日本では、たまごかけごはんやすき焼き、月見うどんなど、「生たまご」を使った料理が日常的に食べられています。しかし、これは世界でもほとんど見られない珍しい食べ方であり、厳しい品質管理のもと、生産農場からお店まで届ける仕組みにより実現している食文化です。
安全安心を追求する日本のたまごの生産から流通までを追いました。
産卵は24~27時間ごと 毎日集めて選別・出荷
日本のたまごは野菜などと同じ「生鮮食品」です。鶏卵業界のガイドライン※1によると、家庭用たまごの賞味期限は、生食を前提に産卵日から21日以内。生産農場では、日々欠かさずたまごが集められており、パック詰めされた製品も毎日出荷・配送されています。休むことのない生産・流通体制によって、お店のたまごは新鮮に保たれているのです。
養鶏場で食用たまごを産む鶏のことを「採卵鶏」と呼びます。孵化施設で生まれた採卵鶏のひなは、育雛場(いくすうじょう)で育てられた後、たまごを生産する「採卵農場」に出荷されます。孵化してから120日が経つとたまごを産み始め、1年半ほど飼育されます。産卵のペースは24~27時間ごとに1個で、平均すると週に6~7個。たまごのサイズは、鶏の体が小さいうちは卵管も細いために小さく、成長するにつれて大きくなっていきます。
鶏は暑さや光、騒音などに敏感。農場では、なるべくストレスを与えないよう作業を行い、飼育環境を整えて鶏の健康状態を毎日確認します。また、さまざまな病気から守るため、鶏舎の通気口には金網等を設置し、小さな隙間は網目の細かい防鳥ネットで塞ぐことで、病原体を媒介するといわれる野鳥の侵入を防いでいます。さらに、農場に出入りする車両や人の靴を入念に消毒するなど、厳しい防疫体制をとっています。
※1 (一社)日本養鶏協会「鶏卵の日付等表示マニュアル(平成22年3月18日)」

万全な品質チェックで安心の流通体制
採卵農場から出荷されたたまごは、「GPセンター※2」へ送られます。ここではまず、たまごを洗って消毒し、卵殻に汚れが残っていないかをチェック。その後、僅かなヒビや割れを反響音で調べる機械や、たまごに光を当てて中の血玉や無黄卵などを見つける検査機器を使って、品質確認と選別を行います。もちろん、製造施設に立ち入る前には、消毒やエアーシャワーで菌や埃をシャットアウト。施設内の機械の清掃や保守点検も欠かしません。
厳格な品質管理のもと、すべての検査をクリアしたたまごは、サイズ別にパッキングされ、スーパーマーケット、外食店、食品メーカーや鶏卵加工業者、食品卸会社などへ毎日出荷されます。
全農グループの中で、たまごの流通・販売を担うJA全農たまご株式会社は、国内トップシェアの鶏卵取扱量を誇ります。全国の生産者と連携してたまごの集荷・販売を行うほか、液卵や温泉卵などの加工品の製造・販売も手掛けています。鶏卵輸出にも積極的に取り組み、日本産のたまごは、香港を中心に海外でも人気があります。また、たまごの魅力を各種団体とともに発信し、業界の牽引役としてたまごの消費拡大に努めています。需給に応じて毎日発表する「鶏卵相場」は、国内の鶏卵取引の指標として、広く使用されています。
毎日の食卓を彩るたまご。当たり前のように手に入るたまごの裏側では、生産・流通・販売に携わるたくさんの人がおいしさを届けてくれています。生でも食べられる鮮度の良さに感謝しながら、手軽でおいしいたまご料理を楽しみましょう。
※2 Grading(選別)とPacking(パック詰め)を行う工場