【山梨県南都留郡鳴沢村】

富士山の麓で育まれる 高原キャベツ

文◎編集部 撮影◎磯野博正

生で付け合わせに、調理して主菜にも副菜にもなるキャベツは、食卓を豊かに彩ってくれる万能野菜です。
季節ごとに品種をかえ、産地をかえながら一年中出荷されていますが、夏といえば標高1000メートルから1500メートルの高冷地で栽培される「高原キャベツ」が抜群の美味しさを誇ります。
今回は世界文化遺産の富士山麓に広がる山梨県鳴沢村のキャベツ畑を訪ねました。

昼夜の寒暖差で甘みがのり、食感も抜群

3へクタールのキャベツ畑を栽培する渡辺尚樹さん、恵美さんご夫婦

 キャベツは胃腸の保護に役立つビタミンU(キャベツから発見され、別名「キャベジン」といいます)やビタミンCが豊富な野菜です。ここJA鳴沢村は標高約1000メートルの富士山麓にあり、冷涼な高原の特長を活かした野菜の栽培が盛んな地域。なかでもキャベツは、水はけのよい火山灰の土壌や降水量の少なさなどが適していたことから1960年代から栽培が始まり、村の特産品となっています。
「もともとはダイコン産地だったのですが、連作障害などによりキャベツに切り替え、年々作付面積が増え、品質と味の良さが認められて1977年に国の指定産地となりました。
 真夏でも日中は30℃を超えず、夜間は15~16℃まで下がります。キャベツ畑には朝露がたまり、地面を潤すことで、高温や干ばつに弱いキャベツを夏場に育てることができます」と、JA鳴沢村の渡辺建司さん。

 富士山麓の恵みと昼夜の寒暖差が、玉張りがよくてずっしり重く、柔らかい甘みのあるキャベツを生み出しています。しかし、長雨や日照不足、酷暑など天候不順は作物にとって大敵なのは言うまでもありません。
「自然の恵みを受けて美味しいキャベツが出来るのですが、一方では自然との戦いです。最近の異常気象は対応が大変で」と、渡辺さん。春先の気温が不安定で、遅霜の被害がひどい場合は、種まきからやり直すこともあるそうです。キャベツは植えつけから収穫まで約3ヵ月かかります。まき直しで救われる面もありますが、生産者にとっては大きな負担になる実情もあります。
「種まきの時期をずらして10月いっぱいまで収穫しますから、作業が集中しないように畑ごとに収穫期の管理が重要です。7月は収穫が始まり、植えつけ、防除作業が重なるので、手一杯です。まき直しは負担がかかり難しいですね」と、生産者の渡辺尚樹さん。渡辺さんは脱サラして妻の恵美さんと実家の後継者となり、今年で10年目になります。

朝採り出荷で新鮮なうちにお届け

早朝から包丁を使って一玉ずつ丁寧に収穫します

 渡辺さんの畑を訪ねると、雨にもかかわらずザクッザクッと包丁を使って一玉ずつキャベツを収穫する音が聞こえます。早い人は未明の2時、3時頃から頭にライトをつけて収穫をするそうです。
「うちは5時半くらいから始めます。今日は雨模様なのでコンテナに入れて作業場に運び、専用の段ボール箱に詰め替えます。晴れていれば、収穫しながら畑で箱詰め、出荷できるのに、二度手間ですね」と苦笑いの渡辺さん。農家一人ひとりの徹底した品質管理と「朝採りの新鮮で美味しいものを届けたい」という思いが、早朝の収穫の原動力になっています。

JAの選果場に11時までに出荷。午後1時にはトラックに積み込み各地へ運ばれます

 また、重いキャベツの収穫は手作業のため腰に負担がかかります。「それで親父が体を悪くして、後を継ぐことにしました」と渡辺さん。小規模な畑が多く機械化も難しく、高齢化に伴い作業が大変になっていることは否めません。それでも、渡辺さんのように、小さい頃から収穫を手伝いキャベツ栽培を身近に感じ、後継者となる人もいます。
「毎年気候が安定しないので、栽培は『難しい』の一言につきます。最近はカット野菜用キャベツの需要が増えているので、株間を広くとって大玉キャベツを生産しています。契約出荷も順調で、将来的には面積を広げたい」と、抱負を語る渡辺さん。
 雄大な富士山麓の清々しい高原で育てられた朝採りキャベツは、甘くみずみずしく歯切れのよい食感が楽しめます。キャベツ畑の風景は鳴沢村の夏の風物詩のひとつ。富士五湖周辺に観光の際は、新鮮高原野菜が人気のJA鳴沢村が運営する「道の駅なるさわ」にもお立ち寄りください。
(取材:2019年8月下旬)

●JA鳴沢村
【高原キャベツ】生産概要
生産者:18名
栽培面積:約43ヘクタール
出荷量:約900トン(2019年度)
主な出荷先:関東、中京

「収穫ピーク時には、1日2000箱(10kg箱)出荷します」と、JA鳴沢村の渡辺建司さん

2020.08更新

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