県下屈指のメークイン産地
JAながさき県央は長崎県の中央に位置し、東に有明海、西に大村湾、南に橘湾と三方が海、北は多良山系に面しています。水稲、麦、施設園芸による野菜や花、果樹、畜産など、地形や地域の特徴を活かしてさまざまな農畜産物を生産しています。
「橘湾に面した諫早市の飯盛(いいもり)・有喜(うき)地区は、台地地形による水はけのよさと、南向きの日当たりのよい斜面が春作の好適な条件となり、じゃがいもの生産が盛んになりました。しかし、栽培が拡大するにつれて中山間地の作業性の悪さが課題となり、地域の有志が率先して事業を誘致、1996年から2011年までかけて基盤整備に取り組み、圃場が整備されたことによって機械化や作業性が格段に向上しました」と説明してくれたのは、JAながさき県央本店営業部指導振興課の松尾幸助営農指導員。
長崎県全体の約8割は、県を代表する品種「ニシユタカ」を中心に生産していますが、飯盛・有喜地区は春作の「メークイン」産地としても知られています。細長い俵型で、芽も浅いため皮がむきやすく、煮崩れしにくいじゃがいもです。
「消費地から要望の多いメークインの作付けを推進し、当地区のブランド品種となっています。5月頃のメークインは甘みがあり、関西地方を中心に高い評価を得ています」と松尾さん。主流のニシユタカと並行販売することで存在感を示しているそうです。JA管内の春作の栽培品種はメークインが約50%、ニシユタカが45%、アイユタカほかで5%。メークインは秋作には適さないため、春だけの栽培です。春作は冬に植えつけ4~6月に収穫、秋作は夏に植えつけ11月から翌年1月まで収穫されます。
輪作や完熟堆肥など土づくりが一番
メークインの収穫最盛期を迎えた山口正さんの畑を訪ねました。山口さんはJAながさき県央ばれいしょ部会と県部会であるJA長崎県ばれいしょ部会の部会長を務めるベテラン生産者です。
「春作がメインでメークインとニシユタカを栽培しています。12月から2月にかけて品種や収穫時期に合わせて種いもを植えつけ、マルチを被覆します。収穫は4月中旬から始まり、6月梅雨入り前に終了です」と、山口部会長。収穫はまず地上部分の茎葉を機械で刈り取ったあとマルチをはがして、機械で掘り起こすと、土の中からきれいなじゃがいもが次々と現れてきます。これを、一つひとつ手で拾い集めコンテナに詰めてJAの選果場に出荷します。
「継続的に高品質のじゃがいもを生産するためには、何といっても土づくりが一番」と語る山口部会長。常に畑の状態を見て緑肥作物や完熟堆肥を施用するほか、8~12月にかけて秋冬だいこんや冬にんじんを栽培して連作を避け、地力回復や病害虫の発生を防いでいます。
「近年は異常気象による局地的な豪雨や度重なる台風の襲来、大干ばつなど、じゃがいも作りには心配と苦労が絶えません。そんな中でも部会の仲間やJAの担当者と知恵を絞って環境に対応し、品質が良くきれいなじゃがいもが収穫できたときはやりがいを感じます。地域の仲間たちと共に喜びを感じられるのがうれしい」と、山口部会長。
皮が薄く傷がつきやすい春じゃがいもは選果場に出荷されると、皮むけを防ぐために皮を少し乾燥させてカメラとセンサーにより階級わけされ、消費者の元に届けられます。
山口部会長のおすすめの食べ方は「新鮮なじゃがいもそのものの味が生きて美味しく食べられる『素揚げ』」とのこと。また「妻が作るコロッケは日本一うまい」とお聞きしました。ポテトサラダや甘辛煮、炒め物などじゃがいもの用途はいろいろ。メークインやニシユタカは煮崩れしにくいのでカレーなど煮込み料理でもどうぞ。
(撮影:2021年5月上旬)
●JAながさき県央
【じゃがいも】生産概要
生産者:約260名
栽培面積:約422ヘクタール
出荷量:約1万2000トン(春作)、約1500トン(秋作)
主な出荷先:関西、関東、東海、中四国、九州