【滋賀県草津市】

食卓に彩りを添える万能野菜 愛彩菜あいさいな

文◎編集部 撮影◎磯野博正

ピリッとした爽やかな香味とみずみずしいフリル状の葉が可愛らしい「わさび菜」。
滋賀県草津市では「愛彩菜(あいさいな)」の名で周年栽培されるブランド野菜のひとつです。
2006年から栽培が始まった新顔野菜ですが、生産者とJAなどが一体となって、学校給食への提供やレシピコンテストなどで知名度を高め、地元で愛される「ベジクサ」ブランドに認証される特産品に成長しました。

ベジクサブランドに仲間入り

「愛彩菜」の名付け親、JA草津市愛彩菜部会の中島春樹部会長

 草津市内を横断するように流れる草津川流域は肥沃な土壌に恵まれています。2000棟ものハウスが立ち並ぶ「北山田野菜生産団地」は琵琶湖周辺の豊かな水と自然環境を活かし、近畿最大級の施設野菜の一大産地となっています。京都に近いこともあり、昔から壬生菜(みぶな)や日野菜(ひのな)、大根、かぶらなど漬物野菜を生産してきた歴史もあります。
「京都の食を支えてきた漬物になる野菜や、水菜、青ネギ、ほうれん草など草津市産の美味しい野菜を『ベジクサ』と名付けてPRしています。新たなベジクサブランドとして2015年に仲間入りしたのが愛彩菜です」と、JA草津市農産部野菜センターの中井浩二さん。愛彩菜はわさび菜で、九州地方の在来種であるからし菜から選抜育成された品種です。
「何か新しい野菜はないかと探していたとき、京都の市場の人からわさび菜の情報を聞きました。お浸しにして食べてみたら美味しかったので、種子を取り寄せてすぐに栽培を始めました」と話すのは、愛彩菜の名付け親でもあるJA草津市愛彩菜部会の部会長を務める中島春樹さん。
 愛彩菜という名前には「彩り良く、みんなに愛される野菜になってほしい」という願いが込められています。色鮮やかな緑色のギザギザの葉はなめらかでフリルのよう。繊維質が少なく茎もやわらかで、ピリッとしたわさび風の辛味と爽やかな香りがセールスポイントです。

 生育適温は15~20℃ですが、寒さには強く、秋冬まきでは70~90日で収穫できますが、暑さには弱いとのこと。
「夏はハウスを寒冷紗で覆って、畝の間に水を張るなどいろいろ対策をしても、冬の収穫量の4割しかありません。でも、爽やかな風味の愛彩菜を楽しみにしてくれている人がいるので、難しくても周年栽培を続けていきたい」と、力強く語る中島部会長。
 安全安心な栽培にも気を配っています。フェロモントラップ(※)を利用したり、6月と9月の年2回、北山田野菜団地全体で「害虫一斉捕獲作戦」を実施。送風捕虫機で葉の裏に隠れた害虫を捕らえたりするなど、農薬を減らす努力をしています。
(※)フェロモン剤で誘引された虫を捕獲する仕掛け

収穫をする隣のハウスでは種まきをして2週間の苗が芽を出し生長中

生産計画を立てて安定出荷

 スーパーなど取引先が求める数量や時期に応じて生産計画を立て、部会員がそれぞれ種をまく時期を変えるなど工夫をして、年5~6回転させて安定出荷に努めています。当番制で出荷を行うため、部会員は青ネギなど他の野菜生産と作業が重ならないよう調整しています。
 収穫は、一番美味しいといわれる草丈20数cmのものを朝のうちに刈り取ります。作業所に持ち帰り、下葉や株元をきれいにしてから、1袋150gに計量して袋詰めしていきます。

1株ずつ丁寧に出荷調製作業を行います

「栽培当初は愛彩菜を知ってもらうために市場や量販店に出かけて試食販売を続けました。ファンを増やそうと、地元の学校給食に提供して子どもたちに名前や味を覚えてもらいました。料理コンクールも開催し、たくさんレシピが生まれて、多彩な食べ方を提案できるようになりました。パッケージデザインも自分たちで考えたんです」と、当時を振り返る中島部会長。まずは地元で愛され食べてもらうことを大事にしつつ、さらなる販路拡大へ生産量を増やしていきたいとのこと。
 レタスの代わりにハンバーガーやサンドイッチに挟んだりしてもよく、炒め物や鍋物など火を通しても緑色が鮮やかで食感も優しく、また違った味わいが楽しめます。中島部会長によれば「しゃぶしゃぶ」と「かき揚げ」がおすすめだとか。生でも加熱しても、和洋中、どんな料理にもマッチする魅力的な愛彩菜です。

地元の特産品を世界一に!
草津市民が愛彩菜に扮する仮装イベントで野菜の格好最多人数に挑み、888人で2017年4月にギネス認定されました

(取材:2020年12月上旬)

●JAレーク滋賀(旧JA草津市)
【愛彩菜】生産概要
生産者:5名
栽培面積:約2ヘクタール
出荷量:約40トン
主な出荷先:県内、関西

「たくさんの人に愛彩菜の美味しさを知って欲しい」と、JA草津市農産部野菜センターの中井浩二さん

2021.04更新

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