「黄金柑」×「今村温州」

湘南ゴールドは、小田原から伊豆半島あたりで栽培されている「黄金柑・おうごんかん(ゴールデンオレンジ)」と「今村温州」を掛け合わせて育成されました。「黄金柑」は実が小さく皮が厚くむきにくいのですが、手でむくと香りが立ち上がり、ジューシーで甘みが強い柑橘です。今村温州を掛け合わせることで、果実は大きく、果皮は滑らかでむきやすくなるよう改良して、爽やかな香りと味をもつ新品種「湘南ゴールド」が誕生しました。

「2003年から湘南ゴールドの苗木を管内の柑橘生産者に配って育ててもらいました。実がつき始めたのは4年目くらいからで、2008年に出荷が始まりました。栽培技術の研究会を2011年に立ち上げ、生産者の間で技術を共有しながら栽培面積を広げてきました。さらに生産・販売に力を入れるため技術研究会を解散し、2015年には『SG21』という部会も設立しました。栽培技術が確立されてきたので、今後は販売のために、生産量の拡大と安定出荷を目指したいです」と、JAかながわ西湘営農部指導販売課指導係の保田喜保さん。保田さんは湘南ゴールド導入当初から技術指導TAC(地域の担い手に出向くJA担当者)として管内を奔走しています。

「当初、生産者は100名ほどでしたが、現在は約200名がSG21に所属しています。目標にしていた生産量100トンは2016年に達成できました。神奈川県内では知られてきましたが、まだまだこれからです」と、ブランドの確立に意欲を見せます。
課題は「隔年結果 」の性質

湘南ゴールドは温州みかんに比べて出荷価格がよいため、期待の星とされていますが、栽培はそう簡単にいかないのが現状です。
「一番の課題は”隔年結果”で、たくさん成る年と成らない年が交互にやってくるため、収穫量が安定しません。低温に弱く、露地栽培では、収穫時期の2月に霜が降りて寒さにあたると大きな被害がでます」と、SG21の会長を務める榎本昌之さん。さらに、枝葉が広がって伸び、樹勢が強いので剪定に手間がかかるのも苦労のひとつ。ハウスでは大玉になるため、果実の重さで枝が折れないようにする枝吊りにも手がかかります。「7月頃に行う摘果作業がとても重要です。房状にたくさん実がつき、陰の小さな実まで正確に摘果しないと収量が上がりません」とのこと。安定生産を目指して、日々試行錯誤が繰り返されています。

湘南ゴールドは温州みかんより小さめで、色はレモンに近い黄色。
「色を見ただけでは酸っぱそうと思われるかもしれませんが、糖度は12%前後と十分な甘みがあります。ハウスものが2月中旬から、露地ものは3月から4月頃が食べ頃になります。収穫直後も美味しいのですが、冷暗所で10日間くらい貯蔵してから出荷すると酸味がまろやかになり、甘みもアップしてさらに美味しくなります」と、JAかながわ西湘の保田さん。
果肉は柔らかくてとてもジューシー、そして爽やかな香りが何とも心地よく、まさに「幸せを呼ぶ新感覚オレンジ」といえます。
また、出荷規格外の湘南ゴールドは、香りのよい果皮や果汁など余すところなく使って加工品が作られています。ジャムやゼリー、ドレッシング、サイダー、ビールなど種類も豊富です。県内の農産物直売所や都内デパートなどで販売されていますので、見つけたらぜひお楽しみください。
(取材:2019年2月上旬)
●JAかながわ西湘
【湘南ゴールド】生産概要
生産者:約200名
栽培面積:約16ヘクタール
出荷量:約150トン(2019年実績)
主な出荷先:神奈川、東京
