【千葉県夷隅郡大多喜町】

春の息吹を満喫 たけのこ

文◎編集部 撮影◎磯野博正

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たけのこは地下茎から出る竹の芽のこと。
竹の子どもで「竹の子」です。
日本で主に食べられているのは「孟宗竹もうそうちく」「真竹まだけ」「淡竹はちく」です。
なかでも孟宗竹は大型で柔らかく、美味しいと人気の品種です。
桜の開花が話題になる頃、たけのこが地上に顔を出します。
出荷最盛期を迎えた千葉県の代表的なたけのこ産地、大多喜町を訪ねました。

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熟練の掘り取り作業

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【写真左】ベテラン生産者の森紀久嗣、明子さん夫婦 【写真右】親竹は年号を書いて残します

 春を告げる食材の代表ともいえる「たけのこ」。昔から「たけのこの良し悪しは土で決まる」といわれています。
「たけのこの栽培は、土壌が粘土質で酸性であることが適しています。大多喜町の竹林はこの土壌条件を満たし、『白たけのこ』と呼ばれるほど色が白くて柔らかく、えぐみ(アク)の少ない高品質のたけのこを出荷しています」と説明してくれた、JAいすみ営農部営農販売課の寺家匠さん。粘土質で水持ちのよい土壌は水分や養分を安定して供給するため、たけのこの繊維が緻密になるといわれています。その逆がいわゆる「筋っぽい」たけのこなのだとか。
 生産者の森紀久嗣さんの竹林に案内してもらいました。自宅の裏山の竹林約70アールを奥様の明子さんと二人で管理し、約4トンを出荷しています。

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「4月に入り最盛期になると朝5時半頃から掘り始めます。土の割れ目や地面から穂先が出ているのを見つけて、そこを掘るんですよ」と森さん。土の割れ目からたけのこの見当をつけ、周りからクワを入れていきます。たけのこの姿全体が見えると、クワをてこにして根元をザクッと切り取って掘り上げ、背中のかごにひょいと入れていきます。実に鮮やかであっという間の作業。この道50年のなせる業です。
「掘り取ったたけのこは作業場に運び、大きさをそろえて選別・箱詰めして出荷となります。生長が早いので、地上に顔を出して日光に当たると皮が黒くなってしまい、品質が落ちるので、それこそ時間との勝負ですね」と森さん。急斜面での掘り取りや運搬の繰り返しは相当な重労働です。

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ほんの少し地面から出ている穂先を見つけて掘り上げていきます

バランスよく竹林を管理

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穂先が黄色で皮の色が白いものを選ぶと、甘くておいしい

 たけのこは天候によって収穫が大きく左右されます。同じように手入れされた竹林でも、日当たりや土質などで収穫時期や味が違ってくるといいます。
「うちの竹林は西向きなので、乾燥に一番気を使います。夏場はあえて下草を刈らずにおいて保湿し、秋になってから刈り取ります。11月過ぎて竹の葉が落ちると、翌年親竹にする竹を選んで印をつけ、4年経った古い竹や不要な竹を春先に伐採して、更新していきます。こうしてバランスよく毎年高品質のたけのこが収穫できるように手入れしていきます」と森さん。最近は1・5㎏以上のLサイズより、1㎏前後のMサイズが好まれるため、親竹として残す竹のサイズもそれに見合ったものを見極め、出荷の中心となるようにしているそうです。

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動物よけの電柵

 よく手入れされた竹林は適度に日光が差し込み、風通しのよい状態が保たれています。厳しい冬を越したたけのこを待ち望んでいるのは人間だけではなく、野生の動物も同じ。
「サルやシカ、イノシシなどがきて食べ散らかしていきます。竹林の周りに電柵を張って防いでいますが、サルは頭がいいからね」と、対策に頭を悩ませます。

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ごちそうしていただいた「若竹汁」とたけのこの「刺身」。たけのこの香りと甘みが絶品です

 大多喜町産のたけのこは、色白で肉厚で柔らかく、香りがよくてえぐみも少なく絶品です。収穫して時間が経つほど、アクが強くなりえぐみも出てきます。できるだけ早く湯がいてアク抜きをしましょう。代表的な「若竹煮」は、ワカメの海の香り、たけのこの里の味、木の芽の山の香りと味わい深い出会いものの取り合わせです。
「たけのこを味噌汁にするときは、生から煮るとだしがでて美味しいですよ」と明子さん。これはすぐ試す価値ありの情報ですね。さあ、たけのこで春の訪れを食卓で満喫しましょう!

●JAいすみ
【たけのこ】生産概要
生産者 : 133名
栽培面積 : 約200ヘクタール
生産量 : 約66トン
主な出荷先 : 千葉県内、東京
(取材:2015年4月上旬)

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JAいすみの寺家さん

2016.04更新