【山梨県西八代郡市川三郷町】

フルーツのような甘さのコーン
甘々娘(かんかんむすめ)

文◎編集部 撮影◎磯野博正

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 「甘々娘」という名前のとおり、甘さ抜群のとうもろこしです。糖度は15度以上あり、ジューシーで生でも美味しいと、県内外から高く評価されています。栽培の難しさなどから限られた地域でしか生産されていない上、出回り時期が1ヵ月程しかない希少品種です。15年以上のロングセラーとなっている「甘々娘」の産地、JA西八代を訪ねました。

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栽培技術力で欠点をカバー

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生産者の渡邊千雪、豊美さん夫婦

 山梨県はいわずと知れたフルーツ王国。なかでも、ぶどう、桃、すももの生産量は日本一を誇ります。甲府盆地の日照量の多さと昼夜の温度差が果物の美味しさの決め手になるといわれています。JA西八代管内の市川三郷町は甲府盆地の南西に位置し、誇れる農産物が多々あるなか、代表される「甘々娘」の甘さは段違いで、フルーツコーンと呼ばれるほどです。
「糖度15度以上は当たり前ですね。しかも、他の品種に比べ、時間が経っても糖度の低下が遅いという優れた特質を持っています。昨年の初出荷は5月20日で、6月末で終了しました。年々早まる傾向にあります」と、JA西八代営農経済部の一瀬大輔係長。1日経つと甘さが半減してしまうとうもろこしの欠点をカバーした甘々娘の人気が出るのは当然。ところが、他のとうもろこしに比べて発芽率が悪くて収量も少なく、生産性が悪いため産地が増えていきませんでした。そこで、JA西八代が中心となり、甘々娘の生産部会、種苗メーカーの三者が一体となって育て上げ、山梨県のなかでもここ市川三郷町が唯一の指定産地となっています。

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 「寒さにも極端な暑さにも弱い、毎日の温度管理が本当に大変な品種です」と話すのは、生産者の渡邊千雪さん。2月上旬、畑にマルチを張って地温を上げ、トンネルを二重にしたもの、一重のもの、露地と順に種まきをします。発芽までの水分管理がとても重要で手が抜けません。
「栽培面積が8反(2400坪)ありますが、温度調節のトンネルの開け閉めだけで1日3~4時間はかかります」と渡邊さん。以前、霜で全滅させたという苦い経験があり、状況に応じた臨機応変の対応が難しいといいます。
 また、甘々娘は品種の特性でサイズが小さいのも欠点ですが、「1本の茎に2~3本の実がなりますが、実を大きくするため、育てるのは最初にできた1本だけであとは間引きます」とのこと。1本の茎から1本しかとらないこだわりの栽培方法で、400g以上の2L率が70%以上を占めているのも指定産地ならではの技術力の高さといえます。

朝もぎで美味しさそのまま

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朝もぎした甘々娘をスピーディーかつていねいに茎をカットし箱詰めします
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 とうもろこしは鮮度が命。朝日が昇る前に収穫が始まります。「うちでは3時頃から収穫を始めて、軽トラックいっぱいになったら作業場に運んで、茎をカットし、選別、箱詰めしてJAの共撰所に出荷します」とのこと。朝もぎの美味しさを箱詰めして、その日のうちに各地に出荷されます。
「他の品種のとうもろこしを作っている農家から、何でそんな難しくて手のかかる品種を作っているんだって笑われることもあるけど、毎年心待ちにしてくれる消費者のみなさんがいて喜んでくれるので、やりがいはありますよ」と、渡邊さん。  

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共撰所では一箱ずつ厳しくチェック

 産地ではとうもろこしはゆでるより蒸して食べるのが一般的です。「蒸した方がうま味が抜けないですね。かき揚げやコーンスープ、炊き込みごはんもおすすめです」と、奥さんの豊美さん。粒の皮が薄くてジューシー、甘さはもちろん、しっかりとしたコクもあります。別名フルーツコーンとも呼ばれる甘々娘、時期を逃さずぜひお楽しみください。
(取材:2016年6月中旬)

●JA西八代
【甘々娘】生産概要
生産者 : 70名
栽培面積 : 約22ヘクタール
生産量 : 約275トン(平成28年度実績)
主な出荷先 : 関東、東海、東北

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「6月上旬なら確実に手に入ります」とJA西八代の一瀬さん

2017.05更新