【滋賀県甲賀市】

自然が育む滋味深い味わい 水口みなくちかんぴょう

文◎編集部 撮影◎磯野博正

かんぴょうはウリ科のユウガオ(夕顔)の実を細長い帯状に薄く削って干して作られます。滋賀県甲賀市は歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」の水口宿で、かんぴょうを干す女性達の姿が描かれているほどの歴史ある産地です。400年以上も前から代々伝えられてきた技とは…。「かんぴょう発祥の地」といわれている水口町を訪ねました。

天日干しで無漂白

「うちのかんぴょうは甘いよ」と生産者の谷口治郎部会長と奥様の裕美さん
 夕顔の実なのになぜ「かんぴょう」というのかといえば、夕顔の実は「ふくべ」(瓢)と呼ばれ、それをほ(干)したもの(干瓢)だからだそうです。
「夕顔の収穫最盛期は7月~8月のお盆頃まで。早朝に畑に行って10kg前後に育った少し若い実を収穫します。天気予報をチェックして晴れる日が続くようなら多めに、その日にむいて干せる分だけね」と、JAこうか水口かんぴょう部会の谷口治郎部会長。

【写真左】夕顔の実の収穫は早朝に行われます。重いので重労働です
【写真右】今日は今年最後の収穫。「二回りくらい小さめだよ」と谷口部会長
 収穫した実は鮮度のいいうちに1個ずつ機械にセットして回転させた実に刃を当てて薄くむきます。幅3cm、厚さ2mmの帯状にシュルシュルとむかれた白い実はみずみずしく、大きな実1個から50m位とれるそうです。
「むいた実はすぐに竿に1本ずつていねいにかけて、天日干しします。干している最中も、かんぴょう同士がくっつかないように1日に3回くらい手で離して、1日半乾かして完成です。夏の強い日差しと自然の風が頼りだから、全てお天気次第」とのこと。

機械にセットして夕顔の実を回転させながらシュルシュルと皮をむく。簡単そうに見えますが、これも熟練の技
 夕顔の実はほとんどが水分のため、干すと10kgの実から100gとれるかどうか、というから驚きです。今年は猛暑の影響で受粉がうまくいかず夕顔の実の収穫量も少なく、かんぴょうは300kgほどしか生産できなかったそうです。
「干す作業は天候に左右され、いつ取り込むかの見極めがとても難しい。でも、水口かんぴょうは、自然にまかせた天日干しで無漂白、夕顔の実をそのまんま乾燥させただけだから安全安心で美味しいですよ」と、谷口部会長の奥様の裕美さんは胸を張ります。

代々受け継がれる希少な種

帯状に薄くむいた実を1本ずつ竿にかけて天日干し。竿には藁を巻き付けて実がくっつかないようにしてあります

 かんぴょうは1600年頃、水口岡山城主が作らせたのが始まりで、江戸時代から水口宿の名物でした。今や生産量日本一の栃木県にかんぴょう作りを伝えたのは水口から下野国壬生(しもつけのくにみぶ)(栃木県)に国替え(1712年)となった藩主鳥居忠英(とりいただてる)だそうです。かんぴょう発祥の地水口では、400年以上も前から種を代々自家採取して伝統的な製法を今に伝えています。
「種とり用の夕顔を畑で乾燥させ、翌年の3月末に種まきして苗を育て、4月20日すぎに畑に定植します。5月末頃に畑一面に藁を敷きます。藁は土の乾燥や雑草除けにもなるし、夕顔のつるはこの藁に巻き付いて伸びていきます。藁の上に実をのせれば泥除けにもなる」と、谷口部会長。必要な敷き藁は米作りをして確保しているといいます。
「種とりから夕顔を育てて、収穫後は実をむいて干して束ねて出荷と、かんぴょう作りはたくさんの手間がかかります。昔はどこの家でも自家用に作っていたのに、今では住宅地が広がり畑や田んぼは飛び飛びになり、かんぴょう農家も10軒を数えるだけとなってしまいました。地元の小学生たちにかんぴょう作りを見て、食べて美味しさを実感してもらうなど興味をもってもらい、貴重な伝統食材が廃れないよう伝えていくとともに、水口かんぴょうの美味しさを全国の人に知って食べてもらいたいです」と、JAこうか水口営農経済センターの藤村啓伍さん。

 太陽の恵みをたっぷり受けてうま味がギュッと濃縮された水口かんぴょうは、ふんわり柔らかくて味がしみやすく、出汁をよく含みます。
「無漂白だから水で戻すだけですぐ使えます。お寿司の具はもちろん、煮物や天ぷら、炒め物、和え物など何でも使えます。1袋使い切れなかったら、ビニール袋に入れて冷凍保存しといて」と、裕美さん。普段のおかず使いにも重宝する乾物です。食物繊維やカルシウム、カリウムなどの栄養素もたっぷり。先人の知恵がつまった伝統食材を食卓に並べてみませんか。

●JAこうか
【水口かんぴょう】生産概要
生産者:10名
栽培面積:約60アール
出荷量:約800kg
主な出荷先:滋賀県内
購入先:JAこうか花野果市水口店
http://ja-kouka.shinobi.or.jp/store/farmstand/index.php

JAこうかの藤村啓伍さん

2018.11更新