なるほど全農

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国産野菜の生産維持・拡大を目指して【ゆめファーム全農】
高収量栽培のノウハウをパッケージ化 
収益の上がる農業に誰もが挑戦できる

生産者の減少と高齢化が止まりません。2022年の新規就農者は4.6万人、うち次世代とされる45歳以下は1.7万人を割り込みました。
生産基盤の維持には、担い手の確保とともに、生産の効率化、スマート農業による技術の高度化が必要不可欠です。持続可能な農業生産に向け、全農は「ゆめファーム全農パッケージ」の普及に取り組んでいます。

 農林水産省によると、基幹的農業従事者(個人経営体)の数は2000年の240万人から23年には116万人と半分以下に。平均年齢は68.7歳で、70歳以上の層がピークとなるなど、今後10年、20年先を見据えると農業従事者の大幅減少は確実で、これまでより少ない経営体で農業を支えていかなければなりません。そのためには革新的な技術による効率性の高い農業生産の実現が求められます。
参考:農林水産省「担い手育成」(「農業経営をめぐる情勢について」 2024年6月)

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 全農では施設園芸における生産基盤の維持・拡大を目指して “ゆめファーム全農”を立ち上げ、14年に栃木でトマト、17年には高知でナス、19年に佐賀でキュウリの実証栽培をスタートし、自らハウスを建設、運営することで栽培技術の研究・開発・実証を進めています。施設園芸の先進国であるオランダから、ハウス内の環境を制御するシステム、高軒高(こうのきだか)ハウス、つるおろし※1、ロックウール養液栽培※2などを導入しました。そして各作物の栽培技術で日本を代表する篤農家(とくのうか)の指導のもと、ハウス環境、水やり、植物状態などを測定し、データに基づいた栽培管理を行うことで、安定的な多収栽培技術を確立しました。
※1 主枝を摘芯せずに伸ばし続け、主枝に着果する果実を収穫し続ける栽培方法
※2 玄武岩を融解、繊維化したものを土の代わりに培地として使用する養液栽培

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 成果は、①品質は従来栽培と同等で、収量は従来の2~4倍となる多収栽培技術の確立 ②トマト・ナス・キュウリの3品目とも同じ施設、同じ栽培方式で管理が可能となる共通仕様の確立 ③つるおろし栽培のマニュアル化によるパート労働での栽培管理の実現など。
 これらの成果を、㋐ゆめファーム全農での栽培研修 ㋑設計・施工管理など温室建設(施主代行) ㋒実地&遠隔により支援を行う栽培支援コンサルを一体的に提供する「ゆめファーム全農パッケージ」として取りまとめ、普及を進めることで、国産野菜の生産維持・拡大と、施設園芸生産者の収益アップを目指しています。
 26年春頃には「ゆめファーム全農パッケージ」の普及拠点として、埼玉県に「ゆめファーム全農 トレーニングセンター幸手」を開設予定です。ここでは担い手や就農希望者を対象に、2~3年の研修期間で、温室運営者として栽培管理、労務管理などを担い、植物生理・環境制御、農業経営などを動画教材も活用しながら学ぶことで、本パッケージによる園芸施設の運営ノウハウを実践的に習得します。また、トレーニングセンター修了者が独立する際には、温室建設や栽培技術、経営などの支援を行っていきます。誰でも収量、収益の上がる農業にチャレンジできること、それが“ゆめファーム全農”の目指す方向です。
 将来にわたって安全で新鮮な国産農産物がいつでも当たり前に手にできるよう、生産者にとっては持続可能な農業を続けられる選択肢のひとつとして、「ゆめファーム全農パッケージ」を全国に広めていきます。

ゆめファーム全農トレーニングセンター幸手については こちら