【山形県上山市】

シャキッとジューシー、はじける香り
シャインマスカット

文◎来栖彩子 撮影◎磯野博正

「シャインマスカット」は平成18年に品種登録され、長野や山梨、岡山、山形県など主要なぶどう産地を中心として全国的に栽培面積が拡大し、ここ数年で、人気もうなぎのぼりのぶどうです。
山形県は果樹栽培に適した気候風土を生かし、江戸時代からぶどう栽培の技術を確立してきました。
品質向上と増産に取り組むJAやまがたを訪ねました。

長年の経験と遅場産地のメリットを生かして

 夏から秋にかけて、デラウェア、ピオーネ、巨峰やマスカット・オブ・アレキサンドリアなど、小粒、大粒、紫色や黄緑色など、大きさ、色、形、さまざまな賑わいを見せるぶどう。「シャインマスカット」は「安芸津21号」と「白南」を交雑して誕生した白ぶどうで、果物の女王と呼ばれる「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の孫にあたる品種です。
「果皮は張りのある美しい黄緑色の大粒で、房が大きく高級感があります。種なしで皮ごと食べられ、糖度が高く、果汁もたっぷりです。ふるさと納税の返礼品としても大変人気があります」と話すJAやまがた南部営農センター営農経済課の土屋弘之主任。

「一番に味にこだわって栽培しています」と生産者の鈴木章さん

 デラウェアの生産量が全国一の山形県。「長い歴史の中で培ったぶどう栽培の経験と実績があり、高い栽培技術を持った生産者が揃っているので、形、大きさ、色、味、すべてにこだわったシャインマスカットづくりをしています」。JAやまがた管内は蔵王、朝日、月山連峰と山々に囲まれた盆地で、水はけのよい土壌。夏は暑く、ぶどうが成熟する頃には夜の気温が大幅に下がります。この成熟期の昼夜の寒暖差でぶどうの味、香りがぐっと凝縮されるといいます。

一房ずつ成熟度を確認しながら適期に収穫

「山形県のシャインマスカットの出荷量は全国4位とまだ多くはないのですが、東北という地の利を生かして、他の産地より収穫、出荷の時期を遅らせて販売できるように工夫しています」と、土屋主任。山形県では長期貯蔵技術の研究も重ね、収穫後、品質をキープしたまま年末の贈答用に、また、中国の春節に向けた輸出の取り組みも進めています。

【写真右】電気柵でサル、イノシシなどの獣害から守ります

甘さと香り最高の状態で

集荷場では粒の大きさ、果皮の色で熟度をチェック

 9月、収穫期を迎えたぶどう棚には袋がけされたシャインマスカットが主枝に沿って一列に整列しています。「一枝に一房だけ残し、実に栄養が集中するよう枝の管理をしています。そして、糖度を上げるのは光合成。”葉っぱが命”です」とJAやまがた南部営農センター果樹部会副部会長の鈴木章さん。鈴木さんはぶどう栽培歴40年のベテラン生産者。シャインマスカットはJAが導入すると同時に栽培を始めました。
「葉を増やせば枝が勢いよく伸びますが、そこに栄養がいってしまうと果実にまわらなくなります。枝と房のバランス、日当たりをみて余計な葉を取り除きます。すでに来年房をつける新芽のことも考えながら枝づくりをしています」。剪定、誘引、花穂の調整、種なしにするためのジベレリン処理(※)、粒の量を調整する摘粒、袋がけなど細かい作業を重ねながら、一房800g程度に育てます。収穫は9月中旬から10月下旬頃まで。通常は袋をかけたまま収穫しますが、撮影用に特別に袋を外してもらうと色鮮やかで、はち切れんばかりの大きな房が姿を見せました。

「糖度が18度以上になるまで熟したら収穫します。熟すほど甘みが強くなりますが、熟し過ぎると香りが薄くなります。熟度を見極めて収穫し、甘さと香りが最高のシャインマスカットをお届けしたいですね」。
 口の中へひと粒入れると、シャキッとした食感とともに甘い果汁があふれ、爽やかなマスカット香が口いっぱいに広がります。皮は薄くて渋みもなく、口に全く残りません。
「果皮の色がほのかに黄色味がかっている方が甘いですよ」と鈴木さんが教えてくれました。
 高級感がありながら、丸ごとパクッとスナック感覚で手軽に食べられるシャインマスカット。デザートのトッピングにも最適。甘く香る秋の実りを存分にお楽しみください。
(2016年9月下旬取材)
※花穂を植物ホルモンの水溶液に浸けること

●JAやまがた南部営農センター
【シャインマスカット】 生産概要
生産者 : 約10名
出荷量 : 約18トン
主な出荷先 : 関西、関東、石巻

「山形のシャインマスカットをもっと広く届けたい」とJAやまがた南部営農センターの土屋弘之さん

2017.09更新