
愛媛県は年間40種類以上の柑橘が出回る全国1位の「柑橘王国」。
中でも高い人気を誇るのが県オリジナル品種の「紅まどんな」と「甘平(かんぺい)」です。
2025年、この2品種をかけ合わせた期待の新品種「紅プリンセス」がデビューしました。
「紅まどんな」のゼリーのような食感と、「甘平」の濃厚な甘みを併せ持つ、まさに“いいとこ取り”の味わいが楽しめます。
本格出荷を迎えた産地を訪ねました。
17年かけて育成した県オリジナルの高級柑橘

紅プリンセスは2005年に「紅まどんな」と「甘平」を交配・育成し、22年に「愛媛果試第48号」として品種登録されました。誰からも愛される存在に、との思いを込めて「紅プリンセス」と名付け、県で商標登録しています。交配から品種登録されるまで、17年の歳月をかけて誕生した期待の大きいオリジナル品種の柑橘です。
「紅まどんなの果肉の滑らかさと甘平の糖度の高さを受け継いだ果実です。果皮が薄く皮が割れやすいので、ハウス栽培や露地で袋掛けをして雨が直接当たらないように栽培します」と、JAえひめ中央南部営農支援センターの水本侑良さん。品種登録後に苗木を生産者に配布して栽培を進め、25年から本格出荷となりました。病気や害虫に弱く、水分量を細かく調整しないと甘味がのらないなど管理が難しい紅プリンセス。栽培や防除方法、選別のポイントについて営農指導を行い、現在、紅まどんなや甘平など中晩柑を手掛けている生産者を中心に栽培を広げています。
愛媛県のほぼ中央に位置し、瀬戸内海に面した伊予市。海を望む高台に就農56年目の大ベテラン、JAえひめ中央南山崎支部の佐川 隆さんのハウスがあります。
「これまで多くの柑橘を育ててきましたが、味が秀逸で、これは県を代表する品種になると確信し、ぜひ育ててみたいと思いました」と導入のきっかけを話してくれた佐川さん。20年の最初の苗木配布で得た100本で栽培を始め、今はハウスを2棟に拡大。ほかに紅まどんな、せとか、甘平、キウイなども手掛けています。紅プリンセスは着果量が年により大きく変動しないので、毎年1本で240個くらい収穫が見込めます。

「収穫時の大きさは、いよかんより一回り小さい野球ボールくらいが目標です。実を大きくし過ぎると果肉の粒が白濁してしまう『す上がり』や『裂果(れっか)』が起きやすいので、ちょうどいい大きさに揃えるのがポイントです」と話す、佐川さん。葉の枚数が多い方がその木になる実の数を増やせるので、主枝を他の品種よりも少し傾斜させるようにして小枝を増やし、摘果で日が当たる場所に3~4個なるようにします。10月以降は水やりを控えて糖度13度以上を目指します。
光センサー選果で糖度などの品質を統一


苗木を植えてから収穫までは4年かかります。まだ栽培年数が浅く、収量も多くないので、南山崎支部の出荷受付は1シーズンに2日ほど。収穫は糖度を確認してから始め、家族3人とスタッフ2人の5人で9~12時まで行い、1日約100箱分を1つひとつハサミで切り取ります。コンテナに入れて自宅の作業場に持ち帰り、大きさ、割れ、キズ、す上がり、色づきなどをチェック。す上がりは外見からは分からないので、優しく触って判断します。「ヘタ周りのやや固い感触が見分けるポイントですが、1個ずつ確認するため数日がかりで大変です」と佐川さん。

選果場では光センサー選果機で糖度や酸度等を計測してから、担当作業員が目視で外観を確認し、一定の品質基準に達したものだけが紅プリンセスとして出荷されます。
「栽培に手間がかかりますが、生産者とともに一丸となって県オリジナル柑橘の『紅まどんな、紅かんぺい(甘平)、紅プリンセス』を『紅シリーズ』として広めていきたいです」と、JAえひめ中央の水本さん。さらに「次の世代に受け継いでもらうことも見越して栽培技術を確立したいですね」と、佐川さんは今後の目標を話してくれました。
食べると粒から弾けるように果汁があふれ、コクのある甘味が広がる紅プリンセス。酸味も適度で爽やか。皮が薄いので手でむくよりも、カットして食べるのがおすすめです。1月以降、たくさんの柑橘が出回りますが、3月に食べ頃を迎えるので、「春の紅まどんな」というイメージ。高級感あふれる果実は上品な甘さで群を抜き、口に入れた時にあっと驚くおいしさです。
(2025年2月下旬取材)


●JAえひめ中央
【紅プリンセス(柑橘)】
生産概要
栽培面積:約35ヘクタール
生産者数:509人
出荷量:116t(2024年産)
主な出荷先:関東、関西