【群馬県伊勢崎市】

独特の香りと鮮度が命 春菊

文◎編集部 撮影◎磯野博正

観賞用の菊は秋に花を咲かせますが、春に花を咲かせることから「春菊」の名前がつきました。地方によって形や味わいに違いがあり、関西では「菊菜」とも呼ばれています。
春菊は日持ちのしない葉物野菜のため、都市近郊での栽培がさかんです。
香りが命、冬の食卓に欠かせないフレッシュな春菊を求めて群馬県JA佐波伊勢崎を訪ねました。

露地は1回、ハウスは3回収穫

生産者の須田孝信部会長と奥様の律子さん

 食欲をそそる独特の香りとシャキッとした食感、緑色鮮やかな春菊は、露地栽培とハウス栽培の併用で通年出荷されていますが、旬は11月から2月。ちょうど鍋物が恋しくなる季節と重なり需要が高まります。
「春菊は葉の大きさや切れ込みの形によって、大葉種、中葉種、小葉種に大きく分けられます。さらに中葉種は、株が上に向かって伸び茎を摘み取る株立ち系(関東に多い)と、側枝が伸びやすく根元から抜き取り根つきで販売される株張り系(関西に多い)に分けられます。東西で異なる品種が栽培されています」と、JA佐波伊勢崎いせさき営農センター営農事業部の竹澤裕さん。

 JA佐波伊勢崎管内では関東で主流となっている中葉種の株立ち系を栽培。葉に深い切れ込みがあり、葉肉が厚くて柔らかく、香り高いのが特徴です。
「露地栽培のたねまきを9月中旬にしましたが、台風が来たり、急に気温が上がったりして芽がうまく出ず、またまき直してと、40年作っていても失敗があるよ」と、笑い飛ばしながら話してくれた春菊生産者の須田孝信部会長と奥様の律子さん。今年は特に台風など自然災害が多く、なかなか思うように栽培ができないため、生産者にとってもどかしい日々が続きました。
「春菊は薄くタネをまくより厚めにまいた方が競争しあってよく生長します。露地栽培は30cm位に育ったら摘み取って1度収穫したら霜が降りる前に終えます。ハウス栽培の場合は1回収穫しても3週間くらいでまた収穫できるまでに生長するので、同じ株で3回収穫して終わりにします。そのままにしておけば上にどんどん伸びていきますが、茎が細くなって品質が落ちてしまいます」と、須田部会長。

桑の葉を収穫する時に使っていた「桑爪」を指にはめて春菊の収穫にも応用しています。小さな刃ですが切れ味抜群
 春菊は冷涼な気候を好み、生育適温は15~20℃といわれていますが、生命力旺盛で温度適応性が広く、防寒対策をするとよく耐えてくれるそうです。
「群馬名物の上州のからっ風。この辺りでは“赤城おろし”っていいますが、冷たく乾いた北風が吹くので、ハウスにビニールカーテンをかけ二重にして寒さよけをします。でも、今年の1月は特に寒かったので春菊が凍って色が変わってしまうなんてこともありました」とのこと。
 今年は、人間にとっても植物にとっても、生命にかかわる温度変化の激しい1年でした。

肥沃な大地で多品目栽培

「天候とか温度変化が読めずに失敗することもある、農業は賭けだね」と、呟く須田部会長。それでも年間を通して、多品目を栽培して被害を最小限にしているといいます。
「JA管内は赤城山から利根川に広がる肥沃な大地で、太陽に恵まれ年間の日照時間が長く、米と麦の二毛作が行われるほか、トマト、キュウリ、ナスなどの果菜類や春菊、ほうれんそう、ごぼうなど年間を通して多品目を栽培している生産者が多いです。大消費地に近いという立地条件にも恵まれて、春菊やほうれんそうなどの日持ちがしない軟弱野菜の栽培も盛んで、JAでは鮮度保持のため予冷して出荷しています」と、いせさき営農センターの竹澤さん。

丁寧に選別して長さを揃えて切り、計量して袋詰めしていきます

 須田部会長は春菊の露地とハウス栽培を合わせて約20アールの他、米と麦、ナス、ブロッコリー、白菜などの栽培も手がけ、一年中休む暇はありません。
「大変だけど、収穫して袋詰めの作業をしている時は楽しいですよ」と、律子さん。収穫の喜びはそれまでの苦労を忘れさせてくれます。丹精こめて育てた春菊を美味しくいただきたいですね。

 春菊はアクが少ないので、柔らかい葉はサラダなど生食で食べられます。鍋物はもちろん、おひたしやごま和え、天ぷらなどにして香りと食感を楽しみましょう。カルシウム、鉄、カロテン、ビタミンCなど栄養素も多く、冬に食べたい健康野菜です。

●JA佐波伊勢崎
【春菊】生産概要
生産者:209名
栽培面積:約21ヘクタール
出荷量:13万9,000箱(3kg箱)
    (2017年度実績)
主な出荷先:関東、東北

JA佐波伊勢崎 いせさき営農センターの竹澤 裕さん

2018.12更新