“年中みかんのとれる里”の超極早生

南北に長い三重県で最も南に位置する紀伊半島の東紀州地域は、熊野灘に流れ込む黒潮による温暖な気候に恵まれ、年間を通じてさまざまな柑橘が栽培されています。
「温暖で雨が多い気候と水はけのよい土壌を活かして、極早生、早生の温州みかんを主力に、せとか、不知火(しらぬい)、甘夏、セミノールなど、一年を通じて柑橘類を出荷しています」と、JA伊勢三重南紀経済センター営農柑橘グループの和田慎一郎職務代理。
「露地栽培の温州みかんの中で最も早く、9月上旬に収穫が始まるのが”超”極早生品種の『味一号』。その中で糖度、酸度、外観などの基準をクリアし、厳選されたブランドみかんが『みえの一番星』です。
台風で大きな被害を受けた産地の希望の星になってほしいとの願いを込めて、そして本州で一番早く出荷されることにちなんで2011年に名づけられました」

温州みかんシーズンのトップを飾る緑色のみかんは「青切りみかん」と呼ばれ、地元ではたくさんの人がこの季節を待ちわびているとか。割ってみると、緑色の果皮とオレンジ色の果肉の鮮やかなコントラスト。でも、まだ青くて酸っぱいのでは、とつい思ってしまいますが…。
「果皮の色づきよりも果実が先に成熟するのです。ぶれのない甘さと程よい酸味のバランスでみかんの味わいがしっかり感じられます」とのこと。
収穫期は9月上旬からわずか2週間ほどですが、地元で愛される「青くて美味しいみかん」は中京・大阪市場では知られる存在です。
徹底的に質を重視した選果

「糖度を上げ、味を凝縮させるには水分と地温のコントロールが大切。木の根元や圃場一面に白色のシートを張るマルチ栽培が特長です」と話す、温州部の裏章弘部会長。マルチを張るのは雨など余計な水分を遮断し、夏場の地温を抑えるため。反射で太陽が届きにくいところに光を当てる効果もあります。

裏部会長はJAの営農指導員としてみかんの栽培指導をしていましたが、「自分でも作ってみよう」と一念発起して11年。4ヘクタールで8種類の柑橘と梅をリレー方式で栽培し、ほぼ一年中収穫が続きます。その合間に土づくりや剪定、水やり、摘果など、それぞれの果樹の作業を並行して行う忙しさ。
「みえの一番星」となる「味一号」は5月に開花して9月の収穫までの期間が短い品種。その間に3段階で行う摘果作業が最も手間がかかり、品質に影響するそうです。
「1本の樹に2万枚ほどの葉がつく中で、葉15枚につき1果に調整します。天候や獣害などに左右されて年ごとに同じようにはいきませんが、やりがいを感じています」と、裏部会長。1人1日300~400kgを収穫し、腐敗果などを取り除いて選果場へ出荷します。

選果場では全てのみかんをひとつずつ光センサーでチェック。外観、内部にも問題がなく、糖度10度以上、酸度1.1%以下のものだけが「みえの一番星」となります。JAの統一柑橘選果場は、平成27年に導入した最新鋭のシステムを使い、高精度で丁寧な選果により、品質のそろった、ロスの少ない商品を提供し、市場関係者や消費者から信頼される産地を目指しています。
「温州みかんのトップを切って産地をけん引する『みえの一番星』のおいしさをもっとたくさんの方々にお届けしたい」とJA伊勢の和田職務代理。
9月に入り、わずかな期間だけの限定品。緑色の果皮に凝縮された一番乗りのおいしさをどうかお見逃しなく!
●JA伊勢
【みえの一番星】生産概要
生産者:約300人
栽培面積:約50ヘクタール
出荷量:約200トン
主な出荷先:県内、中京、大阪、東京
