ずっとこんな夢を描いていた。
──舞台をいろいろな野菜で埋め尽くし、歌ったり演奏したり語り合ったりして、子どもたちに農の大切さ、素晴らしさを伝えるコンサートをしたい!
で、思えば通じる。更に思えば実現する。その言葉通り、東京国分寺市のホールで開かれたのが「農のコンサート」。
品川区の教育委員を務めていた関係で、ある小学校の四年の児童たちに、どんなことでもいいので、農に関する詩を書くことを夏休みの宿題に加えていただいた。
当日は、田中星児さんを始め、東大、東京農大の先生や作家、米作り農家の方、養豚に夢中の若い女性など様々な分野の方々がご登場。
そしていよいよ子供たちの詩の出番となり…といっても時間に限りがあるのでその場でアットランダムに選んで、即興で曲を付けて歌う形となった。
「あ、私の書いた詩だ」
と気づいたら、舞台へ上がってきて、茄子でも胡瓜でも好きなものを三個ずつ切り取って持ち帰っていいですからね、ということに。
ところが、ひとりがナカナカ舞台に来ない。(あとでわかったのだけれど)特別学級の女の子が眠ってしまい、あなたのじゃないの?と促されて、ようやく気がつき、舞台へ。するとミニトマトを三個だけ収穫し、掌に。
それだけでいいの?と聞くと、うん、トマト、ダーイスキとひとこと。でも面白いことに、詩のタイトルは「ピーマンさん」だった。
トントンと舞台から下りる左右には私の大好物のウドが、まるで今にも合唱を始めるような感じでお行儀よく縦に並べられている。
野菜たちに音楽を聴かせると、より美味しく成長する、という研究が進み、実践している農家も増えてきたという。そんな話なども織り込みつつ、あっという間に三時間は過ぎた。
来年も、と心弾ませたけれど、どうやら、あれだけの鉢植えや苗を持ち込むのは大変なことだったらしく。
あれから十数年。
今は実のなる…例えばパッションフルーツやネクタリン、スダチ、日本レモン、オリーブなども育てている私。
あの石原裕次郎さんが、庭に植えるなら実のなる木がいいな!とおっしゃっていたことを最近知って、ちょっとニンマリ。
もし叶うならば(仮題ですが)
「実のなる実になるコンサート」ができればいいなと。
あのォ、どなたかご協力いただけないでしょうか?
森 ミドリ
音楽家・エッセイスト。名古屋市生まれ。東京藝術大学作曲科卒業、及び、同大学院修了。現在は作曲・編曲、エッセイ執筆、究極の癒しの楽器・チェレスタでのコンサート、特にピアノでの即興演奏に心を注いでいる。12月23日(金)昼と夜、紀尾井町サロンホールにて恒例のクリスマスコンサートを予定。詳細・お申込みなどは03-3493-6420(モリ・オフィス)まで。