【愛知県知多市】

日本原産の伝統野菜 ふき

文◎来栖彩子 撮影◎磯野博正

春の訪れを告げるふきは、数少ない日本原産の食用の植物で全国に自生し、山菜として親しまれてきました。平安時代から食用、薬用として利用されるなど、古くから栽培、活用されていた記録があります。
愛知県は生産シェア4割を超す全国一の産地で、ふきは県の伝統野菜となっています。JAあいち知多を訪ねました。

歴史ある知多半島のふき

 雪の下からふきのとうが顔を出し、春とともに淡緑色の葉を伸ばすふき。和食で春を表すのに欠かせない食材です。
 現在、全国で主に栽培されている品種の「愛知早生ふき」は、約200年前、江戸時代の末期に愛知県知多半島の加木屋村(現・東海市)で自家用に栽培されていたものが始まりといわれ、明治時代の中頃から知多半島を中心に栽培が広がりました。
「食用としている部分は葉柄となります。葉柄が太く、淡い緑色で根元がほんのり赤いのが特徴です。本来は春の野菜ですが、知多半島では10月に収穫が始まる『秋ふき』と2月初めから5月までの『春ふき』を組み合わせて7~8ヵ月間、収穫、出荷しています」と、JAあいち知多営農部の森岡哲生さん。

「知多のふきをたくさんの人に届けたい」と生産者の竹内敏信さんと妻の市江さん

 収穫後に古い株をすき込んで土づくりをし、JAが増殖させたウィルスフリー株を種株として植えつけます。
「種株を2ヵ月ほど冷蔵してから夏に植えつけると、ふきは冬から春になったと錯覚して生長し、秋に収穫ができるんです。これを抑制栽培といいます。秋ふきの収穫後、寒さに当ててからビニールハウスで保温し、早めの春を感じさせる促成栽培によって、2月から春ふきが収穫できます」。抑制栽培と促成栽培を組み合わせて5月までの長期出荷を実現しています。

水分の調整がカギ

「水分をたっぷり吸い上げて育ったふきは、みずみずしくて、やわらかいですよ」と知多園芸振興協議会春野菜部・ふき部会長の竹内敏信さん。ふき栽培2代目の竹内さんは、90アールの栽培面積をもつ40年以上の経験があるベテラン生産者です。
「水はけを良くしながらも、常に水を切らさない水やりが重要です。根元に藁を敷いて保水し、かといって、蒸れないようにハウスの開閉をするなど、温度と湿度の管理に注意して育てます」。年間を通して、土づくりや時期をずらしての定植、ビニールの被覆や遮光など、作型や気候に応じた作業が続きます。「夏の植え付け作業はきつい」ものの、毎年、株を植え替えることにより、高い品質を安定させ、病気の発生も抑えられているそうです。

ふきの生命力を落とさぬよう運搬にも工夫があります

 収穫は鎌を使って刈り取ります。後継者である長男の健統(たけのり)さんとともに、1メートル以上に生長したふきの根元を数本つかみ、ザクザクと手早く1日約800kgを収穫。収穫したふきは、折れないよう束にしてゴザに包み、トラックの荷台に立てて運びます。「育っていた時と同じ状態で運んだ方がふきに負担がかからないし、水分を多少切ることで曲がりを防ぐ」とのこと。
 収穫後は選別と調整、梱包作業とまた手作業が続きます。選別し、長さを揃えて一束ずつ専用ラップで巻いて、4kgずつ箱詰め出荷します。葉柄は長くて折れやすく、葉は大きく傷みやすいので、丁寧に素早く扱います。その後、JAあいち知多の集荷場で検査を受け、収穫した翌日には関東、京阪神、中京などの各市場へ向けて出荷されます。

1本、1本長さを揃えて束を作ります

「ふきの新鮮でさわやかな香りとほのかな苦みのある独特な風味を気軽に味わってもらいたいです」と竹内さん。
 ゆでて皮をすっとむくと現れる、透明感のある翡翠(ひすい)色を活かしたふきの煮物や、甘辛く佃煮にしたきゃらぶきは、幕の内弁当などでもお馴染みの一品です。和食に限らず、肉と合わせて炒め物に、酸味をきかせたマリネにするのもおすすめです。
 栽培技術により、ひと足早く、長い期間に渡って楽しめる春の味わい。日本原産の伝統野菜を日常の食卓でバリエーション豊かに食べ繋いでいきたいですね。

JAあいち知多
【ふき】生産概要
生産者数:65軒
栽培面積:45ヘクタール
出荷量:約2,170トン
主な出荷先:関東、京阪神

「季節ごとに風味の違いを楽しめます」とJAあいち知多の森岡さん

2019.03更新