
さつまいもは品種によってホクホク系・ねっとり系・しっとり系に分かれます。
石川県で江戸時代から作られている「五郎島金時」は、でんぷんの含有率が高く、群を抜くホクホク感が自慢。
郷土料理はもちろん、秋冬の食材として地元で長く愛され、金沢市農産物ブランド協会が認定する「加賀野菜」のひとつにもなっています。
こだわりの栽培方法で五郎島金時のおいしさを守り継いでいるJA金沢市を訪ねました。
砂丘が育む独特の食感と甘味


石川県金沢市の日本海沿岸に広がる砂丘地帯で作られている「五郎島金時」。1999年に五郎島生産組合によって商標登録されたブランド芋で、指定農家が栽培したものだけが「五郎島金時」を名乗ることができます。約300年前の元禄時代、五郎島村の肝煎(きもいり<庄屋>)であった太郎右衛門が薩摩(鹿児島)から種芋を持ち帰ったのが栽培の始まりです。50年代にスプリンクラーが整備されたことで栽培が広まり、県内有数の産地となりました。
「砂丘の南側の五郎島、粟崎、大野地区は水はけが良く、肥料が流れ過ぎない絶妙なサイズの砂粒のため、さつまいも栽培に適し、少ない水分で身の締まった、ホクホクな食感になります。また、砂地は昼夜の寒暖差が大きく、甘味がのりやすいのも特徴です」とJA金沢市の羽場紘一さん。ホクホク系の代表的な品種である「高系14号」を選抜・育成してオリジナル品種をつくり、産地で統一して栽培しています。
「3月に種芋を植えて苗をつくり、5月に畑に定植すると蔓(つる)を伸ばして成長しながら根に養分を蓄えます。大き過ぎる芋は大味になるので、市場ニーズのあるMサイズ(約250g)を目指しています。部会で開発した米ぬか主体の専用肥料を元肥に使い、追肥をせずに栽培することで、養分が蔓に行かず根に流れて芋に蓄えられ、うま味がのります」と話すのは、JA金沢市五郎島さつまいも部会の藤村幸司部会長。江戸時代から代々続くさつまいも農家で、就農33年目のベテラン生産者です。約3.5ヘクタールのさつまいも畑を手掛けるほか、小玉スイカや大根、ミディトマトなども栽培しています。
「栽培で難しいのは水やり。多過ぎると急に肥大して味が落ち、少な過ぎると芋が小さいままになるので、水分量の見極めが難しいです」と話す藤村部会長。年ごとに天候や降雨量も変わるため、毎年試行錯誤の連続といいます。
専用施設で貯蔵し翌春まで長期出荷



収穫は8月中旬、部会による試し掘りを経てスタートします。まず蔓刈機で蔓を切り、手作業で取り除いた後、芋掘り機で掘り起こします。最盛期の10月は8~17時まで行い、4人で約3tを掘り上げます。収穫した芋は作業場へ運び、1個ずつ手作業でひげ根を取り、形、大きさ、重さごとに選別し、水洗いして5kg箱へ。大きさは3S~LLまでの6段階、形は丸いもの、細長いもの、ラグビーボールのような紡錘形(ぼうすいけい)など7種類あり、規格は30種類と、なんと日本一の数を誇ります。



集出荷場では規格ごとにまとめて置きます。主流はMサイズです
出荷は8月下旬~翌年5月まで。ピークは貯蔵した芋が甘くなる1月下旬~2月で、出荷量は1日当たり約17.5tにも及びます。「11月半ばまではそのまま市場へ、それ以降は、でん粉が糖に変わってより甘味が増すよう施設で貯蔵し、品質を維持しながら出荷しています。施設では、温度35℃、湿度99%で約80時間置き、表面のキズをコルク化させるキュアリング処理も行います」と、JA金沢市の羽場さん。これまで県内消費が主だった「五郎島金時」ですが、今後は全国へ広めてブランド力の強化と収益アップを目指します。藤村部会長もJAと連携し、スーパー等への販売促進に力を入れていきたいと意気込みます。
「五郎島金時」はきめ細かく煮崩れしにくいので、シチュー、グリル、ポテトサラダなど多彩な料理に合います。藤村部会長のおすすめは石川県の郷土料理「めった汁」。「具沢山の豚汁のことで、芋の甘味がコクのある汁によく合います。マッシュポテトの春巻きもよく食卓に並びますね」とのこと。
口に入れると身がホロホロ崩れ、甘味がじんわりと広がります。皮には食物繊維やアントシアニンなどが含まれているので、ぜひ皮ごと調理を。食欲の秋、甘く栄養豊富な「五郎島金時」をたっぷり味わいたいですね。
(2025年9月中旬取材)

●JA金沢市
【五郎島金時】生産概要
栽培面積:80.7ヘクタール
生産者数:33戸
出荷量:約1900t(2025年度産実績)
主な出荷先:県内、富山、関東、関西、中京