【岡山県岡山市】

爽やかな風味と優しい味わい 岡山マイルドパクチー

文◎編集部 撮影◎磯野博正

独特な香り、味わいで愛好家も多いパクチーは地中海沿岸地方原産のセリ科の1年草で、英語では「コリアンダー」、中国語では「香菜(シャンツァイ)」と呼ばれています。
日本では1990年代のアジア飯ブームを契機にタイ語の「パクチー」という呼び名が浸透、近年ではパクチー料理専門店も登場するなど、私たちの食生活にすっかり定着しました。
JA岡山ではパクチーが苦手な人でも食べやすく、優しい味わいの「岡山マイルドパクチー」の栽培を確立し、ブランド化に成功しました。

地域限定で周年出荷

「農業は難しいけどやりがいがある」と、岡山市農協青果物生産組合パクチー部会長の秋山佳範さん

 岡山県では2000年からパクチー栽培がはじまりました。独特な香りが苦手な人でも食べやすい品種を探し求め、8種類ほどの種子を入手して試験栽培を開始。その中のひとつに、葉っぱが小さくて爽やかな風味、味もマイルドで日本人の味覚によく合う品種があったことから、産地化に踏み切ったといいます。
「栽培方法がわからず手探りの状態からスタートして、年間を通して栽培できる技術を確立するまで6~7年位かかったといいます。岡山マイルドパクチーは岡山市北区の玉柏、牟佐地区でのみ生産・出荷されたもので、通称『岡パク』と呼ばれ、市場の評価も高く信頼の品質となっています」と、JA岡山沖田営農センターTAC指導員の川下和紀さん。
 品質が安定するまで試行錯誤の連続でしたが、全国有数のパクチー産地として知名度が上がりブランド化に成功しました。

 岡パクの産地である岡山市北区の玉柏と牟佐地区は、大根や人参などの根菜類や岡山の特産品である黄ニラの産地としてもよく知られています。
「うちでも大根や人参、黄ニラなどを栽培していましたが、農業を継ぐにあたって何か新しいものを作りたいと思って取り組んだのがパクチーです。それが2001年、19歳の時でした。初めて作ったパクチーがうまくいったのでそのまま作り続けていますが、露地栽培なので天候に左右されるし、自然災害やら連作障害やらいろいろと問題は多くて難しいです。でも、周年栽培ができるのでなんとかリカバリーしながらブランドに恥じないものを出荷していきたいです」と、岡山市農協青果物生産組合パクチー部会の部会長を務める秋山佳範さん。若手の生産者が多く栽培に関する情報交換も活発で、結束力も強いといいます。

丁寧な調製作業で信頼アップ

【写真左】根が深いので鍬(フォーク)で土を掘り起こしてから収穫します 
【写真右】株を引き抜いた途端にパクチーの香りが漂います

「生育適温は15~23℃で、3~6月が出荷最盛期。冬場はトンネルをかけて栽培します。寒さに当たると糖度があがり、香りも穏やかになって美味しいです」と秋山部会長。
 畑で収穫の鍬(フォーク)を入れて掘り上げた途端、パクチー独特の香りがしてきます。
「この辺りは砂壌土地帯なので根が深く太く育つのが特徴です。たっぷり栄養を吸って甘味のある根っこは茎葉とまた違った味わいがあって、通好みだっていわれていますよ」とのこと。

面倒で手間のかかる「しょうやく(農作物を収穫してきれいにすること)が肝心」と、丁寧に仕上げていきます

 収穫したパクチーは自宅の作業場に持ち帰り、水洗いしたのち、1株1株折れた茎葉、虫食い、色の悪いものなどを取って調製します。1束110gになるように計量して結束、箱詰め、出荷となります。
「この出荷調製作業が一番神経を使いますね。きちんと丁寧に仕上げないと傷みがでて日持ちが悪くなってしまいますから」と秋山部会長。高品質で市場から引く手あまたというのもうなずけます。
 パクチーにはビタミンCやE、カロテンなどが豊富に含まれ、独特な香り成分には食欲増進や消化器官を活性化する効果があるといわれています。料理のトッピングとして、サラダや炒め物、お好み焼きなどの他、特に根は天ぷらがおすすめです。やみつきになっている人も苦手な人も、「岡パク」を一度お試しください。

●JA岡山
【岡山マイルドパクチー】生産概要
生産者:3名
栽培面積:約4.3ヘクタール
出荷量:約13トン
主な出荷先:東京、大阪、岡山

「岡パクは香りにきつさがなく甘みがあるので、一度食べてみてください」と、JA岡山沖田営農センターの川下和紀さん

2021.02更新

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