野菜の病気の予防と対策は?
良質な野菜をつくるためには、病気から野菜を守ることが必要です。そこで今回は、病気が発生する要因と防除のポイントを紹介します。
〇病気発生の3つの要因糸状菌(カビ)や細菌、ウイルスなどの病原体があるだけでは、病気は発生しません。病気は、原因となる病原体に加えて、発病しやすい環境、病気にかかりやすい野菜の性質という3つの条件がそろったとき、初めて発生します(下図)。それぞれに対策を講じ、要因を1つでも取り除くようにします。 【図】 病気発生の3つの要因
⚫︎病原体要因を取り除くには
・ウイルス病を媒介するアブラムシ類などを防除
・マルチで泥の跳ね返りを防ぐ
・土壌消毒をする
・殺菌剤を使う
⚫︎環境要因を取り除くには
・有機物を施用し、土壌微生物を増やす
・雨よけ栽培をする
・土の水はけを改善する
・整枝や適切な栽植密度で、通風と日当たりを確保する
⚫︎作物要因を取り除くには
・水はけの良い土づくり、健苗(健康な苗)の育成、適期定植、施肥・整枝を適正に行うことなどによって、健康的な野菜を育てる
・接ぎ木苗を使う
・耐病性のある品種を選ぶ
〇病気の防除
病気を防ぐ対策の基本は、3つの要因がそろわないように、それぞれの対策をとって、発病リスクを減らすことです。
たとえば、根こぶ病が出た畑ならば、アブラナ科野菜を栽培しない、栽培するなら抵抗性品種を選ぶ、土壌pHを6.5以上にする、水はけをよくして菌を活動しにくくする、根こぶ病菌を防除する適用農薬を使用する、といった対策をとります。
病気を引き起こすおもな病原体の特徴と防除方法は、表のようになります。
糸状菌 | 植物の病気の8割程度を占め、かびまたは菌類ともいう。菌糸と、その一部に胞子という繁殖器官をつくる。菌糸は植物の表皮を突き破って侵入できる。 | ナス科、ウリ科、ユリ科野菜の疫病。野菜全般に発生するべと病、うどんこ病、菌核病。ウリ科野菜のつる割病、つる枯病。ハクサイなどアブラナ科野菜の根こぶ病など。 | 雨よけや、畑の水はけを良くする。抵抗性品種を利用する。土壌病害には輪作をする※。適用農薬を使用する。 |
細菌 | 作物体内への侵入は、作物の表面にできる傷口や気孔、水孔、皮目などの自然開口部から行われる。水を好み、降雨後に発生することが多い。 | 野菜全般に発生する軟腐病、黒斑細菌病。トマト、ナスなどナス科野菜の青枯病。キュウリなどの斑点細菌病など。 | 泥はねを防ぐ、作業で茎葉を傷つけない。畑の水はけを良くする。抵抗性品種を利用する。土壌病害には輪作をする※。適用農薬を使用する。 |
ウイルス | 光学顕微鏡で見えないほど小さい。作物どうしの接触、傷口、アブラムシやアザミウマなど、昆虫を媒介して伝染することが多い。予防・治療薬がなく、一度感染すると治らない。 | 野菜全般に発生する各種モザイク病。トマトの黄化葉巻病など。 | 防虫ネットなどで被覆し、アブラムシなどの昆虫の飛来を防ぐ。抵抗性品種を利用する。 |
〇よく見られる病気と対処法
家庭菜園でよく見られる病気と対処法をご紹介します。
①トマトの疫病(糸状菌)
水がしみたような黒褐色の病斑ができ、かびが発生する。多湿下で発生するので雨に当てず、マルチで泥はねを防ぐ。降雨前後に適用農薬を散布する。
②タマネギのべと病(糸状菌)
葉が黄変したり、灰色のかびを生じたりする。多雨で発生しやすい。マルチで泥はねを防ぎ、肥え切れさせない。降雨前後に適用農薬を散布する。
③キャベツの菌核病(糸状菌)
腐敗し、白いかびのようなもので覆われ、やがて黒い菌核が発生する。高畝にして水はけを良くする。結球する前に適用農薬を散布する。菌核が土壌に残るとほかの野菜にも伝染するので、発病株は早めに畑の外で処分する。
④ダイコンの軟腐病(細菌)
地際や根が腐敗して溶ける。土壌中の細菌が傷口などから侵入して発病させる。栽培中、株を傷つけないようにする。台風前後に適用農薬を散布する。
⑤ソラマメのモザイク病(ウイルス)
葉が縮れ、モザイク状のまだら模様になる。アブラムシ類が媒介する。銀色マルチやトンネルがけをしてアブラムシ類の飛来を防ぐ。