暑い夏はピリッと辛い料理が食べたくなりますね。
香辛料で知られるとうがらしは世界中に約3000種もの品種があります。
実の色は赤、黄、緑と多彩、細長いものやベル型など形もいろいろ、辛味もさまざま。日本には戦国時代に伝わり、香川本鷹(ほんたか)など在来品種が数多くあります。実はピーマンやししとうも、とうがらしの仲間なのです。
とうがらしの種類や調理する際のコツを探りました。

とうがらしはナス科トウガラシ属の実の総称です。中南米の熱帯地域が原産で、15世紀にコロンブスがスペインへ持ち帰り、世界に広がりました。すべての種類が辛いわけではなく、辛く薬味になる辛味種と、辛味がなく野菜として食べられている甘味種に分かれます。鷹の爪やハバネロ、ハラペーニョなどは辛味種、ピーマンやパプリカ、ししとう、甘長とうがらしなどは甘味種です。
日本伝来の時期は、諸説ありますが16世紀後半の戦国時代。江戸時代初めには七味唐辛子が発売され、当時流行していたそばの薬味として人気になり、全国で食べられるようになりました。特に内藤新宿(新宿御苑付近)近郊の農家は、換金しやすいと栽培に力を入れ、「内藤とうがらし」の産地として栄えたといいます。その後、都市化とともに畑もなくなり忘れ去られていましたが、市民グループにより復活。2013年には江戸東京野菜に認定されました。
現在、日本で最も栽培されている辛味種は「鷹の爪」。上向きに付いた実の先が尖って鷹の爪のように見えることから、その名が付いたといわれています。育てやすい「八房(やつぶさ)」や七味唐辛子の原料として知られる「三鷹(さんたか)」などもあります。
在来品種も盛りだくさん。青森県の「清水森(しみずもり)ナンバ」は江戸時代から受け継がれ、甘味を含むまろやかな辛味が特徴です。香川県の「香川本鷹」は1955年頃まで欧米に輸出されていました。辛い中に上品なうま味があります。沖縄県の「島とうがらし」は強力な辛味が特徴。泡盛に漬け込んだ「コーレーグース」は沖縄そばに欠かせない調味料として特産品になっています。
甘味種では、京野菜の「伏見とうがらし」や「万願寺とうがらし」が代表的。「伏見とうがらし」は爽やかな風味と独特な甘さがあり、葉を佃煮にした郷土料理「きごしょう」にも使われます。大正時代に生まれた「万願寺とうがらし」は長さ20cmほどと大きく肉厚でやわらか。種が少ないので食べやすく人気です。

旬は初夏から秋。「伏見とうがらし」や「ししとう」などは熟す前の実をじゃこ炒めや天ぷらなど、野菜として食べます。「鷹の爪」などは赤く熟した実を乾燥させ香辛料に。一本丸ごと、輪切り、粉末と細かくなるほど辛味が強くなります。特にワタの部分(胎座)は辛いので、控えめにしたいときは取り除いてください。とうがらしの辛味成分はカプサイシンで、少量だと唾液や胃液の分泌を促して食欲が増したり、体を温めたりする効果があるといわれています。しかし、激辛料理などで大量摂取すると、粘膜が傷つき喉や胃が荒れやすくなるので注意しましょう。
とうがらしは熱に強く、油、アルコール、酢などに漬け込むと成分が溶け出します。炒め物なら、まずとうがらしを炒めて香りを出してから具材を入れると風味がアップ。にんにくやたまねぎとも好相性なので、南蛮漬けやペペロンチーノなどもおすすめです。この夏は、料理にとうがらしをプラスして自分好みのピリ辛風味を楽しんでみてはいかがですか?