【大阪府八尾市】

香り豊かな季節野菜八尾やお若ごぼう

文◎編集部 撮影◎磯野博正

八尾若ごぼうは大阪府東部の八尾市で生産されているご当地野菜です。
葉ごぼうとも呼ばれ、根だけでなく軸や葉すべてを食べられる珍しいごぼうです。
みずみずしい軸葉のシャキシャキとした歯ざわりと特有の香り、ほのかな苦みが春を呼ぶ野菜として、地元で親しまれています。
独自の栽培方法で生産される特産野菜を求めて八尾市を訪ねました。

一度刈り取り、新芽の若ごぼうを収穫

「伝統の味を守っていきたい」と、生産者の松岡孝明さんと奥様の尚子さん

 若ごぼうは江戸時代の献立に名前がでてくる伝統的な野菜で、大阪府八尾市で栽培が盛んになったのは大正時代からといわれています。短い根に長い軸と大きな葉が特徴で、同じキク科のフキとよく似た外観をしています。
「年間を通じて食べられる野菜が多いなか、八尾若ごぼうは旬が短く季節限定で“春を告げる野菜”と呼ばれています。ハウス栽培の早いものが1月下旬から出荷され、続いてトンネル栽培、露地栽培のものが4月上旬まで出回ります。八尾若ごぼうは春先の温度変化に弱く、高温が続くと急激に生長するので、早めに出荷が終わってしまうこともあります」と、JA大阪中河内営農経済部 営農指導グループの松下耕平営農指導員。

収穫が始まると待ったなし。日々作業に追われます

 地元の人々が販売を今か今かと待ち望む八尾若ごぼうですが、栽培や出荷に労力がかかるため、生産者数は減っています。そんな中、八尾若ごぼうを作り続けて3代目という生産者の松岡孝明さんの畑にお邪魔して、独特な栽培方法をお聞きしました。
「種は自家採取で代々受け継がれ、毎年9月中旬頃に種まきをします。11月に、大人の腰くらいに生長した軸葉を一旦、全部刈り取ります。冬至を過ぎて日照時間が長くなるにつれ、再び新芽が出てきます。生長した若ごぼうは早いものは1月下旬から収穫できます」と、松岡さんは説明してくれました。最初に伸びたものを収穫しないのは、あくが強くて硬いためだとか。2度目のものは柔らかくて香りも高く、比べ物にならないほど美味しいそうです。

「収穫が終わった畑には、次は枝豆を植えて連作障害を防いでいます。そして八尾若ごぼうの種まき前に有機質肥料をたっぷり入れて土づくりをします」とのこと。松岡さんはJAのもみ殻たい肥づくり同好会の会長も務めていて、土づくりにもこだわりがあります。7月に出荷される枝豆も八尾の特産物として知られ、「八尾えだまめ」として卸売市場から高い評価を得ています。

伝統の「矢束」にして出荷

1本1本見極めながら熟練の技で仕上げられる「矢束」

 八尾若ごぼうは軸も葉もすべてを食べるので、全体を傷めないように収穫し、選別、出荷するまで、ひとつひとつの作業に神経を使います。
「収穫は朝露が乾く昼から行います。葉っぱが湿っていると傷み、変色してしまうからです。そして作業場に持ち帰って1本ずつ丁寧に枯れた葉などを取り除き、大小を組み合わせながら矢を束ねるようにテープ止めをします。地域で代々受け継がれている技ですが、習得している人も生産者の半分くらいになりました」と、松岡さん。矢束のような出荷姿から、地元の人は「やーごんぼ」と親しみをこめて呼びます。

 2013年には地域のブランド品を保護する「地域団体商標」に登録されました。大阪の農産物では「泉州水なす」に続いて2例目です。食物繊維はさつまいもと同等、鉄分はほうれん草と同等、さらに葉の部分には毛細血管を強化する働きや血栓を防いで血流をスムーズにすると言われているルチンが含まれる栄養価の高い野菜です。食べ方は根の部分は普通のごぼうと同じ、軸は切ってから20分程水にさらして、葉は1〜2分さっと湯がいてから調理します。炒め物や揚げ物、煮物、和え物、炊き込みご飯など、様々な食べ方で味わえます。
 春の香りたっぷりの地域限定野菜・八尾若ごぼうの美味しさを多くの人に知ってもらいたい、次世代に残したいという思いが、生産の原動力となっています。八尾市内のスーパー、JAの直売所など地元中心の出回りとなりますが、旬の時期なら首都圏のデパートの物産展やマルシェなどで出会えることもあります。ぜひ一度お試しください。
(取材:2019年2月下旬)

●JA大阪中河内
【八尾若ごぼう】生産概要
生産者:約100軒
生産量:約200トン(2019年実績)
主な出荷先:大阪府内

「1束で根・軸・葉と3つの味が楽しめます」とJA大阪中河内の松下耕平営農指導員

2020.02更新