【山形県山形市】

柔らかな風味で瑞々しく、葉先まで美しい 山形セルリー

文◎編集部 撮影◎磯野博正

「セルリー」はセロリ(celery)をフランス語訛りで読んだものです。
JA山形市のセルリー栽培の歴史は1968年に遡ります。
以来、半世紀以上、自家採取された種子を伝え、難しいとされるセルリー栽培の技術を確立して、東北随一の産地となりました。
さらに未来を見据えてプロジェクトを立ち上げ、新たな担い手の育成など、JAならではの仕組みづくりで生産者をサポートしています。
山形セルリーの新たな飛躍が始まっています。

若い後継者・新規就農者のチャレンジを支援

「農業はがんばっただけの成果がでるので、やりがいがある」と、生産者の会田洋一さん

 1968年、まだ馴染みがうすく栽培が難しいといわれていたセルリーに着目した若手生産者4人が、当時「セルリー栽培の神様」と呼ばれた生産者の下で栽培技術を学び、翌年から山形市内でセルリー栽培を始めました。当初は売り先もなく困難を極めましたが、試行錯誤を繰り返し、地域に根付いてきた「山形セルリー」は、市場や消費者から高い評価を得るブランドに成長しました。

 しかし、出荷額は1997年をピークに生産者の高齢化とともに大きく落ち込み、先人たちが育てた「山形セルリー」の継承が危ぶまれるほどに。危機感を強めたセルリー部会の生産者とJAがタッグを組み、「『山形セルリー』農業みらい基地創生プロジェクト」が2014年に立ち上げられました。JA山形市経済部農業振興課の鈴木公俊課長は、「市内の休耕田などを借り受け、栽培施設の団地化をすすめました。2019年までに栽培ハウス78棟と共同育苗ハウス1棟、地下水をくみ上げる井戸、共同で使える農業機械などを整備しました。プロジェクトの目的は新たな担い手の育成と栽培技術の伝承です。2014年からベテラン生産者に研修生を受け入れてもらい、2年間研修したのちに栽培ハウスを貸し出しています。研修制度が確立され、団地施設を利用すれば初期投資の壁も低いので、非農家出身の就農者も定着しています」と、説明してくれました。
 これまでに8人の新規就農者を受け入れ、20歳代から40歳代の若い後継者、就農者が増えたことにより、今後も産地として維持できる見通しがたったそうです。
「デリケートな管理が欠かせないセルリー栽培を、わずか2年で習得するのは至難の技。そこで2017年にスマートフォンでハウス内の温度、湿度、照度などのデータを管理できるシステム(ICT)を導入しました。ベテランから新人まで生産者全員のデータを共有、比較することができます」
 ベテランの技術がデータで見えることにより、ノウハウの共有化とともにリスクも回避することができ、品質や収量の向上にもつなげることができます。

暑さに弱いので朝5時から収穫。鎌で一株ずつ刈り取りながら調整、袋詰めしていきます。収穫しているのは「ひめセルリー」

 会田洋一さんは4年前に脱サラして後継者となり、現在セルリー団地内のハウス10棟(約30アール)で栽培をしています。
「セルリーは水や温度、肥料などの栽培管理がとても難しい作物です。栽培期間が半年と長く、春作(5~6月出荷)と秋作(10~11月出荷)の年2作なので、収穫しながら次の種まきをするという忙しさもあります。作物はSOSを出すのが遅いので、何が足らないのか、どう対応をしたらいいのか自分で考え、早めに手をかけることが大事です。暑くなりそうだからハウスに遮光ネットをかけようとか、そこをやるかやらないかで成果が違ってきます。大変だけど、すべて自分の責任だからやりがいはあるし、おもしろいですね」と、農業の楽しさを実感しています。
 山形セルリーは2016年から2kg前後の大株のセルリーを「とのセルリー」、1kg前後の小株のものを「ひめセルリー」というブランド名で売り出しています。
「今、収穫しているのは小株の『ひめセルリー』です。1株で販売するので生協さんの需要が多いです。大株の『とのセルリー』は小分け販売する量販店などに好まれます」と会田さん。

GIと地域団体商標、JGAPをトリプル認証

 2018年には農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」(詳しくはなるほど全農を参照)に全国のセルリー産地で初めて登録され、さらに翌年、「地域団体商標」として特許庁からもブランドのお墨付きを得て、生産者のモチベーションもアップ。2018年、食の安全や環境保全の取組みが評価されて「JGAPの団体認証」も取得。第三者機関により確認された農場に与えられる信頼の証は、消費者が安心して美味しい食材を選ぶ目安となります。JAが申請者となりGIと地域団体商標、JGAPの認証を受けるのは東北初の快挙です。
 元気な産地から出荷される「山形セルリー」。ひと口かじれば、瑞々しく爽やかな香りと柔らかな風味が実感できます。1年にわずかな期間しか味わうことができない旬の美味しさを召し上がれ!

JA山形市おすすめの山形セルリー料理、「味噌マヨスティック」「いか燻セルリー」「葉の佃煮」です。
詳しいレシピはこちらhttp://www.jayamagatashi.or.jp/celery/

●JA山形市
【山形セルリー】生産概要
生産者:21名
栽培面積:約6ヘクタール
出荷量:約332トン
(2019年度実績)
主な出荷先:東北、関東

プロジェクト発足時から中心となって活動するJA山形市の鈴木公俊課長

2020.05更新