タネは命の源 【タネの未来】

タネを手放すことは未来を手放すこと。
伝統野菜を守り、つなげていきたい

中学生でタネの流通会社を起業した小林宙(そら)さんは、今年4月で高校3年生になります。昨年9月に出版した「タネの未来」という起業記が話題を呼び、イベントや講演などでも大活躍。
全国各地の種苗店を巡って集めた伝統野菜のタネを販売しています。
なぜ、タネの会社を創業したのか、タネの多様性を守ることの大切さなど、奥深くてちょっと複雑な現状を語っていただきました。

── 15歳で「鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション」という会社を立ち上げましたが、具体的にどんなことをしているのですか?
小林 主な仕事は、日本中を訪ね歩き仕入れてきた伝統野菜のタネの販売と、農薬や化学肥料を使わずに自分で栽培した野菜の販売です。伝統野菜の中でも京野菜のようなブランド化されている野菜ではなく、消滅してしまう可能性の高いタネを集めて流通させることで、保存していくことが最大の目標です。

── そもそもタネに注目しだしたのはいつ頃からですか?
小林 小学校低学年の頃からホームセンターで野菜や花のタネを買ってもらって育てるようになりました。自分で育てた野菜の味は格別美味しかったし、どんどんタネの収集と野菜の栽培にはまっていきました。
 ホームセンターにあるタネはほんの一部にすぎません。カタログにないものを探し、伝統野菜と呼ばれる野菜があることを知ったのは大発見でした。時間をみつけては全国の種苗店を訪ね歩くようになりました。

── 地方の珍しいタネをコレクションするだけでなく、全国に流通させようと思ったのはなぜですか?
小林 伝統野菜のタネの多くはその地域の中でしか出回らないし、何代にもわたって受け継いできた採種農家がタネ採りをやめてしまったらその野菜自体が世の中から消えてしまいます。それは、せっかく育まれてきた地域ならではの味、食文化・伝統がすっかりなくなってしまうということ。伝統野菜を未来に残すために、なくなりそうなタネを全国規模で流通させて保存していく、それを事業化していこうと思いました。
 実際現地に足を運ぶと、インターネット上には情報がない作物に出会えたり、地元の人との交流が生まれたりしてすごく楽しいです。

── 生きるために多様性を守ることが必要と訴えていますが具体的にいうと…
小林 遺伝的多様性があればあるほど生きのびる可能性があるということです。例えば、寒さに強いジャガイモと暑さに強いジャガイモがあれば、気候が偏った時にその環境に強いジャガイモが残る。ジャガイモとマメを栽培していれば、ジャガイモが全滅してもマメが残る。種(しゅ)が多ければ多いほど安心というわけです。
 今は温暖化で暑さに強い品種があればいいけど、氷河期に入った時、寒さに強い品種がなくなっていれば作物は育ちません。多様性を守ることは食料危機を防ぐためでもあるんです。

── 多様なタネを残すことが、私たちの未来をつなぐことなのですね。
小林 日本の野菜の多くは在来のタネでなく、F1品種のタネから作られたものに変っています。日本や世界にもともとあった在来種(伝統野菜)は年々数を減らし、何もしなければどんどん消えてしまう。だから僕はタネを守り、未来に残したい。
 伝統野菜を守っていこう、作り続けていこうという流れが、日本中に巻き起こっていくことを願っています。

 多様性が損なわれて画一的なタネばかりになると病害虫や異常気象などの影響が心配です。「何を食べるのか」「何を作るのか」を選ぶのは私たちです。日々口にしている食べ物のことを見つめ直し、地域の食文化や歴史を守っていきたいですね。

※著書「タネの未来」と伝統野菜のタネをセットにして5名様にプレゼントします。
応募方法など詳しくはプレゼントページをご覧ください。

プロフィール

小林 宙(こばやし そら)
2002年、東京生まれ。中学3年生でタネの流通・販売を手がける「鶴頸種苗流通プロモーション」を起業。群馬県伊勢崎市の畑で野菜を栽培し、販売も行う。著書に「タネの未来/僕が15歳でタネの会社を起業したわけ」(家の光協会発行)がある。
https://kakukei-seeds.amebaownd.com/

2020.03更新