【兵庫県加古郡稲美町】

香りもうま味も濃い麦茶用の 六条大麦

大麦は世界最古の穀物のひとつといわれています。
日本で栽培されている大麦の種類は、ビールや焼酎の原料となる「二条大麦」、押し麦や麦茶になる「六条大麦」、味噌の原料となる「はだか麦」に分けられます。
兵庫県加古川市や稲美町など東播磨地域は西日本有数の大麦産地です。
JA兵庫南では1980年代後半から30年以上かけて、麦茶用の六条大麦を特産化してきました。

1にも2にも排水対策

「世代交代を順調に進めたい」と森安営農組合の池田勝廣組合長
 限られた農地を効率的に利用するため、日本の温暖な地域では、夏は米、冬は麦を育てる「二毛作」が行われてきました。
「秋に米の収穫が終わると麦を植え、麦を収穫してから田起こし、代かきなど、次の田植えに備えます。かつては小麦が作られていましたが、収穫が遅れると、田植えの時期と重なってしまうため、収穫適期が早い大麦に変更しました。1994年から麦茶用として需要が大きい六条大麦の”シュンライ”という品種を導入して当地の特産品となるまでに成長しました」と、説明してくれたJA兵庫南営農経済部米麦施設課の高濱宏一さん。
 六条大麦の種まきは11月上旬。12月下旬頃に機械を使って1回目の麦踏み、1月と2月にも行います。霜柱によって根が浮き上がるのを防ぎ、踏まれることで分げつ(枝分かれ)が増え、茎が太く育ちます。
「栽培で一番重要なのが水管理、排水対策です。雨が降って水がたまるところがないよう排水溝を掘って、畑の外の排水路につないでしっかり排水します。排水溝が崩れて詰まっていないか、収穫までこまめな水切りの作業が麦の生育に大きく影響します」と、森安営農組合の組合長を務める池田勝廣さん。森安営農組合は68戸の農家が集まり1990年に設立。大麦生産をメインに米、大豆、キャベツなど年間42ヘクタールを作付けしています。
「大麦と米、または大麦と大豆というように年2回の作付けを基本にしています。大麦シュンライの作業スケジュールはJA兵庫南が出している『良質麦栽培ごよみ』が基本です。生育過程と主要な作業日程がひと目でわかり、天候によって多少ズレたとしても、管内の生育調査の情報などがJAから逐一届くので助かっています」と池田組合長。
 4月上旬に穂が出て開花すると40~45日後、5月には収穫期を迎えます。水分量が25%以下、穂と茎が黄化して、畑全体の8割以上の穂首が曲がった頃に収穫するという目安があります。
「この時期は本当に天気予報とにらめっこです。早刈りや刈り遅れは品質低下につながるので、適期収穫を厳守します。その適期(刈り旬)に雨が降るとヤキモキしてしまいます」と、池田組合長。

収穫適期を見逃さずコンバインで一気に収穫

 栽培管理の徹底と天候に恵まれ、2019年、20年と2年連続豊作となりましたが、20年はコロナ禍で需要が減り販売が伸び悩みました。JA兵庫南では麦茶や押し麦以外にも利用できないか商品化を検討中。大麦の特徴である糖質の低さや豊富な食物繊維を活かした六条大麦粉100%のシフォンケーキなどの試作品が注目されているそうです。

麦の茎を使ったストロー

実が縦6列に並んでいる六条大麦

 森安営農組合の目下の悩みは生産者の高齢化です。世代交代が順調に進むように集落の若手を後継者に育てていくため、週末に草刈りだけでも手伝ってもらうように促し、農業に親しんでもらえるように優しく指導しています。
「農業を通じて地域を元気にしたい。小学校の児童に田植えや稲刈り、サツマイモ掘りなどの体験学習をしてもらい、農業の楽しさや野菜の美味しさを知ってもらっています。冬期にキャベツを作るなど営農組合は雇用も生み出しています。やりがいをもつことでみんなが元気になれると嬉しい」と、池田組合長は話します。
 また、JA兵庫南では昨年、プラスチックごみ削減につながる取り組みとして、六条大麦の茎を活用した天然素材のストローを商品化する「大麦ストロープロジェクト」を立ち上げました。県内の福祉事業所との農福連携事業は地域おこしとしても注目されています。まず、JA兵庫南の農産物直売所や兵庫県庁内の食堂、県内のカフェなどを販売先に年間10万本の供給を目標としています。
 実も茎も余すことなく使える六条大麦。香りもうま味も濃い麦茶に生まれ変わります。ノンカフェインで赤ちゃんからお年寄りまでどなたでも安心して飲んでいただけます。夏場の水分補給には最適で熱中症予防にもおすすめです。

【写真左】六条大麦の茎を利用した天然素材の大麦ストロー
【写真右】香りもうま味も濃いJA兵庫南の人気商品「ふぁ~みん麦茶」

●JA兵庫南
【六条大麦】生産概要
生産者:43戸(営農組合含む)
栽培面積:約435ヘクタール
生産量:約1745トン(2020年度実績)

「管内の六条大麦を使用した麦茶は、濃い味わいが特長です」と、JA兵庫南の高濱宏一さん

2021.07更新

閲覧数ランキング