川内ブランド「華てまり」
吉野川の堆積平野に位置する徳島市では、肥沃な土壌に恵まれ、温暖で雨の少ない瀬戸内式気候を生かして多種多様な農作物が生産されています。
「カリフラワーは、昭和26年(1951年)頃に川内町地域で米の裏作として導入されました。当時はまだ新しい野菜で試行錯誤しながらも、導入当初から白く美しい高品質のカリフラワー作りにこだわってきました」とJA徳島市東部営農経済センターの小谷拓也さん。
栽培から収穫、出荷までのすべての段階で“白さ”を追求して作業を徹底することで、全国から「川内のカリフラワーを」と求められ、川内ブランドを築きあげました。
JA徳島市川内カリフラワー部会では、とくに品質の高いものを「華てまり」のブランド名で出荷しています。出荷期間は9月下旬から翌年6月中旬まで。収穫最盛期は12~2月、4~5月となります。
「今では全国各地にカリフラワーの産地がありますが、川内カリフラワー部会は、カリフラワー栽培の先駆者として培った70年の経験とこだわり、さらなる栽培技術の向上で、どこにも負けない純白のカリフラワーをお届けできるよう努めています」と小谷さん。
とくに12月から2月の冬場のカリフラワーは「光を放つような際立つ白さで、蕾がかたく締まって食感もよく格別」だそうです。
また、カリフラワーは鮮度が命。鮮度を保ったまま届けられるよう、午前中に収穫し、集荷場で真空予冷をかけてから当日中に出荷。保冷トラックで輸送するコールドチェーン体制が確立されています。
慎重に丁寧に扱い白さを守る
7月初旬に種まきが始まり、20日~1ヵ月かけて苗を育て、畑に植えつけます。
「玉に日光が当たると黄色く色づいてしまいます。白さを保つために葉を大きく育てて遮光します」と話す生産者の多田和宏さんは、後を継いで2年目、24歳の若手生産者です。水田から転作した畑と米との二毛作の田んぼの約3ヘクタールでカリフラワーを栽培しています。
「祖父の時代に川内でカリフラワーの栽培を始めることになり、祖父、父と川内ブランドを作り上げて繋いできました。カリフラワーはデリケートな作物なので手間がかかりますが、丁寧に扱って手をかけただけきれいなカリフラワーができるのが嬉しいですね」。
花蕾がピンポン玉くらいの大きさになったら、葉を中に折り込んで日除けをします。湿気がこもると傷みが出るので折り込んだ葉をまた戻したり、葉と玉が擦れないようにしたりと、常に一つひとつの玉の様子を確認しながら作業します。
植えつけてから収穫まで1~2ヵ月。時期によって生長するスピードが違うので、9〜6月まで出荷し続けられるよう、品種を選び、畑をずらしてタイミングを合わせながら2~3週間ごとに種まき、植えつけをし、収穫も同時進行していきます。
「最後まで花蕾に触れないよう丁寧に扱います」と多田さん。
収穫はひと玉ずつ茎の根元を鎌で切り、まずその場で簡単に外葉を落とします。花蕾が擦れないように自宅へ運び、土などの汚れは霧吹きで落とし、再度、丁寧に外葉を調整して選別し、箱詰め。少しでも擦れたり押されたりすると変色するため、箱の中で動くことのないよう詰めます。最盛期は朝5時半から1日に1500個ほど収穫し箱詰め、約200箱を午前中のうちに出荷します。
「受け継いだブランドを守りつつ、さらに品質をあげて生産量を増やし、もっとたくさんの人に川内の純白のカリフラワーをお届けしたい」と、土壌分析を行って土づくりをしたり、新しい技術の導入や調整作業を効率化するなど、積極的にチャレンジしています。
生食やさっとゆでてコリコリとした食感を楽しむのはもちろん、グラタンや煮込み料理などでも大活躍のカリフラワー。「天ぷらにするのがとにかくおいしい!ホクホクとして優しい甘みがあります。酢の物や、1玉丸ごと逆さに入れて、鍋にして食べるのもおすすめ」とのことです。
白く美しいカリフラワーは食卓を一段と明るくしてくれます。幅広くいろいろな料理にアレンジしてみてください。
(取材:2022年5月上旬)
●JA徳島市
【カリフラワー】生産概要
生産者数:約70名
栽培面積:約43ヘクタール
出荷量:約1200トン
主な出荷先:関西、関東、中四国