【徳島県名西郡神山町】

香り高い緑色の果実 すだち

文◎編集部 撮影◎磯野博正

徳島県民にこよなく愛されているすだちは、ユズやカボスと同じ香酸柑橘です。
爽やかな酸味とすがすがしい香りは、食卓に欠かせない名脇役として、あらゆる料理を美味しく引き立ててくれます。
自家用に植えていたすだちは県を代表する特産品となり、国内はもちろん海外へ輸出されるまでに成長しました。
すだちの商業栽培の発祥地であり、県内一の生産量を誇るJA名西郡を訪ねました。

8~9月が露地物最盛期

すだち農家3代目の佐々木宗徳さん

 徳島県の中央部に位置する神山町は、険しい山と谷が迫った山間の地。すだちはユズの近縁種とみられていますが、その起源はわかっていません。文献にすだちが登場するのは江戸時代後期のこと。
「神山では昔からどこの家にもすだちの木がありました。本格的な生産が始まったのは、すだちで稼ぎ農村を活性化させようと鬼籠野(おろの)村の若者10人が果樹園芸同志会を結成した1957年。
 その後、1962年には県の”すだち特産育成地域”に選ばれ、生産は順調に増えましたが、売れない時期もありました。ユズとは違う酸味や香りが脚光を浴び需要が伸びたのが1970年頃。そして、1981年の大寒波で、徳島県東部のみかん産地が大打撃を受け、寒さに強いすだち栽培に切り替えたことで県内全体に広がったといわれています」と、歴史を説明してくれたJA名西郡経済部 神山センター指導販売課の後藤正平課長。神山センターのある鬼籠野地区はすだち栽培発祥の地として、記念碑が建てられています。

樹齢約200年のすだちの古木

「県下では、8月から9月が露地物の収穫最盛期です。10月から翌年3月までは冷蔵貯蔵もの、3月から7月までハウスものが出荷されるので、一年を通じて楽しんでもらえます」と、後藤課長。
 早速、近くにあるすだち園を訪ねてみました。畑の一角に樹齢約200年のすだちの古木があるなど、歴史を感じます。この畑を借り受けて生産をしているのが佐々木宗徳さん。3代目で祖父はすだち栽培創始メンバーの一人といいます。
「緑色が濃く、皮が厚い果実ほど味も香りも優れ、品質がよいとされますが、そうした果実は10~15年生の若い樹になります。40~50年経った老木は改植しなければならないので、うちの畑の改植をすすめるために、現在はこちらの畑を借りています」とのこと。生産者が高齢化し、すだち栽培が難しくなり面積を減らしている人の畑を、こうして別の生産者が引き受けることでうまく生産が回っている例も多いといいます。

担い手育成やEU輸出にも挑戦

小さな果実を一粒ずつハサミで収穫。1人1日にコンテナ(20kg)5杯が限度だとか。鋭いトゲがあるので厳しい暑さの中でも長袖、手袋は必須です

 すだちは摘果、摘葉、収穫と一本、一枝、一粒ずつ、他の実を傷つけないようにハサミを使った手作業が続きます。
「すだちはブドウのように房なりに実がつき、摘果して葉も落とさないと陰ができ、ムラなく緑色になる実ができません。暑さが厳しくなる7月から3ヵ月が勝負です」と、佐々木さん。すだち栽培は人手がいくらあっても足りないので、収穫作業員として援農事業による若者3名を住み込みで自宅に受入れ。さらに、理事を務める「NPO法人里山みらい」の事業では、2名の就農研修生を担い手として育成するなど、将来を見据えた産地の活性化にも積極的です。
 また、県が支援するEU(欧州連合)向けのすだち輸出に昨年から取組んでいます。
「EU向けのものは摘果、摘葉はせず、なるべく自然にというのが基本で、病害虫のハードルは高いものがあります。でも、外観ではなく中身が勝負。昨年フランスに行って、独特の香りをもつ爽やかなすだちに興味をもってくれ、直接感想を聞けたのは生産のモチベーション向上につながりました」と、佐々木さん。

選果場に運ばれたすだちは、機械でスピーディに選別・箱詰め、出荷されます

 直径3.6cmほどの小粒な果実。二つ割りにして果汁を搾って使うのはもちろん、皮は擦って風味づけに使います。わさびと合わせるのもおススメ。料理に果汁の酸味を加えることで、塩分を控えることもできます。保存する場合はポリ袋に入れて空気を抜いて冷蔵庫へ。クエン酸やビタミンCが豊富で夏バテ気味の身体とお肌の回復に効果的です。ぜひ、毎日の食卓にすだちパワーをとり入れましょう!
(取材:2019年9月上旬)

●JA名西郡
【すだち】生産概要
生産者:550名
栽培面積:約90ヘクタール
出荷量:約500トン
主な出荷先:関西、東京、名古屋など

「規格外のすだちは果汁として出荷。ポン酢などに加工されています」と、JA名西郡の後藤正平課長

2020.09更新