ふるさと探訪

日本各地の農畜産物を産地からリポート

固く締まった蕾にうま味が濃縮ブロッコリー

撮影◎磯野博正

お弁当の定番野菜「ブロッコリー」。彩りも鮮やかでさまざまな料理に使いやすく、栄養も豊富なことから需要が伸び、2026年4月、52年ぶりに指定野菜に追加されました。
旬は冬から春ですが、全国の産地をリレーして一年中出回っています。
香川県はブロッコリーの作付面積で北海道に次ぐ全国2位。
日本で初めて、鮮度を保つ氷詰め出荷を導入した歴史ある産地です。
花蕾(からい)の大きい良質なブロッコリーを栽培する秘訣を探りました。

※にんじん、ナスなど消費量が多い野菜(指定野菜・15品目)で、生産・出荷の安定を図るため一定規模の集団産地を国が指定したもの

品種・作型・環境を駆使し定量を安定出荷

 1988年の瀬戸大橋の開通とともに四国の玄関口として発展してきた香川県。頂の丸いおむすび型の山々が点在し、ため池を中心に田畑が広がる景観は独特で印象的です。降水量の少ない瀬戸内式気候に加えて川が急で短く、雨が降ってもすぐ海へ流れてしまうため、昔からため池をつくり農業を営んできました。

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おむすび型の山とため池が広がる

「乾燥しがちな土壌は、水はけの良い土地を好むブロッコリーに適しており、60年代に冬の水田活用として栽培が始まりました。一時期輸入品に押されて生産量が減りましたが、鮮度保持のため氷詰め出荷に取り組んだ結果、需要が増え、再び作付面積が広がりました。今では県全域で栽培しています」と話すのは、JA香川県 営農部園芸指導課の神尾信宏課長補佐。品種や作型を駆使して10月〜翌年6月まで長期出荷しています。さらに中山間地や海岸沿いなど、畑の場所や土壌環境を考慮した作付けにより、一定量を安定的に出荷でき、市場から高い信頼を得ています。
「うちの場合、9月上旬~10月中旬まで時期をずらして定植することで、11月中旬~4月中旬まで収穫できます。冬は180日と秋の3倍も生育期間がかかります。そのため12~13品種を組み合わせるので、栽培計画を立てるのは、まるでパズルのようです」と苦笑いしながら話すのは、JA香川県ブロッコリー部会の中西幸範(ゆきのり) 部会長。ブロッコリー70アールのほか、米と麦も栽培しています。

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「朝採りならではの栄養分がギュッと詰まった新鮮なブロッコリーをお届けしています」と話す、JA香川県ブロッコリー部会の中西幸範 部会長

 部会長が目指す理想のブロッコリーは花蕾が締まって、こんもり盛り上がったドーム型のもの。近年は茎の太いものが人気だそうです。
「根が浅いので、まずは定植時にしっかり水やりをして根付かせます。次に頻繁に草取りしながら、畝の間を浅く耕すことで通気性を高め、土をやわらかくし、根がのびのびと伸ばせる環境を整えます」。花芽が出る前にどれだけ大きな株に育てられるかで花蕾の大きさや形が決まるため、生育状況を見ながら土寄せや追肥、防除などを行い、丁寧に育てていきます。

朝採り&氷詰め出荷で鮮度保持

 収穫は畑全体を一度にではなく適期の花蕾を見極め、順番に行います。まだ暗い早朝4~5時から、ヘッドライトをつけて畑を見回り、サイズを確認して1個ずつ刈り取ります。「日中に収穫すると茎の中心部に熱がこもり品質が下がってしまうため、収穫は朝と部会で決めています。切り口からジュワっと水がしみ出るほどみずみずしいんです」と中西部会長。夜明け前、各ブロッコリー畑でヘッドライトの明かりが点々と光る様子は、遠くから見ると蛍のようだと話します。多い時は約50箱(15kg/1箱)を収穫し、冬は11時、春は10時半までに選果場に出荷します。

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刈り取ったら花蕾に近い2~3枚を残して葉をカット。葉を残すのはかつて輸入品と区別するため「国産の証」として始まったもの
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茎の太さは4~5cm。刈り取るときには力を込めて

 選果場では、20個ずつ6kg箱やケースに詰め、氷を入れて封をし、予冷庫で鮮度を保ちます。3月の最盛期には、1日2000~3000箱に上ります。

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1個ずつ目視でサイズを選別し、段ボールやケースに詰めます。温度が上がると劣化しやすいので氷を入れて封をし、予冷庫で保管します

「指定野菜になり、今後は新たな産地が増えてくると思います。でも、畑の整備を欠かさず、より良い栽培技術を検討するなど、プロ意識の高い生産者が多いので、その強みを生かして色や花蕾の厚み、蕾の細かさなど、さらなる高品質を目指していきたいです」と神尾課長補佐。部会では、イベントでの店頭販売や青果市場の見学なども定期的に実施。消費者や市場の要望をヒアリングし、よりニーズに適した品種の研究などにも力を入れています。
 ブロッコリーは、サラダから揚げ物まで幅広い料理に合う使い勝手の良さが魅力。中西部会長は、生のままベーコンとバターで炒め、シュレッドチーズをかけたものや、カレーパウダーで風味付けした炒め物が好きとのこと。ゆでないので栄養の流出が少なく、食感やうま味もしっかり楽しめるそうです。手塩にかけて育てた国産ブロッコリーのおいしさは抜群。輸入品も多い野菜ですが、国産ならではの鮮度や品質の良さを生かして、日々の食卓に積極的に取り入れていきたいですね。
(2025年1月下旬取材)

JA香川県の神尾信宏課長補佐
「蕾の締まったものが多く、野菜特有の甘味を感じられます」と話す、JA香川県の神尾信宏課長補佐

●JA香川県

【ブロッコリー】生産概要
栽培面積:1368ヘクタール
生産者数:1368人
出荷量:1万1034t(2024年度実績)
主な出荷先:首都圏