今年で60年。プレスリーだビートルズだと洋楽を紹介する仕事をして来たからか、バタ臭い匂いがするのだろう。西洋料理が好きだと思われることが多い。
先日も番組で「好きな西洋料理のメニューを教えて欲しい」と注文されて、ハタと困った。いくら考えても出て来ないのだ。
あそこの店のアンチョビ・パスタとトリッパは好きだけれど、他の店のシェフが作った物では、美味しいと思った事は無いというように、料理はその店のシェフの味だからだ。
結果、私が好きなのは、素材の味だったと初めて気がついた。
好きなのはキノコ類。野菜は白菜やキャベツなど、あまりクセの無い青菜と、クセ有りではニンニク、生姜、青ネギ、細ネギ、ミョウガ、大葉、三つ葉、セリなど、薬味として使われている物が好きだ。
それに銀杏や栗など、お料理に好まれる季節の果実類にも好きな物がある。
よく行く店でも、〆で手打ちのお蕎麦を食べさせてくれる炭火焼きのカウンターで出される、サッと炒めたキノコとアスパラを入れた野菜たっぷりの温サラダと、納豆の上にトロリと溶けたカマンベール・チーズを乗せた一品などは、絶妙の美味しさだと思う。
家で作る物も、冬は鍋物が多くなるし、毎年大晦日から大きな鍋で作り始めるお雑煮は好評で、わざわざ食べに来る人も多い。最初に細切れにした鶏もも肉を塩とゴマ油で炒め、昆布で出汁をとって、牛蒡、人参、椎茸、里いも、大根、セリに我が家は白菜や銀杏も入れて、刻んだ柚子など薬味をたっぷり用意して食べて頂く。
父母が米沢の出身だったので、納豆をお砂糖と醤油味で食べる「納豆餅」やクルミを蜂蜜で甘くペースト状にした「くるみ餅」も、お正月には欠かせないメニューだ。
基本、炊きたての白米と梅干し。海苔と漬物とお茶さえあれば、他には何も要らない。


湯川 れい子(ゆかわ れいこ)
音楽評論家・作詞家。
東京都生まれ、山形県米沢育ち。早くからエルヴィス・プレスリーやビートルズ、マイケル・ジャクソンなどの解説をはじめ、独自の視点によるポップスの評論・解説を手がける。
また作詞家としても活躍。代表作には 『ランナウェイ』『センチメンタル・ジャーニー』『六本木心中』『恋におちて』などがある。また近年では、環境問題などを含め、次世代の育成にも力を注いでいる。

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