【長野県安曇野市】

太陽をたっぷり浴びた信州育ち りんご

文◎来栖彩子 撮影◎磯野博正

長野県は標高差や地域による気候の違いなど、多様な果実が育つ条件に恵まれた果物王国です。
明治初期に導入されたりんごは長野県でもっとも生産量、栽培面積が多い果物で、全国2位の生産量を誇ります。
国内でいち早く低木で育てる「わい化栽培」を導入し、日本農業賞の最高位とされる天皇杯を受賞した歴史のあるJAあづみを訪ねました。

わい化栽培のパイオニア

「太陽の恵みを味わって欲しい」と小林正部会長
 北アルプスを望む標高600~700メートルに広がる広大な平野、安曇野。車を走らせると、赤や黄色の実をつけた樹がずらりと一列に並んだりんご畑が広がります。
「8月中旬の”サンつがる”に始まって、長野県オリジナル品種の”秋映”、”シナノスイート””シナノゴールド”、メインとなる”サンふじ”と11月末までさまざまな品種の収穫が続きます」と、JAあづみ果実課の石曽根光徳課長代理。

 JAあづみ管内は、雨が少なくて日照時間が長く、昼夜の寒暖差が大きいなどの気候条件がりんご栽培に適していたことに加え、1970年代からわい性台木を使って樹高を低く抑える「わい化栽培」に切り替え、質の高いりんごを生む全国有数の産地に成長しました。わい化栽培は樹高を3mほどにし、枝を伸ばす幅も調整してコンパクトな樹に仕立てることで、作業の効率化が図られ、樹の中の方まで日が当たり、花芽がつきやすく多収、植付けから収穫までの期間が短いのも利点だそうです。
「JAあづみでは、日当たりのよさを活かして袋がけをせずに全量、無袋栽培をしています。アルプスの山々のおかげで風からも守られ、降水量も少ないので病害虫の発生も少ないです。昼夜の寒暖差が大きいことで実が締まり、色づきもよくなります」
 無袋栽培のものは甘みが強くなり、蜜が入りやすいともいわれています。サンつがる、サンふじなど、名前に”サン”とつくのは無袋栽培されたことを意味しています。

おいしさの秘訣は細かな手入れと太陽の光

高い枝の上も高所作業車で効率よく収穫

 1月から枝の剪定をして樹を作り花が咲くのを待ちます。4月中旬から摘花、受粉、5月中旬に小さな実をつけ始めると8月初旬まで摘果作業。その間にも枝の誘引や葉摘み、防除や草刈りなどの管理作業を並行して続けます。
「摘果の見極めが重要です。どの枝のどの場所に実を残すか、ひとつの実に対して十分に養分がいくように、実の生長具合を見ながら調整します」と、JAあづみりんご部会の小林正部会長が説明してくれました。1本の樹で150〜200個の実をつけます。「皮の赤いりんごは陽が当たったところが赤く色づきます。収穫が近づくとまんべんなく色づくよう、実を枝につけたまま回転させる”玉まわし”をします。地面に反射シートを敷いて着色させる方法もありますが、直接の太陽光だけで育て、樹上完熟させて収穫しています」。黄色系のりんごは色の変化がわかりにくく、収穫適期の見極めが難しいとか。「黄色系といえばシナノゴールド。これは酸味と甘みのバランスがよく、リピーターのファンの方がいます」。

【写真左】甘みと酸味のバランスがよく人気の”シナノゴールド”

 小林部会長は1.8ヘクタールの畑で10種以上のりんごを栽培しています。10月、11月の収穫最盛期には朝から夕方まで収穫をして、タイミングを見ながら1日2〜3回選果所へ出荷します。
 選果所ではまず人の目でキズの有無をチェックし、ひとつずつバーコードの付いたトレーに乗せてレーンへ。大きさ、熟度など内部の状態まで3種類の光センサーで選別すると一瞬でデータ化されて、目にもとまらぬ速さで流れていきます。りんごが傷つかないようエアで吸引して等階級ごとに全自動で瞬く間に箱詰めされ、目視で最終確認すると出荷準備完了です。

1秒間に2~3個とハイスピードな選別、出荷作業

「おいしいと喜ばれる信州りんごをお届けします。『サンふじ』のような無袋のものは、着色のくすみやキメの荒いものもありますが、日光をよく浴びて味は濃厚です」と、JAあづみ石曽根課長代理。
 果汁が多く酸味が少なく甘みが強い”シナノスイート”や、さわやかな風味の”シナノゴールド”など長野県では優良なオリジナル品種も育成され、個性あふれるりんごワールド。高地特有の日差しを受け栄養をたっぷり蓄えた信州育ちのりんごをどうぞお楽しみください。
(2017年10月中旬取材)

●JAあづみ
【りんご】生産概要
生産者:約666名
栽培面積:約430ヘクタール
出荷量:約80万ケース(10kg)(2017年実績)
主な出荷先:関東、中京、関西、九州、長野県内など

JAあづみ果実課の石曽根光徳課長代理

2018.10更新