【茨城県ひたちなか市】

自然の甘みが凝縮! 干しいも

文◎来栖彩子 撮影◎磯野博正

世代を問わずに親しまれている干しいもは、さつまいもの甘みがぎゅっと詰まった無添加のおやつ。
携行できる保存食として明治時代から全国に広まり、甘味としても楽しまれるようになりました。
茨城県は全国一の「干しいも」産地。
全国シェア9割の生産量を誇ります。
干しいも作り最盛期を迎えたひたちなか市を訪ねました。

干しいもあれこれ

“たまゆたかさん””紅はるかさん”と、品種ごとに”さん”づけして呼ぶ、干しいもへの愛情たっぷりの生産者、柴田晃さん

 食物繊維が豊富で砂糖や添加物を使用しない天然のスイーツとして、ここ数年で注目度が上がっている干しいも。茨城県内でも沿岸部を中心に産地が広がり、ひたちなか市で最も多く生産されています。取材に訪れた1月は強い風が吹き、凍てつく寒さ。
「水はけのよい火山灰土とミネラルを含んだ海からの風、冬は雨が少なく晴天率が高いことなどがさつまいもの栽培と干しいも作りに適しています」とJA常陸ひたちなか営農経済センターの木下康宏調査役。
「干しいもは原料のさつまいもの品種、仕上げる形の違いによって味わいが異なります。品種はこれまで干しいも専用品種の”たまゆたか”が中心でしたが、焼きいもでも人気品種の”紅はるか”が年々増えてきて、半々くらいになっています」とのこと。

【写真左】貯蔵熟成により糖度が5度ほどアップします【写真右】スライスした芋より倍の時間がかかる”丸干し”

 とはいえ、茨城の昔ながらの干しいもといえば、たまゆたかです。
「あっさりとした甘さで噛み応えがあり、噛むほどにじわじわと味が出てきます。紅はるかは黄色が鮮やかで甘みが強く、しっとりやわらかいのが特徴です」と違いを教えてくれました。
 形は原料いもを薄く縦にスライスした”平干し”が定番ですが、小ぶりのいもを丸ごと干した”丸干し”はねっとりもちもちとした食感で食べごたえがあります。干すのに時間がかかり出回る量は少ないながらもファンが多いといいます。

寒さで熟成、糖度アップ!

 干しいもの加工は12月から始まり、2月いっぱいまで。ピークは12~1月です。
 さつまいもを蒸して、切って、乾燥する。それだけ聞くとシンプルな工程とも思われる干しいも作りは、原料のさつまいもの栽培から1年がかりの仕事です。春先に種芋から苗を作り、5~6月に定植、秋の収獲とともに干しいもの加工がスタート…とはならずに12月からとは?
「さつまいもは10月に適期を迎えたものから収穫を始めますが、すぐには加工せず1ヵ月以上貯蔵します。さつまいものでんぷんは寒さによって糖化して甘みがぐっと増すんです。温度が低過ぎてもよくないので13℃くらいの適温を保って熟成させていきます」と生産者の柴田晃さん。

蒸しあがった芋を崩れないようひとつひとつ丁寧にスライス

 こうして熟成させて糖度が増し、天気が安定する12月から加工が始まります。まずは洗って蒸す作業から。
「時間をかけてじっくりふかすことでおいしくなります。蒸し加減は硬くても軟らか過ぎてもダメ」。
 原料いもの大きさごとに調整しながら1時間半ほどかけて蒸しあげます。次に皮むき。「むき具合が仕上がりの色に影響する」といいます。皮むきが終わると専用の裁断機でスライス。ピアノ線を等間隔に張った上からいもをすっと押し下げると一瞬で切れていきます。それを1枚1枚丁寧にはがして網に並べて乾燥の準備。ここまでの作業はすべて手作業です。
「ホクホクに蒸しあがった芋はやわらかくて崩れやすいので、それぞれの工程で個々の手腕が問われます。干しいも作りは人の手による技仕事。みんなベテランです」と柴田さん。4~5人で1日約150kg。作業は早朝4時からのこともあるそうです。乾燥機にかけて、乾き具合を見ながら天日干しをします。太陽の光を浴びて、さつまいもが黄金色に輝いています。
「軽くあぶるとやわらかくなります。オーブントースターで焼くと香ばしさが出ておいしいですよ」。
 干しいもは保存料などの添加物を使用していない半生品なので、購入後は冷蔵庫での保存をおすすめします。また、いもの表面につく白い粉は糖分が結晶化したものなので安心してお召し上がりいただけます。
 寒さに育まれた冬の味覚、干しいも。いろいろ食べ比べてお好みを見つけてみるのも楽しいですね。
(2018年1月下旬取材)

●JA常陸
【干しいも】生産概要
出荷量:約160トン(2017年実績)
主な出荷先:北海道、関東、関西

JA常陸ひたちなか営農経済センター木下康宏調査役

2019.01更新