インドが原産のなすは、熱帯性の植物なので高温を好みます。「なす」は、夏にとれる野菜「夏の実(なつのみ)」から「なすび」になり、「なす」と呼ばれるようになったといわれています。なすに含まれる水分とカリウムは、体の熱を排出してくれるので、夏にぴったり。紫色の皮にはアントシアニン系色素のポリフェノール「ナスニン」が含まれます。赤ワインと同じポリフェノール類の「ナスニン」には抗酸化作用が期待されます。
日本のなすは“茄子紺”という色名もあるほどほとんどが紫色ですが、白、緑、しま模様、形も丸形や長形など、いろいろです。
形状によって大きく分けると丸なす、長なす、卵形なすに分けられます。丸なすは、東北から北陸、関西で多く作られています。「賀茂(かも)なす」(京都府)、「長岡巾着(きんちゃく)なす」(新潟県)などがあります。皮がやわらかくて肉質がしまっているので、田楽や揚げ煮に向きます。果肉のしまりが良い小丸なすの「民田(みんでん)なす」(山形県)などは漬物として食べられてきました。
長さ20〜25cmの長なすは、「河辺長(かわべなが)」(秋田県)、「南部(なんぶ)長」(岩手県)、「佐土原(さどわら)」(宮崎県)などが有名。長さ40〜45cmの大長なすは、「久留米(くるめ)長」「博多長」(いずれも福岡県)など。肉質がやわらかなので焼きなすや炒め物、煮物に向きます。長なすは東北や九州で多く栽培されています。
卵形なすは、「真黒(しんくろ)」(埼玉県)、「千成(せんなり)」(東京都)などが代表品種。関東を中心に作られ、皮は黒紫色で薄く、主に浅漬用として使われています。
現在、日本での栽培・流通の中心は、形や味がそろって育てやすく、たくさん収穫できる、長卵形(中長)なすや長なすのF1品種※1です。それでも各地には個性豊かな地方品種(固定種※2)が伝えられ、今でも郷土の味として、愛され続けています。
例えば、在来種も多く、消費量日本一のなす大好き新潟県では、蒸したなすを冷やして辛子じょう油で食べる「ふかしなす」がお盆の郷土料理です。「長岡巾着なす」で作って先祖を供養します。石川県の「オランダ煮」は、炒めて甘辛く煮た料理で、小ぶりの「へた紫なす」を丸ごと使います。みずみずしくサラダでもおいしい、大阪府の「泉州水なす」は、ぬか漬けにして長期保存し、それをえびじゃこと炊いた「じゃこごうこ」は常備菜としても利用されています。なすの魅力は、煮る・焼く・揚げる・漬けると豊富な食べ方にあります。それぞれの地域で、なす炒り、しぎ焼き、なすび飯、なすそうめんなど、多様な料理が継承されています。皆さんがお住まいの土地ならではの“個性派なす”はありませんか。地元や旅行先でどのような地域品種に出会えるか、探してみるときっと楽しいはずです。
※1 種苗メーカーなどが開発した1代限りの交配種。固定種のように自家採種はできず、種は毎年購入する必要がある。
※2 何世代も種を取り育てるうちに自然に個性が定着されてきた品種。在来種は固定種の一つ。
参考:なすのいろいろな種類
https://www.maff.go.jp/j/kids/agri/nasu/n03.html
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2024.08更新