こんにゃくいもはシュウ酸という強烈なエグミがあり、ゆでたり、焼いたりしただけでは食べられません。いもをすり下ろし、アルカリ性の凝固剤を入れて練るとようやく食べられます。日本には、飛鳥時代に仏教とともに薬として伝来しましたが、庶民に広まったのは江戸時代。常陸国(ひたちのくに:現・茨城県)の農家、中島藤右衛門がこんにゃくいもを水車で粉にする製法を発明し、一気に全国へ広まりました。
こんにゃくいもは、天気や病害などの影響を受けやすいデリケートな作物です。栽培は種いもづくりから始まります。5月にこんにゃくいもの赤ちゃん(生子・きご)を植え、10~12月に畑から掘り起こします。これが種いもとなり、いもから伸びた生子(次の種いも)とともに、温度管理した貯蔵庫で冬を越します。それを、翌年また畑に植えて…というサイクルを繰り返すと、親指大だった生子が2~3年でカボチャ大(1500g)ほどに成長。1年目のいもは貯蔵、2年目のいもは大きさにより貯蔵または出荷、3年目のいもは出荷と、時間と手間をかけ作られているのです。
プルプルした独特な食感は、水溶性の食物繊維グルコマンナンがたくさん水を含み凝固することで生まれたもの。こんにゃく粉を水で溶き、水酸化カルシウムや炭酸ナトリウムなどの凝固剤を加えて練り、成型し、40~50分ゆで、水にさらしてあく抜きしたら完成です。生いもをすり下ろして作る昔ながらの「生いもこんにゃく」も全流通量の1割程度あります。
こんにゃくは昔から「おなかの砂おろし」とも呼ばれ、腸を整え、健康や美容に良いとされていました。最近はこんにゃく麺や、米に混ぜて炊くこんにゃく米なども開発されています。
(一財)日本こんにゃく協会では、腸内環境改善や便通改善効果、超低カロリー食品としてダイエット効果などをPRしています。
そんなこんにゃくですが、昨夏の猛暑と少雨でこんにゃくいもが不作となり、資材価格の高騰と販売価格の下落も加わった「三重苦」に生産者は直面しています。総務省家計調査によると1998年のこんにゃく製品の支出金額は、一世帯当たり3229円でしたが、2023年は1660円と25年間で約半減、過去最低となりました。家庭だけでなく、コロナ禍による飲食店需要の減退や、コンビニがおでんの店内販売をやめたことなどが影響したとみられています。こんにゃく粉は長期保存できるため、この需要減で年々在庫量が増加。1年分の需要量が賄える水準まで積み上がり、こんにゃくいもの取引価格は3割ほども下落しました。
出荷まで数年がかり、貯蔵庫や農機具なども必要なこんにゃくいも栽培。一度途絶えると復興が厳しい作物です。おでん、煮物だけでなく、チャプチェやカレーなどに入れてもおいしく、アイデア次第でレシピは広がります。全国民が日常的にさまざまな料理で食べているのは日本だけだとか。伝統のこんにゃく食文化、大切に守りたいですね。
参考:農林水産省「こんにゃく」(こんにゃくをめぐる事情 2024年7月)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/konnyaku.html
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