農業と福祉の共生 【農福連携】

農業と福祉がつながって支え合い、
共生社会が築かれていきます

「農福連携」という言葉を耳にしたことはありますか?深刻化する労働力不足に悩む農業側と就労機会を求める障がい者側のそれぞれの問題を解決するための連携です。農福連携を調査研究し、普及活動の中心となっている(社)JA共済総合研究所主任研究員の濱田健司さんにお話しを聞きました。

──障がい者が農業で働く「農福連携」が行われていますが、ここ最近、急に注目されていますね?
濱田 重度の障害のある人を対象にリハビリテーションやレクリエーションとして、中度や軽度の人は就労訓練や就労を目的として、かなり以前から取り組んでいました。でも、これらの「農」と「福」の取り組みは、それぞれの業界や団体などが単独で実施してきたため、点としての広がりにとどまっていました。
 農業の高齢化による労働力不足、担い手不足は待ったなしの状況です。福祉サイドでは障がいのある人の賃金アップや新たな就労機会を求める状況にあり、両方の課題が一致して実現したのが「農福連携」といえます。

──「農の福祉力」というのはどういったことでしょうか?
濱田 農には「つくる」や「食べる」だけでなく、その場にいるだけで、人間の心・気・身体を「癒す」「健康づくり」などの効果があります。これは自然と人間との関係において成立するものです。たとえば、昼夜逆転していた人が、朝起きて、身体を動かし、陽の光を浴び、風を受け、土や植物の匂いを嗅ぐなどといったことを通じて、夜眠れるようになり、症状が安定するようになっています。また、自分が種から育てた作物が生長し、出荷されていくことは大きな自信につながります。自己有用感をもつことができるのです。これらの効果は、精神障がいの人だけでなく、知的障がいや身体障がいのある人にとっても同じです。
 さらに、認知症の人にもこの取り組みは広げられ、デイサービスなどで利用者が農作業をすることを試みている施設もあります。

──誰もが安心して暮らせる社会づくり、というのは?
濱田 分業や効率性ばかりを追求して、自己責任や、「今だけ、ここだけ、自分だけ」という考え方だけが広がると、我々はあらゆることから分断されることになります。障がいのある人や要介護認定高齢者、生活保護受給者、生活困窮者、さらに異なる思想や宗教の人、異なる国の人が共に暮らすことで、より多様性に富む成熟した社会の構築を目指さなければなりません。農福連携を通じて、人と人との思いをつなげ、誰もが分け隔てなく生きていける、多様な人材を包み込む地域社会の創生を目指そうというものです。

──農福連携をさらに広げた、「農福+α連携」とはどういった考え方でしょうか。
濱田 農福連携は地域で困っていること、必要としていることに共に取り組むというものです。さらに、農福商工連携、農福介護連携、農福医療連携、農福教育連携といった「農福+α」を行うことでどんどん広がっていきます。JAグループには直売所も選果場もあるし、介護施設も厚生連病院もあります。今ある資源を使えば、地域に応じたそれぞれの農福+αの取り組みができます。
 農福連携という言葉はまだまだ知られていません。全農が動くことで、JAや農家にこういうことがあるということを知ってもらい、農業サイドからできることに取り組んでもらいたいです。多様な人たちがいる社会、笑顔になれる社会を作りたいと思います。

 障害のある人も高齢者も子どもも、誰もが分け隔てなく生きていける社会。農業と福祉がつながり日本を元気にする新たな可能性について、全農もその一翼を担い地域創生に努めてまいります。

プロフィール

濱田健司(はまだけんじ)
一般社団法人JA共済総合研究所主任研究員、一般社団法人日本農福連携協会顧問。博士(農業経済学)。農の福祉力、障がい者就農、農福連携などについて調査研究、普及活動に取り組む。農林水産省農林水産政策研究所客員研究員なども務め、著述・講演活動などを行う。

参考資料:「月間福祉」(2018.1)

2019.02更新