【長崎県長崎市】

太陽と潮風に育まれた初夏の味 長崎びわ

文◎編集部 撮影◎磯野博正

びわは日本での歴史も古く奈良時代の文書に登場します。
現在栽培されているものは、長崎県の「茂木もぎびわ」から広まったといわれています。
みずみずしくてジューシー、柔らかな果肉と上品な甘さが初夏の訪れを感じさせてくれる季節感たっぷりの果実です。
日本一のびわ産地では、今まさに袋の花が満開!
収穫の時を待っています。

180年の歴史を受け継ぐ

「四季がしっかりないといいものがとれない」と、山﨑繁好部会長
 長崎のびわ栽培は、180年ほど前に長崎の代官屋敷に奉公していた三浦シオさんが、唐びわの種子を持ち帰り畑にまいたのが始まりとされています。その場所が茂木町北浦名字木場で、優れた品質が認められて栽培が広まったため「茂木」の名前がつきました。茂木種は現在でも県内生産量の6割近くを占める主要品種です。
「びわは寒さに弱く、晩秋から花が咲き始めて冬に実を結ぶため、温暖な気候で太陽の光がたっぷり降りそそぐ海辺のこの地の自然環境が合っていたんでしょうね。海に向かう傾斜地は冷気が停滞しにくく水はけがよく、潮風と太陽の恵みがびわをじっくり育んでくれます」と、JA長崎せいひ 長崎びわ部会の山﨑繁好部会長が説明してくれました。

今年もびわの木に見事な袋の花が咲きました
 山崎部会長はびわ栽培40年以上のベテラン生産者。ハウス栽培と露地栽培を合わせて1ヘクタールの栽培面積があります。
「1枝に蕾が100個以上つきます。栄養を集中させ実を大粒にするために、蕾や花を4割くらい落とし、最終的に品質のよいものを1房に3〜4粒だけ残し、小指の先ぐらい(1~2cm)の大きさになったら袋がけをして育てます。残す粒を見分けるのが熟練の目です」
 びわの果実はとてもデリケートで傷つきやすいので、病気や虫の害、強い日差しなどから果実を守るために袋がけをしますが、山﨑部会長のびわ園ではその数5万枚にものぼるといいます。
「日がよく当たる場所は二重の袋で、その他は一重のものと、同じ木でも場所によって袋をかえます。こうして細かく手をかけ、大粒で甘みがのった上質のものを栽培します」

中を確認して傷つけないように優しく収穫していきます

 最近の果物は「大玉・甘い・ジューシー」という嗜好にあり、産地では長崎県で育成され2009年に品種登録された大玉の「なつたより」に茂木種からの切り替えも進めているそうです。
 出荷は、ハウス栽培の“長崎早生” がトップバッターとして2月上旬頃より開始され、その後“涼風”や大玉の“福原早生(商品名:甘香(あまか))”に移ります。5月の連休明けから露地栽培の“長崎早生”の出荷が始まり、“なつたより”“茂木”へと変わっていき、6月上旬まで続きます。
 出荷される時期によって、いろいろな品種を食べ比べできるのもうれしいですね。

自然災害に打ち勝つ

 土作りや剪定、摘蕾、摘果、袋がけ、収穫など栽培は一年を通して、一枝ずつ、一果一果、丹精を込めて行いますが、びわ栽培の歴史は自然災害との戦いともいえます。
「びわは海に面する傾斜地で栽培されているので、度々、台風による倒木や塩害などで甚大な被害を被っています。最近では平成28年1月の大雪・低温により、露地栽培のびわは実が凍死してほぼ全滅という大打撃を受けました。しかし、その後の生産者の必死の努力により、29年にはこのように見事にびわの袋の花が咲いています」と、JA長崎せいひ 南部営農センターの別所重幸さんはホッと胸をなでおろします。
 鮮度のいいびわは表面にこまかな産毛が密生しています。少しでも傷がつくと変色しやすいので、優しく、ていねいに扱うのが基本。
「収穫して選別、箱詰め作業の時にすれてキズや指のあとがついたりするので、細心の注意が必要です。集出荷場に運ばれたびわは、検査員が一箱ずつ厳しくチェックして、検査済みのものは『検査票』を入れて出荷しています」と、別所さん。

【写真左】検査員が一箱ずつ入念に品質をチェックして出荷します
 びわは鮮度が命。常温の方が風味を感じることができますので、食べる2~3時間前に冷蔵庫で冷やして、お早めにお召し上がりください。皮はヘタ(軸)を持ち、手でおヘソ側から軸へむくときれいにむけます。夏の贈り物として人気のびわをぜひお楽しみください。
(2017年4月中旬取材)

●JA長崎せいひ
【長崎びわ】 生産概要
栽培戸数:508戸
栽培面積:約170へクタール
出荷量:約420トン(平成29年度実績)
主な出荷先:九州、関東、関西

「シカやイノシシなど動物の被害も多い」とJA長崎せいひの別所さん

2018.05更新