【 広島県安芸高田市】

うまい酒はうまい米から八反錦はったんにしき

文◎編集部 撮影◎磯野博正

私たちが普段食べている米は「うるち米」、餅やおこわなどに用いられるのが「もち米」、そして日本酒造りに使われるのが「酒米」です。
広島県を代表する酒米が「八反錦」(酒造好適米※)です。
JAグループ広島では高品質な酒米を安定供給するため、酒米生産に適した地域を団地化し、その地域にあった品種の栽培をすすめています。
歴史ある産地のひとつJA広島北部の高宮酒米部会を訪ねました。
※酒米の中でも特に酒造りに適した品種のこと。詳しくは「なるほど全農」をご覧ください。

県内4JAの酒米団地で適地適作

「農業が趣味なんだよ」と、笑顔で対応してくれた(株)羽佐竹農場の松川秀巳社長

 酒米の栽培は通常の米より手がかかり難しいうえ、産地の環境条件も限られます。JAグループ広島では、「稲作の栽培期間である5月から10月の平均気温が20℃前後で、酒米が成熟する時期は昼夜の温度差が大きく、豊富な水がある日当たりのよい地域であること」という条件にあった地域のみを酒米団地に指定しています。現在、県内4JAの酒米団地において、それぞれの産地の特長を活かしながら高品質の酒米を生産し、酒造会社からの期待に応えています。
「中国山地のほぼ中央、標高300メートル前後の山間に田んぼが広がります。夏場は昼夜の寒暖差が大きく、冬には積雪も多いところです。北部に中国地方一の江の川が流れ、水量も豊富で清らかです。当産地では、八反錦を中心に『八反35号』や『雄町』、県のオリジナル品種『千本錦』や『こいおまち』などの品種を栽培しています」と、JA広島北部営農部の青杉勝利次長。

コンバインで収穫後、作業場に運んで乾燥・調製作業をします

 酒米はうるち米より大粒で、酒造りに必要な心白(米粒の内側に白く見えるでんぷん質)が大きいのが特徴です。草丈が長く倒伏しやすいため、天気予報が気になってしようがないといいます。
「収穫時期の9月、10月は台風シーズンだから特に気がもめる。早生、中生、晩生の品種があるから、前半はよくても後半は台風にやられたりと、出来は天候に大きく左右されるからね。八反錦の強みは、収穫時期が早い、価格が値ごろ、うまいの三拍子だよ」と、株式会社羽佐竹農場の松川秀巳社長。価格が値ごろという点については、いかに栽培にかかるコストを抑えるかという生産者の努力の賜物といえます。

 酒米とうるち米を合わせて約50へクタールを栽培する松川社長。「同じ1枚の田んぼの中でも場所によって土壌の養分が違う。なので、土壌診断センサを利用した可変施肥田植え機を導入して、必要な場所に必要な量を施肥することで、生育のバラつきをなくすようにしている。肥料を無駄遣いすることがなくコストを抑えることができる」とのこと。
 歴史ある産地の生産者として培ってきた経験と勘、それに加えて、ITを利用した最先端の技術も意欲的に導入して、酒米産地として更なる高みを目指している松川社長です。

専用ライスセンターで乾燥調製

JAの酒米専用ライスセンターに収穫した籾が次々と運ばれ、乾燥・調製・保管されます

 JA広島北部では、品種別の適期の田植え、稲刈りを徹底し、特に温暖化による高温障害や収量の低下を防いでいます。そして、地域の生産者が収穫した酒米を、JAのライスセンターで引き受けています。
「酒米専用のライスセンターで品種ごとに乾燥・調製・保管をしています。収穫したての籾は水分量が20~25%くらいありますから、酒米の最適水分量である14.5%を目標に時間をかけて丁寧に乾燥調製を行います」と、JA広島北部の青杉次長。さらに、品種ごとに網目の大きさを変えてふるいにかけ、粒の均一化もはかっています。
 酒米は全てが酒造会社からの需要に基づく計画生産のため、こうした細かな仕上げまで徹底させることで、お互いの信頼関係と絆を強めています。

大粒で心白が大きい八反錦(左)とコシヒカリ(右)の玄米

 最後に松川社長は「実は酒は飲まないんだ。たばこも吸わない。農業が趣味なんだよ」と笑顔で話してくれました。酒米一粒一粒に込められた生産者の情熱が、うまい酒となって私たちのもとに届けられているのです。酒の肴とともにしみじみと味わいたいですね。

●JA広島北部
【酒米】生産概要
生産者:179名
栽培面積:約258ヘクタール(八反錦166ヘクタール)

「日本酒をたくさん楽しんでほしい」と、JA広島北部の青杉勝利次長

2019.12更新