように、長さを合わせて細切りにします。

  3. 野菜を炒める

    フライパンに油大さじ2/3を中火で熱してたまねぎを軽く炒め、にんじん、しいたけを順に加えて炒めていく。塩・こしょうで味付けしてしんなりしてきたら、にらを加えて一混ぜして皿に取り出す。

  4. 炒め合わせる

    同じフライパンに油大さじ2/3を熱して中火で牛肉を炒め、表面の色が変わって8割程度火が入ったら1Bを加えて味付けする。汁気がなくなったら3を戻し入れて全体に混ぜながら一炒めする。器に盛り、ごまをふる。

    Point
    ポイント

    ●野菜を入れたら手早く炒め合わせましょう。牛肉のやわらかさ、春雨のモチモチ感、野菜のシャキシャキ感が残ります。

MEMO

チャプチェは春雨や野菜を使った韓国を代表する炒め料理のひとつです。韓国春雨はサツマイモが原料でモチモチ、国産春雨はいも類が原料で火の通りが早く冷めてもかたくなりにくいです。

「食」と「農」のエッセイ

日本ペンクラブ会員の著名人によるリレーエッセイ

第67回 角野栄子さん
ズルをおいしく!

著者のプロフィールはこちら

 くいしんぼうなので、時々食べ物のことを書いたりするから、私は料理上手と思われているらしい。それはまったくの間違い。大抵はズル料理で、それがだいぶ常識からずれているようなので、人は上手という言葉にかえて、なぐさめてくれているのだ。おまけに怠け者ときているので、上等なものなんてできるわけがない。
「今日こそおいしいものを……」と腰を上げても、冷蔵庫を覗くと、中には中途半端なものしか残っていない。仕方なくその半端な野菜を大集合させ、奥の方にある謎の肉(一応賞味期限は見るけど)をいれ、手抜きの出来合い調味料をしのばせ、大鍋にたっぷりの水をいれて煮る。塩などの味付けは一切しない。これさえあれば、怠け者は、おいしいものを手に入れた気持ちになる。上の澄んだスープを取り出し、塩と胡椒で味をつけ、パンをいれ、その上にチーズを乗せて、トースターで焼く。「オニオンスープまがい」になる。食べるだけ取って、味噌をいれれば具沢山の「味噌汁」。野菜が残っていれば取り出して潰し、じゃがいもを卸し金で擦って混ぜ、片栗粉少々を加え、オリーブオイルで周りがカリカリになるくらい焼けば「野菜餅まがい」になる。これにはウスターソースがとても合う。
 ある時、打ち合わせに時間がかかって、お腹が空いたとなった。鎌倉のレストランは閉まるのが早い。「いいです、帰ってなにかいただきます」仕事仲間は遠慮する。お腹を空かせて、帰らせるなんて……どうにかしなきゃ。そこで昨日作ったスープがあったと気がついた。冷凍のご飯をチンして、小さなお丼にいれ、熱々のスープを注ぎ、その上に刻んだキムチと塩昆布とゴマを乗せ恐る恐る差し出した。
「わー、おいしい!」
感嘆の声をあげ、もっと欲しそうに、私を見た。
「ちょっと足りないのが、一番おいしい思い出になるのよ」
私は苦し紛れに、笑い返した。
 私の食生活はこんなふうです。ズル料理は使いっきり料理。結果的にフードロス・ゼロ!
 さて空っぽになった冷蔵庫の掃除でもしようかな。

イラスト:はやしみこ

角野栄子(かどの えいこ)

東京・深川生まれ。『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』で、1970年に作家デビュー。代表作『魔女の宅急便』では、受賞多数。その他『アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ』シリーズ、『イコ トラベリング1948−』等作品多数。2018年、国際アンデルセン賞作家賞を受賞。2023年に「魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)」が開館。

野栄子(かどの えいこ)
撮影 萩庭桂太/©角野栄子オフィス
『イコ トラベリング 1948-』
角川書店
日本ペンクラブ

日本ペンクラブとは、詩人や脚本家、エッセイスト、編集者、小説家など、表現活動に専門的、職業的に携わる人々が参加、運営する団体です。
https://japanpen.or.jp/

なるほど全農

食と農についての「なるほど」な情報をお届け

工藤阿須加さんに聞く【農業への熱い思いと夢】
農業に真摯に向き合って
自然から学んだことを発信したい

大ヒットした2024年新春映画『ゴールデンカムイ』への出演をはじめ、映画やドラマ、舞台で活躍されている工藤阿須加さんは、2021年から本格的に農業を始めています。
テレビ番組『工藤阿須加が行く 農業始めちゃいました』では、全国の就農者を訪ね、熱い思いを語り合う姿を通じて、農業の魅力を発信しています。
農業と俳優業との二刀流に挑む工藤さんに、農業への思いをお聞きしました。

工藤阿須加
工藤阿須加(くどう あすか)
1991年生まれ、埼玉県出身。2012年ドラマ『理想の息子』で俳優デビュー。NHK大河ドラマ『八 重の桜』やTBS系ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』などに出演。日本テレビ『有吉ゼミ』では、「工藤阿須加 楽しい農園生活」のコーナーにて農業を学んでいる様子が放映中。

──どのようにして農業に興味をもたれたのですか?
 父がアスリート(元プロ野球選手)ということもあり、工藤家は食への関心が高く、子どもの頃から両親の知り合いの有機栽培農家さんの畑で手伝いをしたり、おいしいものへの興味がありました。農業や農業関係者と接する機会も多く、「もっと日本の農業を知りたい!」と思ったことがきっかけで、東京農業大学に進学しました。
 俳優業もあり、やりたいと思っていた農業をなかなか始められませんでしたが、コロナ禍で自分と向き合ううちに失敗を恐れずチャレンジしたいと思い、農業を始めて4年目になります。
──農業を始めて大変だったこと、嬉しかったことは何ですか?
 最初は5畝(5アール)くらいでしたが、栽培技術を学び、経験を積んで作業効率が良くなった分、規模も大きくなっていき、今は40アール近くを管理しています。作ってみたい野菜がたくさんあるし、販路も拡大したい。生産量も増やしたいので大変さはずっと変わらないです。
 自分が作った野菜を食べて「おいしい!」と言ってもらえる、その言葉が嬉しくて、苦労も全部吹き飛びます。
──農業から得ているものはどんなことでしょうか?
 あくまで僕の感覚ですが、野菜を種から育てて出荷するまでは、人の人生のようです。自然から学ぶことは本当に多く、命の芽生えに感動したり、生きる本質を考えたり、土や自然と対話することによって大きく影響を受けているのは間違いないですね。
 番組のロケで農家さんに、農業を始めたきっかけや、苦労や喜び、地域に対する思いなどを語ってもらうのですが、それぞれはみんな違うけれど、農業への熱い思いは一緒で。毎回新鮮な刺激をいただき、その意識の高さは僕にとって大きな学びです。
──農業と俳優業は、工藤さんの中でどのようにリンクしていますか?。
 農家も役者も、ある意味“職人”で、そこは共通しています。役者は、おもしろい作品を見てくれる人に届けたい。農家は、おいしい野菜を消費者に届けたい。ものづくりという意味では同じだと思っています。
 人間が一人ひとり違うように、同じように手をかけても、野菜の成長はそれぞれ違うし、病気や自然災害で思うように育たなかったりと、野菜を人になぞらえてみると人生のようで感慨深いです。
──今後の展望をお聞かせください。
 役者としては、いただいた役に全力で応えつつ、もう一歩二歩ハードルの高い、自分の新しい扉が開くような役にも挑戦できたらいいなと思います。
 農業は自分の生き方に大きく関わっています。規模を拡大していずれ会社やチームを作るなど法人化も見据えています。自分はどこに行くんだろう、というくらい夢がいっぱいあります。

『工藤阿須加が行く 農業始めちゃいました』

全農提供のテレビ番組
『工藤阿須加が行く 農業始めちゃいました』
BS朝日/毎週水曜22:00 ~ 22:30


工藤阿須加さんが、農家に転職したさまざまな人を訪れて作業を手伝い、農業の喜びや苦労などの本音を聞き出し、リアルに伝える番組です。就農を目指す人はぜひ参考に!
農業を愛し真剣に向き合う工藤さんの姿をご覧ください
https://www.bs-asahi.co.jp/agriculture/

プロのおすすめレシピ

料理のプロがすすめる旬の食材を使ったレシピ

夏野菜をたっぷりトッピングしたカレーで元気に夏を乗り越えましょう鶏手羽と夏野菜のスープカレー

料理◎太田晶子 撮影◎武井優美

1人分: 535kcal 調理時間:約40分

材料4人分

  • 鶏手羽元 8本
  • たまねぎ 1個(200g)
  • トマト 大1個
  • おろしにんにく 小さじ1
  • クミンシード 小さじ1/2
  • カレールウ(フレークタイプ) 40g
  • ガラムマサラ 小さじ2
  • 700ml
  • ごはん 茶碗4杯分
  • 塩、こしょう、サラダ油 各適量
  • トッピング
    • オクラ 4本
    • なす 2本
    • ピーマン 2個
    • かぼちゃ 1/8個
    • 国産パプリカ 1/2個
    • ゆで卵 2個

作り方

  1. 鶏肉は塩小さじ1/4、こしょう少々をふる。たまねぎは縦半分にして薄切り、トマトは1cm角に切る。

  2. 鍋に油大さじ1強を中火で熱し、鶏肉を入れて転がしながら表面を焼いて取り出す。

  3. 2の火をいったん消してクミンシードを入れる。弱火にして細かい泡が出たらたまねぎと塩1つまみを加えて中火にし、少し茶色になるまで3分ほど炒め、おろしにんにくを入れて香りを出し、トマトも加える。

  4. さらに1分ほど炒めてトマトの形がなくなったら2を戻し入れて水を加え、沸騰したら蓋をして弱火で20分煮る。カレールウと塩小さじ1/2、こしょう小さじ1/4を入れて5分煮て、仕上げにガラムマサラを加える。

  5. 煮ている間にトッピングの野菜を準備する。オクラはガクの周りをぐるりとむき、爆発しないように包丁の刃先を刺して表面に穴をあける。なすは縦半分に切って皮目に斜めに細かく切り込みを入れ、ピーマンは縦半分に切って種を取る。かぼちゃは厚さ1cm程度のくし形に切り、パプリカは種を取って4等分のくし形に切る。

  6. フライパンに油大さじ2~3を熱し、かぼちゃを入れてやわらかくなるまで弱火で揚げ焼きにする。中火にしてその他の野菜も色よく焼いて取り出す。ゆで卵は半分に切る。

  7. 4を器に入れ6を彩りよく盛り付けて、ごはんを添える。

ココがポイント

クミンシードを入れると香り高くスパイシーに仕上がります。クミンパウダーで代用する時は、最後にガラムマサラと一緒に小さじ1を入れましょう。
ガラムマサラはインドの家庭料理に欠かせないミックススパイスです。