国内の食料生産能力は?【食料自給率】後編

日本の「食料自給力」は1日に必要な熱量の7割未満しかないってホント!?

農業政策を示す2015年の「食料・農業・農村基本計画」において、食料自給率(カロリーベース)の目標が50%から45%に引き下げられ、新たに「食料自給力」という指標が導入されました。輸入せずに国内の農地をフル稼働して、どれだけの食料生産が見込めるかを試算したものです。食料自給力も試算を始めてから右肩下がりで、将来の食料確保に不安を抱かせます。

 食料自給率は1人1日当たりの国産供給熱量(913キロカロリー)を1人1日当たりの総供給熱量(2,429キロカロリー)で割って算出します(2016年度38%)。分母には輸入したものも含まれます。また、国内生産が減っても、高齢化などで消費量が減ると計算上は均衡して、国内生産の実力が見えにくいという面があります。
 農水省は「食料自給力」の公表を2015年度から始めました。日本国内の農地を最大限活用することでどれだけの食料が得られるのかという「食料の潜在生産能力」を見るためです。食料自給力の試算では、「現在ある農地」(花などの食用でない作物の農地を含む)と「以前は農地として利用されていたが今は何も作られていない土地」に、可能な限り二毛作で農産物を作付けしたとします。今の食生活に近い「米・小麦・大豆を中心に作付けする場合」、より高い熱量を得られるよう「いも類を中心に作付けする場合」を想定し、栄養バランスを考慮するもの、しないものの4パターンで試算します。
 栄養バランスを考慮せずにいも類中心に作付けした場合、国産だけで供給できるカロリーは1人1日当たり2,687キロカロリーを供給できると試算されました。カラダを維持するために必要な1日当たりのエネルギー量(2,147キロカロリー)を約540キロカロリー上回るものの、主食は焼き芋になるほか、1ヵ月に牛乳コップ7杯、鶏卵0.3個、焼肉2皿という食事内容です。また、栄養バランスを考慮して米・小麦・大豆中心に熱量が最大になるように作付けした場合は、1,463キロカロリーと必要量を約684キロカロリーも下回ります。1日ごはん2杯、うどん1杯、焼き魚1切れ、1ヵ月に牛乳コップ6杯、鶏卵2個、焼肉3皿という想定の食事内容です。しかし、このメニューでは農地をフル稼働しても、3割も不足するという結果になりました。
 自給力低下の大きな要因は農地面積の減少です。ピーク時の1961年には609万ヘクタールあった農地面積が2016年には447万ヘクタールにまで減少、高齢化による離農も加速して農業就業人口は2016年に約192万人と、200万人を下回りました。新規就農者は2015年に6万5030人と6年ぶりに6万人を超え、若者を中心とした「田園回帰」の流れもみられますが、地域の活力は衰退傾向で、農業従事者の平均年齢は65歳を超えています。このままでは耕作放棄地は増える一方です。資源としての耕地も人も増やすことは厳しい状況です。
 前号で紹介しましたが、国民投票で憲法に明記されたスイスの食料安全保障の条項は、国内の農業生産だけでなく、輸入や食品産業、消費などフードチェーン全体を網羅し、環境への配慮もされています。食料を安定的に確保するためには、持続可能な日本の農業を確立することが必須です。そのためには、担い手の確保・育成、地域資源をフル活用して、農業技術を組み合わせ、食料自給力を高めていく必要があります。生産者、農業団体、加工・流通企業、消費者がお互い知恵を出し合い、国民全体の問題として、食料自給率向上について考えましょう。
 地域でできたものを地元の人が食べる、そして食べる人が作る人を支えるなどお互いが支えあうことが第一歩。食料、農業、食品ロスなど「食卓で考えて食べる」ことから始めませんか。

参考:
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011_2.html
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/panfu1-17.pdf

2018.04更新