最近、体重が増えてしまって嫌な気分だ。代謝が落ちてるからか、すぐにあちこち肉がつく。お気に入りのお洋服が似合わなくなって鏡の前で毎度落ち込んでいる。せっかちな性格の私は短期間で効果が出るダイエットをしたい。でも極端な食事制限はしないことに決めている。それには絶対的な理由がある。それは、私は画家だからだ。
その昔、やっぱりお腹の肉が気になって、ダイエットを決意した。で、大幅なカロリーダウンを狙いほとんど食べず見事減量に成功。
けれど、5kgの腹肉と引き換えに私は以前のような「色」が見えなくなった。目がキャッチする「色」の彩度があからさまに落ちている。あんなに美しかった空も森も蝶々の羽の色も、その時の私には褪せて見えてしまい描く気力を失ってしまった。
バランスよく食物を食べないことが医学的に「色」の見え方にどう影響するのかはわからないけれど、私にとって美味しくて安全な食べ物を、お腹いっぱい食べることは描くこと、と直結している。それからというもの、私はなるべくバランスよく色とりどりの食物、とくに旬の野菜を意識して摂取するようにした。
すると、また世界は美しくなった。私は農家さんが大切に育てた様々な「色」を食べて美しい色をキャンバスにのせたい。
アートワークショップに参加する子どもたちの保護者から「どうしたら、うちの子、絵が上手になりますか?」と質問されることがある。その時は決まって「安心できる野菜をたっぷり使った手作りで色とりどりのお食事を、食べさせてあげてください。そしたら絵を描くのも上手になるかもしれませんよ」と答えるようにしている。
で、私の体重の話ですよね。野菜中心のバランス良い食事をしているのに、なんで体重が増えるのかって? いやいや、その辺り私だって不思議なんですが、思い当たる理由は二つ。酒の飲み過ぎと運動不足。とても一般的。酒控えて運動すればすぐに解決と思いますよねえ。
何度も言いますが、そう、美しい色を見るため、描くため、私は食事制限はしないので!
運動、禁酒、さあて、しようかな、できるかなあ、しなくちゃかなあ……。

蟹江 杏(かにえ あんず)
画家、作家。東京都出身。美術館や百貨店、画廊で個展を開催。著書は小説、絵本、エッセイなど、多岐にわたる。絵本では『ハナはへびがすき』(福音館書店)で、第14回ようちえん絵本大賞を受賞。また、小説でも『あの空の色がほしい』(河出書房新社)で、第74回小学館児童出版文化賞を受賞し、2025年度中学入試で、最も出題された本(「国語」物語文)となる。
河出書房新社
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