しいたけはコナラ、ミズナラ、クヌギ、シイなどのタンニンを含む枯れ木に発生します。栽培が本格的に行われるようになったのは江戸時代で、当時はクヌギなどの原木にナタで傷をつけ、しいたけの胞子が自然に着床するのを根気よく待つというものでした。その後、クヌギやコナラを伐採して、しいたけの種菌を植え付けるというほだ木での栽培が開発されました。ほだ木により自然の力を活かしじっくり育てる「原木しいたけ」は、味や香りが豊かでしっかりした歯応えが楽しめます。しかし、採取できるまで約2年かかるなど栽培期間が長いうえ、気温や降雨など天候によって生産量が大きく左右されてしまいます。「乾しいたけ」には主に原木しいたけが使われています。
他方の「菌床栽培」は、オガくずにふすまや米ヌカなどを混ぜた人工的な培地に種菌を植え付ける方法で、温度・湿度管理ができる施設で栽培しているので、一年中安定生産ができ、約5ヵ月の栽培期間で収穫できます。水分が多く柔らかく滑らかな食感が特長で、生しいたけの生産量の約9割が菌床栽培です。
同じしいたけなのに生と乾したものでは味も香りも随分違います。しいたけは乾燥する際、熱と酵素の働きで、「レンチオニン」という香り成分が生成され特有の風味がうまれます。また、うま味の元である「グアニル酸」は乾燥する段階で細胞が壊れ、酵素と結合することで生成されます。グアニル酸のうま味は、低温の水で戻して加熱調理すると美味しさが増すことがわかっています。
しいたけに含まれるエリゴステロールは紫外線を浴びるとビタミンDに変化して大幅に増加する特性があります。ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を促進し、丈夫で健康な骨作りに役立ちます。生も乾しいたけも傘の内側のヒダの部分を上にして30分~1時間程度を目安に日光に当ててから使用するのがおすすめです。
乾しいたけは戻すのが面倒とか、若い人には調理をしたことがない人も多いと聞きます。そこで、きのこの研究開発や普及に取り組む日本きのこセンターグループは、短時間で戻せ、乾しいたけ独特の臭いが少なく、まろやかなだしがとれる「低温乾燥法」を開発し、全国の産地で推進しています。この特許製法による「低温乾燥椎茸」は、沸騰直前のお湯に10~15分浸けるだけで戻りすぐに調理できるうえ、戻し汁は甘みが強くうすめることなくそのまま使えるという便利さで、今後の普及が望まれています。
和食ブームとともに、高栄養でヘルシーな食材として海外でも注目の乾しいたけ。滋味あふれる日本の伝統食材の美味しい使い方をマスターして、大切な食文化を伝えていきたいものです。

乾しいたけの戻し方と保存方法
乾しいたけのうま味を上手に引き出すには、5℃くらいの冷水でゆっくり戻すこと。ジッパー付きの保存袋に乾しいたけと浸るくらいの冷水を入れ、口をしっかり閉じて冷蔵庫に入れておくと、場所をとらず香りも飛ばさずに戻せます(冬菇で約10時間、香信で約5時間が目安)。夜、寝る前に冷蔵庫に入れておけば、朝には美味しいだし汁の完成です。使いきれない場合は、使いやすい形に切り分けてから保存袋に入れて冷凍します。戻し汁は製氷皿に入れて冷凍した後、密閉容器などに移して冷凍庫で保存しましょう。
参考資料:
日本産・原木乾しいたけをすすめる会 https://j-shiitake.com/
きのこ百科 https://www.kinokonet.com/kinoko/