日本人の食卓に欠かせない伝統食材【みそ】

地域色豊かで原料や風味も多種多様
1300年以上の伝統を誇る発酵調味料「みそ」

日本人の知恵と、気候・風土が育んだ「みそ」は、長い間私たちの健康を支えてきたパワーフードです。飛鳥時代に中国から伝わったとされ、室町時代には自家製のみそが日本各地で誕生し、庶民にも浸透しました。多種多様なみそが造られており、国内のメーカー数だけみても約850社に上ります(※)。地域の食文化を支える「みそ」の魅力に迫りました。

 みその起源は古代中国の大豆塩蔵食品の「醤」(ひしお)と考えられています。熟成途中の「未醤」(みしお)、これが「みしょう」→「みしょ」→「みそ」の語源とされています。日本人は「醤」に発酵技術を学び、独自の製法を発達させて今日のみそを造りだしました。
 みその材料は大豆・米・大麦・塩・麹・水で、多くがしょう油と共通しています。みそは煮たり蒸したりした大豆を潰して麹と塩を混ぜ、空気を遮断するように桶に詰めて発酵・熟成させたものです。日本全国にはさまざまな種類のみそがありますが、麹の原料によって「米みそ」「麦みそ」「豆みそ」の3種類に分けられます。これらの混合による「調合みそ」もあります。味や色によっても分類されます。例えば、配合する塩分の違いによって、「甘みそ」や「辛口みそ」に、熟成期間などによって色が変化するので「赤みそ」「淡色みそ」「白みそ」に分類されます。大豆粒を残すか残さないかによって「粒みそ」「濾(こ)しみそ」などにも分かれますし、そのまま食べる「なめみそ」もあるなど、驚くほど多様です。加えて、発酵・熟成は微生物によるものなので、その土地の気候・風土によって同じ原材料でも違いが出るなど、味も千差万別。それぞれの地方や家庭の味が出やすく、「ふるさとの味」「おふくろの味」といわれる所以です。
 麹の原料で分類すると、8割を占めるのが米みそです。味にクセがなくどんな料理にも合わせやすいのが特徴で、全国各地で造られています。九州や瀬戸内地方中心に多いのが麦みそ。独特の甘みと麦の風味が強く、野菜との相性がよいといわれています。豆みそは中京地方で造られており、豆そのものの味わいが強く濃厚で、独特の渋味があります。「赤だし」に欠かせないみそとしてよく知られます。お正月の雑煮の色や味には、みその種類が大きく影響しており、地方性が強く現れます。
 みその主原料である大豆は、畑の肉と呼ばれるほど良質のタンパク質を多く含み、大豆イソフラボン、大豆レシチン、サポニンなど機能性成分も豊富です。さらに、発酵により、アミノ酸やビタミン類も生成されます。その他にも、ミネラル、糖質、食物繊維など、健康維持に不可欠な栄養素を含みます。「医者に金を払うよりも味噌屋に払え」と、江戸時代のことわざにあるように、日本人の健康を支えてきました。現在では、日本食ブームで、海外でも「MISO」の認知度は向上。輸出量は2019年で1万8444トンと10年間で倍近くに伸びています(財務省貿易統計)。
 いつもの料理にひとさじ加えるだけで、コク、独特の香りが加わり、より深みのある料理へと変えることができる、みそは万能調味料です。「手前みそ」という言葉がありますが、伝統の調味料で新たな自慢料理を生み出してみませんか。

みそ
なるほど情報

手作りみそにチャレンジ
米みそ(甘口) [材料(仕上がり約1.3kg)]
大豆250g 米麹300g 塩120g

[作り方]
1.大豆を洗って鍋に入れ、たっぷりの水に一晩浸けて戻す。
2.鍋を火にかけて、指で豆がつぶせるくらいになるまで煮る。
3.煮上がった大豆をすり鉢に入れ、熱いうちに粒がなくなるまですりつぶす(フードプロセッサーを使うと簡単)。
4.ボウルに米麹と塩を入れてよく混ぜ、3を加えて耳たぶくらいの硬さまでよく混ぜる。
5.清潔な保存容器に4を空気が入らないようにしっかり詰める。
6.表面を平らにし、空気に触れないようにラップや布を密着させ重石をのせる。蓋をして直射日光が入らない場所で保管する。

◎冬はゆっくり、夏に最も発酵熟成が進むので、仕込む時期によって6~10ヵ月で食べ頃となります。

参考:味噌健康づくり委員会 miso.or.jp
※全国味噌工業協同組合連合会に加盟している企業数は848(2019年7月1日)

2021.02更新

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