バラエティー豊かな品種を楽しむ 【国産みかん】

あふれるみかん愛で産地、人をつなぎ多様な魅力を発信してファンを増やしたい

冬は「こたつでみかん」が当たり前でしたが、最近はそんな光景が少なくなりました。みかんをこよなく愛する清原優太さんは大学生の時、日本のみかん消費量を増やすという使命感を抱き「東大みかん愛好会」を設立。その後は「株式会社みかん」を起業し、「日本みかんサミット」を主催するなど、国産みかん普及のための活動を精力的に行っています。愛するみかんのこと、いろいろお尋ねしてみました。

── みかんにずっと関わっていきたいと思ったきっかけは何ですか?
清原 みかんは子どものころから大好きで、呼吸するかのように食べて育ってきました。20歳の時です。そんな大好きなみかんについて調べていたら、日本のみかん生産量・消費量がこの40年間で350万トンから70万トンと8割減という事実に直面したんです。あまりの衝撃に日本のみかん消費量を増やすという理念を掲げて、2014年に「東大みかん愛好会」というサークルを立ち上げました。
 現在は「株式会社みかん」を設立して、「日本みかんサミット」を主催しています。様々な産地や業種の人たちをつなぎ、アイデアを共有することで日本のみかん界を元気にする、そして全国の人にもっとみかんの魅力を知ってもらうための第一歩がこのサミットです。他にも、柑橘を好きになってもらうための情報発信などを行っています。

── みかんファンになってもらうにはどうしたらよいと思いますか?
清原 農林水産省によると日本で一般流通している柑橘の種類は204種類。温州みかんだけでも117種類、中晩柑・香酸柑橘が87種類とたくさんあります。でも、りんごの「つがる」「ふじ」とか、いちごの「とちおとめ」「あまおう」というような品種名がなかなか思い浮かばないですよね。みかんの品種は多様であまり知られていない、となればグルメなマニア心をくすぐろうと。掛け合わせた品種から味を想像したり、いろんな楽しみ方ができます。みかんファンになってもらうには好みの品種を見つけてもらうこと。例えば、温州みかんでは、戦前から栽培されている伝統ある品種の「南柑(なんかん)20号」。12月が旬でコクと深みのある味、砂じょう(果肉)はトロトロ、何個でも食べたくなる安心感のある味です。ニューホープでは極早生(ごくわせ)品種の「ゆら早生」。青さが残る早出しみかんなのに11月以降のみかん顔負けの濃厚さ、見た目と味のギャップも注目の品種です。食べ比べて味の違いが分かるとグンと楽しくなります。

── 国産みかんの「サードウェーブ(第3の波)」を提唱していますが、具体的にどういうことでしょうか?
清原 みかん界の大きなトレンド転換のことです。ファーストウェーブは、柑橘栽培の産地化により日本の代表的果物の地位を確立した時代。今は光センサーが導入されて、高糖度みかんを安定供給できるセカンドウェーブが到来しています。サードウェーブとは、糖度だけではなく酸味や香りなど各人の好みに合わせて、産地や生産者のストーリーなどを含めて柑橘を楽しむ時代です。品種だとか、推し産地だとか、推し農家さんだとか、産地や味の多様さを楽しむトレンドの波が来ると考えています。

── 今後はどんなことをやりたいと思っていますか。
清原 Zespri社のような産地横断的なブランドを柑橘に特化して作りたいと考えています。
 オールジャパンの柑橘ブランドがあれば、産地リレーで常に一番旬のものを出すことができ、品目統一的なマーケティングやプロモーションにも取り組みやすいと。時間はかかるかもしれませんが、全国のJAさんと連携させていただきながら、その方向に向かえたらと構想しています。

 あふれるみかん愛で生産、流通、消費の懸け橋となる活動を続ける清原さん。ひと口にみかんといっても時期や産地によって品種も、味わいも違ってきます。いろいろ食べ比べて、好きな品種や産地を見つけて、みかんの魅力を再発見してみましょう。

プロフィール

清原 優太(きよはら ゆうた)
1993年、東京都生まれ。東京大学経済学部在学中の2014年「東大みかん愛好会」を設立。2016年「株式会社みかん」設立、代表取締役社長。「みかんサミット」を主催するなど、国産みかんの普及活動を行う。

2020.11更新

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